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強カード

 覚悟は決まった。ウェズリーと一緒なら地獄の果てまでも。


「とりあえず日曜日に会ってくるよ」


 と言って、ウェズリーは寝室から持って来た一枚の黒いカードを見せた。

 ザラザラした紙質の漆黒のカードには何の表記もない。


「魔力をかざしたら、文字が浮き出る」


 ウェズリーが左手をかざすと、ぽうっとオレンジ色の文字が踊るようにして、本当にカードの表面から浮き出てきた。


『 毎週日曜日 午後三時

  マルゴール広場通り三丁目

  デブラおばさんのカフェにて待つ 』


「誰が待っているの?」


「黄色いカサブランカの客」


「あの男の人!? 白ジャケットの」


「知ってるの?」


「先週試合を観に行ったときに見たわ。試合後に、黄色いカサブランカの花束を投げ入れてた紳士よね」


「うん。毎週くれるんだ。その花束に毎回このカードが挟んである。前に話しかけてきたこともある。俺に、自分の領地に越してきてほしいって。衣食住を提供してお給金も払うから、魔法の研究を手伝ってほしいって」


「スカウト!?」


 びっくりした。


「すごい、やっぱりウェズリーはすごい魔法使いなのね。見る人が見れば分かるんだわ」


 そういえばモーリスも言っていた。暁の黒豹は化け物級だと。


「でもその話に、俺は全然興味なくて。無視し続けてた。ジェラルディンと離れるなんて考えられないことだし。無視しても無視しても、カード入りの花束を毎週渡してくる」


「自分の領地に越してきてほしいってことは、どこかの領主貴族なのね?」


「多分。日曜日に指定場所に行って、詳しく聞いてくるよ。そして条件を出す。ジェラルディンと二人でなら、行ってもいいよって」


 希望が見えてきた。八方塞がりだと思っていたら、目の前にバーンと活路が開かれた気分だ。ウェズリーはすごい隠し球を持っていたのだ。ファンの中に強カードがいた。


 だけど本当に信用できる相手なのか。ウェズリーは純粋だから、口の上手い人間に丸め込まれたり、騙されないか心配だ。


「カサブランカさんは、ウェズリーの素性は知らないのよね? 王族だと知って近づいて来た可能性は?」


「ないと思う。魔法陣で移動してるから、尾行の心配はないし。そもそも俺は王族じゃないよ。ジェラルディンが王女さまだってことは、勿論ちゃんと内緒にする。俺の恋人だって言う」


 俺の恋人、というパワーワードにくらっとしている場合じゃない。


「私も行くわ、日曜」


「えっ、ジェラルディンも?」


「私も当事者だもの。カサブランカさんに一緒に会って、話を聞くわ」


 そして信用できる人かどうか、自分の目で見て判断したい。


「そうだね、分かった。じゃあ例の方法で仮病を使って抜け出そう」


「あっ、ローザはどうするの?」


「ローザも連れて行くよ。ローザも一緒にお世話になるかもしれないし」


 返還魔法の習得は難航しているようだ。


「使い魔って、外を連れ歩いても大丈夫なの?」


「大丈夫だと思う。ぱっと見、普通の赤ちゃんと変わらないし」


「カサブランカさんはギョッとしないかしら」


「すごい魔法使いを欲してるなら、逆にいいんじゃないかな。使い魔を連れてると、箔が付いて」


「赤ちゃん使い魔でも?」


「赤ちゃん使い魔でも」


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