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魔力吸いタイム

 貸し倉庫の魔法陣を通り抜け、歓楽街の宿に出た。

 前払いで一週間借りているという部屋で、まずは水浴びと着替えをすることにした。


 ウェズリーは私の着替えも用意してくれていた。私がお城に監禁されていた間に、色々と動いていたようだ。


「たくさん着替えがあるのね」


「女の人の服って、よく分からなくて。店員さんに勧められるまま、全部買っちゃった」


 なんていいお客さんだ。

 だからか、やけに可愛い流行のデザインが多いが、一番地味な色のワンピースを選ぶことにする。

 国を揺るがす大騒動を起こして逃げてきた身としては、ほとぼりが冷めるまではひっそりと目立たない努力をした方が良い気がして。


「お金は大丈夫なの? ここの宿代も」


 貸し倉庫代も気になっていた。


「大丈夫だよ。ストリートファイトの賞金がまだあるから」


「私もお城から少しでも持ち出せれば良かったのに、無一文でごめんなさい」


「お金のことは一つも気にしないで。ジェラルディンは今まで俺にたくさんのものをくれたから、今からは俺が返す番。七年間、国王陛下に育ててもらったって言ったけど、実際に食べ物や本をくれたり、身の回りのお世話をしてくれたのは、ジェラルディンだから」


 ウェズリーが言った。

 水浴びをして着替えて出てきた私を見て、嬉しそうな顔をした。


「うん、よく似合ってる。白いドレスも素敵だったけど、俺の血で汚しちゃったから」


 白だから私のほうが血の色が目立っていたが、流血したのはウェズリーだ。


「ウェズリーも早く水浴びをして、着替えましょう。肩の傷、聖女さまが塞いでくれたけど……傷跡は残るって言ってたわ。どのくらいの跡になるのかしら……」


 それが気がかりだった。


「大したことないよ。傷跡は男の勲章だって言うし、誇ることにする」


 ウェズリーがふんわりと笑う。


「血は洗い流してくるね。待ってて、綺麗にしてくるから。待っててね」


 どこにも逃げやしないのに、ウェズリーは念押しをして私の肩を引き寄せると、髪にそっと口づけをした。スキンシップ多めだ。


 浴室の水音を聞きながら、妙にソワソワしてきた。待って。綺麗にしてくるから待っててねって、別にそういう意味じゃないよね? いきなりそれはちょっとまだ早いというか……!


 私たちにはまだ解決すべき問題や、気がかりがある。


『国王陛下が斬られたぞっ』


 兵士の叫び声が鼓膜の奥に残っている。

 父は胴体に防具を着けていたし、あの場には治癒魔法が使える聖女さまがいた。だからきっと死んではいないはず。


 私たちを殺そうとした父だ。死んでも悲しくはないが、生きていてほしいとは思う。


 コンコンッとガラスを叩く音がして、顔を上げると、窓の外側にカラスがいた。器用に手すりにとまり、こちらを覗いている。


「ローザ」


 駆け寄って窓を開けると、トントンっと小さく跳ねて中に入ってきた。

 室内をトコトコと歩いて、ローザは浴室へ向かった。ウェズリーを目指しているようだ。


「待って、ローザ。ウェズリーは水浴び中よ。待ってたら出てくるわよ、ローザっ」


 相変わらず私の言うことは聞かない。

 浴室のほうからウェズリーの慌てた声が聞こえてきた。


「わっ、ローザ、いまは駄目だって、こらっ。ちょっ、ひゃうっ」


 ドタバタした音のあと、ウェズリーが出てきた。着替えたてのチュニックシャツを捲り上げようとしている、赤髪の少女が引っ付いている。ローズ色の瞳の少女。


「ローザ? こんなに大きくなったの!?」


 四、五歳くらいに見える。


「うん。その分、力も強くなっちゃって。吸わせろ吸わせろって、ちょっと待ってローザ。ちゃんとあげるから」


 ウェズリーはローザを引き剥がして、ベッドに座らせた。


「ごめん、ジェラルディン。今からローザに魔力吸わせてあげてもいい? あげる姿、あんまり見られたくないんだけど、よく働いてくれたからご褒美あげないと……」


「もちろん、いいわよ。存分にご褒美をあげてちょうだい」


 とは言ったものの、「魔力を吸わせる」ってどうやって? 吸うという語感が若干卑猥なのが、正直少し気になっていた。


「じゃあ、ちょっと見苦しくてごめんだけど」


 と言って、ウェズリーはベッドに寝そべり、チュニックシャツをペラリと捲った。


「召喚魔と契約を交わすと、主人の印である痣が体にできるんだ。大抵は、服を着ると見えない場所に。俺の場合は、ここ。召喚魔はその痣から魔力を吸うんだ」


 ここ、と言ってウェズリーが見せたのは、左脇腹だった。薔薇の花弁のような形をした、黒紫色の痣が浮かんでいる。

 え、まさかの、そこから直に吸うの?


 ローザがばっと飛びついて、薔薇の痣に口をつけて、むにむにと唇を動かし始めた。

 懸念した通り、かなりくすぐったいらしい。耐える表情をするウェズリー。妙に色っぽい。


 これは見てはいけないものだったと、ウェズリーの眉根を寄せた苦悶の表情と、ひくひくする腹筋からそっと目を逸らした。

 私には刺激が強すぎた。

 

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