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私の弟に限って

 予告通り、私宛てに招待状が届いた。


「モーリスさまがお姉さまに!?」


 横から覗き見たモニークが、素っ頓狂な悲鳴を上げた。


「どうしてお姉さまなの? 変よ、おかしいわ。モーリスさまはモテるのに。どうしてお姉さまなの?」


「モニーク、大声を出すな」


 読書をしている兄がたしなめた。顔は上げず、視線は本の上に落としたままだ。


「釣り合いは取れるだろう。ドランスフィールド公の嫡男なら、第一王女の結婚相手として申し分ない」


「モーリスさまがお姉さまと結婚!? ウソでしょう、まったく釣り合わないわ。絶対上手く行かない」


 それはモニークに同意する。ウェズリーのことを差し置いても、あの公爵令息とは馬が合う気がしない。

 あの圧倒的な太陽感。華やかで優れた見た目、自身の魅力を自覚している自信のある振る舞い。眩しくて疲れる。気が休まらない。


 私はもっと緩やかな、心地良いそよ風のような人がいい。ふわふわとそよいで、ふんわり温かい気持ちになるような。

 ウェズリーのような、とそこまで思ってから、モーリス卿の言葉が頭の中に響いた。


『弟君の裏の顔、ご存知ですか?』


 ウェズリーの裏の顔。私の知らないウェズリーを、モーリス卿は知っていると言うの?

 それにしても、どうしてあんなに挑発的なのか。


「ねえお姉さま、断りづらかったら私が代わりに……」


「いいえ、行くわ」


 受けて立つわ、行ってやろうじゃないの。

 覚悟を決めて、招待状を持つ手にぐっと力を込めると、モニークが怯えたように息を呑んだ。


 当日。異常に緊張している。威勢よく覚悟を決めたものの、結局小心者なのは変わらない。

 堂々と、堂々として余裕を持つのよジェラルディン、と自分を鼓舞して、馬車へ乗り込んだ。向かう先はモーリス卿が待つ公爵家。


 今日のことはウェズリーには話していない。

 モーリス卿の話では、ウェズリーは今日の深夜に、どこかに出没する。私とモーリス卿がそれを見物しに行くと分かれば、来ないだろう。別邸から一歩も出ないかもしれない。


 そう、深夜にどこかに出没するということは、その時間に外へ抜け出しているということだ。それを知ったのがショックだ。

 今まで城を抜け出して遊んでいるとは言っても、図書館や古書店が開いている時間帯に限ると思い込んでいた。

 私が別邸を訪れる昼下がりには必ず戻って来ていたし。


 まさか夜にも抜け出していたなんて。夜なんて物騒なのに。昼間より治安が悪いのに。酔っ払いも出没するし、危ない目にあう可能性が高まる。まさかと思うけど、酒場に出入りしたりしていないだろうか。

 そこで悪い仲間ができて、悪いことに引き込まれていないだろうか。いいや、まさかウェズリーに限って、そんなことは。


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