嘘
お金の力に目をみはっていると、カサブランカさんが対面に着席した。
「お待たせしたね。では改めまして。私の名はヴィクター・ランドル・マッコルガン。ここから南西の方角にある、サガミタという小さな国を治めている。君に私の下で働いてほしいという話をしたと思うんだけど、今日はその件で来てくれたと思っていいのかな?」
「はい」
とウェズリーが答えた。
「そちらで働きたいです。でも俺一人じゃ行けません。彼女と妹も一緒に、という条件を引き受けていただけますか」
「君と彼女はいくつかな? 年齢と、名前も知りたいな」
「俺と彼女は十七歳です。俺はウェンツ、彼女はジェシカ。妹はローザで三歳です」
偽名は打ち合わせしておいたが、年齢はウェズリーが今考えたのだろう。
「彼女は両親を早くに亡くし、孤児院で育ちました。俺は父が早くに亡くなり、母は再婚しましたが、新しい父も亡くなって、母は俺と妹を置いて出ていきました」
「そうか……それは色々と大変だったんだね。それでああいう場所で稼いでいたんだね。どうりで覚悟が違う、圧倒的な強さだ。しかしあのときの君と、普段の君はまるで雰囲気が違うんだね。黒豹じゃなくて、まるで可愛い猫だ。そう思ってうっかり手を出すと、噛まれるんだろうけどね」
サガミタ国王はそう言って、ウェズリーと私の間に座っているローザを見た。
「この子は妹じゃないね。人間じゃないな。魔力のない者には分からなくても、あいにく私は魔力持ちでね。誤魔化されないよ」
「すみません、騙すつもりは。ご存知の通り、俺も魔力持ちです。興味本位で召喚魔法を試して成功したものの、返還魔法が使えずにこの子を手元に置いています。情が移り、今では妹のように思っています。使い魔付きだなんて知られたら、怖がられると思って……」
しおらしく言って、ウェズリーは不安げな子犬のような顔でサガミタ国王を見た。
「見たところ君によく懐いているようだから、怖くはないよ。ただ、嘘はいけないな。今日はまだいい。私の下で働くなら、正直にね」
釘を刺すようにウェズリーと私を交互に見るサガミタ国王に、ギクリとした。
ごめんなさい、私は本当は孤児院育ちじゃないんです、この国の不良王女ですと、吐き出したい気持ちを飲みこんだ。ごくっと喉が鳴った。
「はい、もちろんです陛下」
とウェズリーは答えた。
「それで、具体的に仕事の内容をお聞きしたいのですが……」
そうだった。それをちゃんと確認しておかないと、とウェズリーに念を押していた。
ウェズリーの類い稀なる魔法の才能を見込んでくれたのは嬉しいけど、悪いことに利用されないか心配だ。
人を殺す魔法を研究したり、ウェズリーを人間兵器のような殺戮マシーンに変えたりとか。それで世界征服を目指すなんて言われたら、即退散だ。




