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ウェズリーの裏の顔

 モーリス卿の話によると、ウェズリーは王都の歓楽街で深夜に開催されるストリートファイトの試合で連勝している、ストリートファイターなのだそうだ。


「ストリートファイト? ストリートファイター?」


 何から何まで耳馴染みがなくて、頭に入ってこない。


「正確に言うとストリートではありませんが。屋内なので。喧嘩を見せ物にする興業で、勝った者は賞金が貰える、いわば武闘大会のようなものです」


「!」


 ウェズリーが言っていた『体を使って稼ぐ方法』ってそれか!


「喧嘩ってことは、殴ったり蹴ったり?」


「そうですね、基本、殴ったり蹴ったりです」


 ウェズリーが殴られたり蹴られたりしている光景が目に浮かぶ。ひどい、痛々しくて見ていられない。

 悲痛な私の顔を見て、モーリス卿が補足した。


「ご心配には及びません。弟君は圧倒的な強さで、相手を打ちのめす側ですから。現在の勝ち抜きチャンピオンです」


 唖然とした。ウェズリーが? 想像できない。ウソでしょう?

 確かにうちへ来たばかりの頃は、野良犬のようにガサツで、攻撃的な面もあった。

 しかし今はもうすっかり穏やかで、ふんわりした空気を身に着けている。暴力とは無縁の存在だ。


 それに第一、喧嘩が強いとは思えない。同年代相手ならともかく、体格差のある大人相手では物理的に無理だ。

 目の前にいるモーリス卿を見ても、全然身体つきが違う。


「その大会って、年齢別ですか? 弱い人しか出ていないとか?」


「いいえ。出場条件に区分はありませんし、腕っぷしに覚えのある凶暴な者ばかりです。そういう相手とまともに戦って、連勝しているんですよ弟君は。まあ、そう言っても、にわかには信じられませんよね。行きましょう」


 確かに、この目で見るまではとても信じられない。


「王都の歓楽街へ、ですよね? ここからまた馬車で三時間……」


 今から出て間に合う?


「いえ、さすがにここから馬車では向かいません。皆にも不審がられますし」


「ではどうやって?」


「魔法陣を使います」


「魔法陣?」と馬鹿みたいにオウム返しした。

 耳にしたことはあるが、無縁のものなので詳しくは知らない。


「はい。移動用の。地下の部屋に、私が描いた魔法陣があります。歓楽街にある魔法陣と繋がっていて、瞬間移動ができます。入り口と出口、のイメージで捉えていただければ」


「えっ、ちょっと待っ……モーリス卿って魔法使いですか?」


「はい。父の血を引いておりますので」


 そうだった。ドランスフィールド公は魔法が使える。武器商会のドンというイメージが強すぎて、忘れがちだけど。

 それに父曰く、コントロール能力がなくて魔法使いとしてはポンコツらしい。

 

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