貰われ話
モーリスを騎士団宿舎前で降ろし、馬車は王城へ帰り着いた。三時間かかったが、公爵家で朝食を取ったあとすぐに出たので、まだお昼を少し過ぎたくらいだ。
良かった。いつもウェズリーに会いに行く時間に間に合った。
門番に出迎えられ、馬車を降りてまずは本城へ向かう。護衛騎士のアレンは荷物持ちだ。公爵夫人が山のようなお土産を持たせてくれたので、アレン一人の手では足りず、見張り番二人が手伝っている。
本城の入り口で、ジェラルディンさまがお戻りになりましたーとアレンが間延びした声を上げると、どやどやと使用人たちが出てきた。
テキパキと荷物が分担されていく。お帰りなさいませの声を浴びながら、執務を取り仕切る家令のグレアムに帰宅の報告をした。
「昼食は取られますか?」
「結構よ」
それよりも早く、ウェズリーに会いに行きたい。
昨日出発する前に寄って、余裕をもって食料を置いてきたつもりだったが、足りていないのだ。あの歓楽街にある大衆食堂の、一年間食べ放題の権利を狙って、戦い続けているくらいだもの。
そう、まずはウェズリーのことが優先だ。モーリスとのゴタゴタは後で。
婚約の話は、きっとドランスフィールド公のところで止まるだろう。
私が貴族たちから距離を置かれている王女であることを公爵は知っている。公爵夫人とアリスンはなぜか私を歓迎してくれたけど、公爵はそう甘くないだろう。ストライド家にとって不利益なことは制止するはず。
公爵がストッパーになってくれれば、モーリスは私に求婚するつもりだったけど父親に止められて断念した、だからモーリスは悪くない、という構図ができる。もちろん私も悪くない。
うん、それで行こう。
一旦部屋に戻り、公爵夫人からの山のようなお土産から、食べ物を取った。大きなバスケットにモリモリに盛り、両手で引きずるようにして運んだ。
「あらお姉さま、帰って来てたの?」
モニークにばったり会った。
「それ、アレにやるの? お姉さまもよくやるわねえ」
バスケットを蔑むように見て、鼻で笑った。
「あ、そうだったわ。アレのこと、気に入ったっていう令嬢がいて、欲しいんだって。お母さまに申し入れが来てるのよ。知ってた?」
ずるりとバスケットが手から滑り、ドンッと足元に落ちた。
「欲しいって、どういう意味?」
「さあ。婿か下僕か、愛玩ペットか? 知らないけど」
「教えてくれてありがとう」
バスケットを拾い上げ、別邸へ駆け付けた。怒りで力が出る。




