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姉弟のダンス

「私と踊ってくれませんか」


 ダンスホールを離れ、バルコニーに出て夜風に当たっていると、声をかけられてびっくりした。

 振り向くとウェズリーだった。片手を差し出し、優雅な微笑みをたたえている。


「ウェズリー。からかわないで」


「からかってないよ。僕と踊ってよ、ジェラルディン。まだ誰とも踊ってないでしょう?」


「私は……。他の女性を誘ったら? 今のウェズリーなら大丈夫よ」


「今の僕、ジェラルディンは嫌い? ジェラルディンと踊りたいんだ。こんな機会、二度とないかもしれないから」


 微笑みが寂しげな色に変わる。胸がきゅっとして、ウェズリーの手を取った。

 本当はこのままあの別邸へ連れ帰って、閉じ込めてしまいたい。好奇の目に晒されず、私だけがウェズリーの良さを知っていればいいのに。これ以上大人に、格好良くならないでほしい。


 これは私のエゴだ。自分本位で横暴な。父に似たのかもしれない。

 付け焼き刃のパーティーマナーを纏ったウェズリーにエスコートされてダンスホールに戻った。新しい曲が流れるタイミングでダンスに加わった。

 他の貴族令息には相手にされず、慰み者の弟と踊る王女は、また冷笑され噂されるだろうか。

 人の顔色ばかりうかがっている私はそのことを頭の片隅で気にしながらも、目の前のウェズリーに翻弄されている。

 拙さが残るステップを踏み、それでもしっかりとリードを取り、真剣な瞳で私を見つめ、はにかんだ微笑を浮かべる弟に。

 

 ああ、どうしよう。本当はずっと前から気づいていた。ウェズリーが好きだ。愛しくてたまらない。普段と違う今日は、怖いくらいドキドキする。

 ウェズリーを愛している。でも弟だ。血は繋がっていないけど姉弟だから、姉弟愛以上は許されない。この想いは口に出せない。


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