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辻褄合わせ

 モーリス卿の部屋を訪れた。 


「すみません、母が。注意しても直らないので、というか、一つ注意すると二十倍文句が返ってくるので、近頃はもう諦めています」


 食事前よりげっそりしているモーリス卿に、お疲れ様ですと告げた。無関心な親を持って不幸だと思っていたが、あれはあれでしんどいのは分かる。私もげっそりしている。


「これでようやく、ウェズリーの話が聞けるんですね。こんなに過程を踏まなくても、もっと簡単に伝えていただければ良かったんですけど」


 つい嫌味を言ってしまう。


「それができればそうしたんですが、王女殿下と二人きりで内緒話をする機会など、そう簡単には得られません。親密な関係だと周囲に思わせて、野暮な邪魔が入らないようにしないと。それに、どちみち弟君の素行調査は深夜ですよ。まさか王城から深夜に王女殿下を拉致するわけにはいきません。事前に穏便に外泊許可を取るのが最善でしょう?」


 一を言えば、十返ってくる。だが正論。


「それはそうかもしれませんが、まずくありませんか? 私たちが『親密な関係』だと皆に誤解されて」


 そう、それが一番の問題なのだ。穏便に事を進めるために、モーリス卿とそれっぽい仲であることを周囲に匂わせたが、誤解されたままではお互い困るのでは。


「それは大丈夫でしょう。身の程知らずの私がジェラルディンさまに猛アタックをしたけれど、あえなく振られてしまった、ということにしましょう。ジェラルディンさまの名誉は守られます」


 なるほど、と納得できるような、できないような。うん、無理がある。


「私がモーリス卿に猛アタックされて、お断りする側ですか? そんな話、誰が信じます?」


 モーリス卿が軽く目をみはった。さすがに突っかかりすぎたと気づくも遅い。


「信じられない? じゃあ本当に付き合いますか? 私たちの仲は周囲の誤解ではなく、事実にしてしまえば、万事丸く収まりますね」


 なっ!

 今度は私が目を剥いた。


「冗談はよしてください」

「わりと本気ですが」


 わりとって。どうせからかっているのだ。


「まあそれは後でよくお考えになってください。まずは弟君の件を」



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