擁護
「私からは、ウェズリーがいかに恐ろしい能力を持っているかについてお話しいたします」
モーリスも他の者と同様、ウェズリーが危険人物であると強調したいようだ。
「私は職務上、歓楽街のアンダーグラウンドで行われている喧嘩試合を定期的に観戦しているのですが……」
暁の黒豹の圧倒的な強さについて、モーリスは語った。
「なるほど、貴重な証言をありがとうございます。ウェズリーは恐ろしい黒魔法使いであり、我が国にとって危険極まりない人物であると、貴殿も思われるということですね?」
法務長官が念押しをした。
「いえ、私はそうは思いません。ウェズリーの身体能力と魔法の才能はズバ抜けていて、驚異的ですが、その力を行使して社会に危害を加えようという意思は見受けられません。いま述べた喧嘩試合においても、彼は試合のルールを遵守して、得意の魔法を封印して戦っていました。会場や観客へ被害が及ばないようにと。そもそも彼が本当にとんでもない悪党なら、毎週チマチマと試合に出て、小銭稼ぎをすることはないでしょう。彼がその気になれば、主催団体ごと制圧して、運営資金を総取りすることも出来るのですから」
モーリスの反論に目をみはった。次々と出てくる証言の中で、唯一ウェズリーのことを擁護する発言だった。
「社会秩序を守って、まっとうに暮らしていきたいという意思が感じられます。お城を抜け出して遊んでいたというのも、年頃の少年にはよくある出来心でしょう。皆さまは一度もそのようなことが無かったのか、胸に手を置いてお考えください。私にはあります。ウェズリーに更生の余地を与え、その恐ろしいほどの才能を生かす手立てを考えることが、我々大人の役割ではないでしょうか。彼を一方的に敵視して排除することが、国益に繋がるとは思えません。ジェラルディン王女殿下は誰よりもそれをご存知で、弟君に寄り添っておられるのです」
しんと聖堂内が波を打ったように静まった。静寂を破ったのは、ハハッという大きな笑い声だった。
「ずいぶんと綺麗事を言うのだな、ドランスフィールド公の息子は。父親に全く似ていないな。そのような甘さで国の防衛が務まるのか、資質が疑わしいものだ。解任も考えなくてはならんな。息子と思って育てていた者に寝首を掻かれるところだった、私の気持ちにこそ寄り添ってもらいたいものだ。皆さん、ウェズリーがいかに恐ろしい黒魔法使いであるか、洗脳された者が二人もいると分かって、より恐怖が増したのではないかな」
父は何が何でもウェズリーを悪者にして、全人類の敵に仕立てたいらしい。
どうしてこんなに一方的で、全く話が通じないのか分からなかったが、兄の話を聞いて腑に落ちた。英雄の存在感を改めて世界へ知らしめて、求心力を取り戻したいのだ。
ウェズリーも私も、そのための手駒だった。
「ジェラルディン、前へ。これまでの皆の話を聞いて、いまのお前の考えを述べなさい。可愛い弟の皮をかぶった悪魔に騙された王女を、処罰せざるを得ない私たちも心苦しいのだ。正直に悔い改め、神の赦しを請いなさい」




