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急なお茶会



「お目にかかれて光栄です」


 晴れ渡る青空、新緑の芝生に白いティーセット。鼻腔をくすぐるフルーツティーの香りと、咲き乱れる色とりどりの花々。

 この最高のロケーションで開かれた庭園でのお茶会に現れた『特別な客人』に、目が点になった。

 モーリス・ラッセル・ストライド。


「パーティーでお会いして以来、ジェラルディンさまのことが頭から離れず、父に無理を言って、本日のお茶会を設けていただきました」


 辻褄は合う。昨日父から急に、今日の午後の予定をキャンセルしてお茶会に出るよう言い渡された。義母や妹も一緒だと思いきや私一人で、その時点で、ん?と思ったのだけど。


「二人きりだと改めて緊張しますね」


 席に着いたモーリス卿が照れ笑いした。

 給仕をするメイドや護衛が近くにいるので、正確には二人きりではないのだけど。


 なにこの茶番は。

 モーリス卿はひとしきり照れた小芝居をしてから、フルーツティーに口をつけた。

 手が大きいので指も長い。ごつごつとした強そうな手だが、所作が美しい。


「あの、意図が分かりかねます」


「ジェラルディンさまのことをもっとよく知りたいと、お近づきになりたいと、切に願っております。身の程知らずだと嫌悪されるでしょうか。この胸の焦がれをどうしたら良いのか……私にも分かりません」


 すっと左胸に片手を置いて、舞台俳優のように大袈裟に苦悶の表情を浮かべるモーリス卿を凝視した。一体なにを目指しているんだろう。


「例の件でなにか。貸しを回収しに、このような遠回しなことを?」


 警戒心丸出しで声をひそめて尋ねると、モーリス卿は演技をやめてスイーツカフェで会ったときの雰囲気に戻った。


「ちょっとお耳を拝借」


 口元に手を当てて、私に耳打ちした。


「弟君の裏の顔、ご存知ですか?」


 弟君――ウェズリーの、裏の顔?


「何ですか、それは」


「私の口からは。申し上げても信用できないでしょう。ご自身の目でご覧になるのが良いかと。来週の木曜、我が家の晩餐にお招きいたします。彼が裏の顔を現すのは深夜ですから。一緒に見に行きましょう」


「ちょっと待ってください」


 理解が追いつかない。


「深夜、どこへ行くのですか」


「詳しくは木曜日にお話しいたします。ここではちょっと、ジェラルディンさまもご都合が悪いでしょうから」


 モーリス卿は主導権を譲らない。招待状をお送りしますねと言って話題を切り上げ、そのあとは延々とつまらない話をして帰って行った。




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