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公爵家

 馬車で三時間、結構遠い。途中休憩を挟みながら、無事に公爵家にたどり着いた。立派なお屋敷だ。


 モーリス卿と、身内らしき女性と子ども二人、そして大勢の使用人が出迎えてくれた。お供の護衛騎士の手を借りて馬車を降りると、モーリス卿が歩み寄ってきて、貴族式のお辞儀をした。


「ようこそいらっしゃいました。ご足労いただき恐れ入ります。お越し下さり大変嬉しいです」


「お招きありがとうございます」


 王女然として挨拶を返した。

 いくら陰で貴族たちにあざ笑われている王女といえど、表面上の面子は保たなくてはならない。皆もそれは心得ていて、形骸的に敬っているふりはする。

 このやり取りを見守っている公爵家の使用人たちも、一様にニコニコした笑みを顔に貼り付けているが、内心はどう思っているやら。

 どうしてお姉さまなの、とすごい剣幕でまくし立てていたモニークのことが頭をよぎった。


「紹介いたします。私の姉のアリスンと、その子どものマーヴィンとリオノーラです。双子の兄妹です」


「初めまして、アリスン・セシリー・ギルソープと申します。隣国へ嫁いでおりますが、しばらく帰省しております。お目にかかれて光栄です、ジェラルディン王女殿下。ほら、マーヴィンとリオノーラもご挨拶して」


 母親に促され、もじもじしていた双子がたどたどしく挨拶をした。蜂蜜色の柔らかそうな癖毛に、琥珀色のキラキラした大きな瞳、もちっとしたマシュマロのようなほっぺ。

 

 きゃ、きゃわいい。舌っ足らずな喋り方に一撃でハートを鷲づかみにされた。奉仕活動で幼子に接する機会はあるが、この双子の愛らしさは際立っている。✕2の威力か、美形の血を受け継いでいるからか。


「上手にご挨拶できて素晴らしいわ。何歳かしら?」


 中腰になり、二人の目を交互に見て尋ねた。三さい、と兄のマーヴィンが恥ずかしそうに答えた。


「ジェラルディンさま、どうぞ。ご案内いたします」


 モーリス卿の案内で、庭園を進み邸宅へ向かった。


「長旅でさぞお疲れでしょう。まずはお部屋へご案内いたしますので、晩餐の支度が整うまでゆっくり休まれてくださいね」


「ありがとうございます。あの、モーリス卿はこちらから王都まで、通い仕事を? こんなに遠いと大変ですね」


 モーリス卿について、簡単に分かる範囲で予習してきた。二十二歳で、国の防衛を司る機関の高官だ。現場で働く騎士団はその機関に所属している。

 つまり、モーリス卿は騎士団を統括する偉い機関の偉い役職だ。当然、父親のドランスフィールド公のコネで就いた職。お飾り名誉職で、実際はまともに働いていないのだろう。


「いえ、普段は王都にある騎士団宿舎で寝泊まりしております。さすがに宿舎に王女殿下をお招きするわけにはいきませんので。女人禁制ですし。あ、本日父は地方仕事で不在です。いないほうがジェラルディンさまもお気が楽でしょう」


「そうなんですね」


 と返した。そうですね、とはさすがに言えない。

 ドランスフィールド公が不在と聞いて、少しほっとしたのは事実だ。父の古い友人たちは苦手だ。

 よく言えば豪快、悪く言えば傍若無人。それも無理はない。父と同じく、魔王戦での武功で成り上がった者たちだからだ。

 ストライド家は先祖代々、武器商人だった。その界隈は今もドランスフィールド公が牛耳っている。武闘派のドンなのだ。

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