表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元サラリーマン、愛の力で世界を救います  作者: 坂元たつま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/19

冒険者ギルドと、新たな出会い

 アルメスの街は、思った以上に活気に満ちていた。


 街の入り口をくぐると、商人たちの声、旅人の足音、鍛冶屋の金属音、香ばしいパンの匂いが一気に押し寄せる。村とは規模も雰囲気もまるで違う。


「すごい……。これが、街か」


 人の多さに圧倒されながらも、胸が高鳴っていた。

 旅人としての一歩を踏み出した実感が湧いてくる。


 まず向かうべきは――冒険者ギルド。


 大通りをまっすぐ進むと、その建物はすぐに見つかった。

 石造りの二階建て。大きな木の扉の上に「冒険者ギルド・アルメス支部」の看板が掲げられている。人の出入りも多い。


 深呼吸して扉を押すと、中はさらに賑やかだった。


 武器を手入れする者、酒を飲む者、依頼表を必死に読む者。

 その喧騒に気圧されつつも、ハルトは受付へと進んだ。


 そこで――


「ようこそ、冒険者ギルドへ。ご登録ですか?」


 ハルトの目に飛び込んできたのは、柔らかい笑顔をした女性だった。


 肩までの栗色の髪。

 優しい印象の瞳。

 清潔感のある制服姿。


 目立って派手ではないが、誰もが安心して相談したくなるような雰囲気がある。


(……かわいい)


 思わず硬直してしまう。


「あ、はい。登録をお願いしたいんですが……」


「では、こちらのカウンターへどうぞ」


 女性はにこやかに案内してくれた。


 名前の記入欄だけの簡単な書類を渡される。


「お名前は?」


「あ、相崎ハルトです」


「では、ハルトさん。登録には年齢、生まれた地域、得意な分野などの確認がありますが……」


 そこで彼女は少し首を傾げた。


「ハルトさん、初めて見るお顔ですね。どこの村の出身ですか?」


(……やばい。転生者って言えないし)


 適当にごまかすしかない。


「えっと……小さな村で、生まれ故郷は言いにくいところでして……」


「言いたくないなら無理に聞きませんよ」


 にこっと微笑まれ、胸に温かい感覚が広がる。


《愛情反応:微細。経験値+4》


(受付の人からも経験値入るのか……)


 世界のルールを再確認しつつ、女性の名札に視線を向けた。


 そこには――


「ミーナ……さん?」


「はい。担当受付のミーナです。これからよろしくお願いしますね」


(この人……絶対ヒロイン候補だ)


 穏やかな笑顔に、ふいにドキリとさせられる。


「ではまず、簡単な魔力量の測定から行いますね」


 ミーナは机の上に置かれた透明な水晶玉を指さした。


「手を乗せてください。魔力がどの程度あるかを測ります」


「はい……」


 恐る恐る手を乗せると、水晶がぼんやりと光った。


 が――微妙に薄い。


「ん……?」


 ミーナが少し困った顔をする。


「ごめんなさい、これは……魔力量は平均より少し低め、ですね」


「やっぱり……」


「ですが、魔力量が低い方はちゃんといますし、魔法だけが戦いではありませんよ」


 励ますような言い方だった。


(ミーナさん……めちゃくちゃ優しい)


 さらに小さく光。


《愛情反応:微。経験値+6》


 優しさに触れると反応があるのか、内心メモしておく。


 登録の説明が続く。


「冒険者は階位で分かれていて、最初はFランクからのスタートになります。依頼をこなすごとにポイントが貯まり、昇格できます」


「なるほど」


「ちなみに、Fランクは簡単なお使いや雑用が中心です。おすすめは……街の周辺で採取する仕事ですね」


「採取……」


「はい。初心者の方にちょうどいいですよ」


 ミーナの優しい声を聞いているだけで、不思議と安心感が湧く。


「ではこちら、冒険者カードになります。なくさないようにしてくださいね」


 差し出されたカードには、ハルトの名前と「Fランク」の文字。


 カードを受け取った瞬間、胸に小さな光がともった。


(これで、正式に冒険者……!)


 胸が高鳴り、自然と引き締まる思いがする。



「ところでハルトさん……」


 ミーナが少し顔を近づけ、声を潜めてきた。


「街に入る時、騎士団の女性と一緒ではありませんでしたか?」


「え?」


「背の高い……黒髪を結んだ、とても綺麗な方です」


「ああ、アリシアさんですか」


「やっぱり……」


 ミーナは微妙に困ったような、嫉妬とも違うような、不思議な顔をした。


「実はアリシアさん……国内でも有名な騎士なんです。強くて真面目で、近寄りがたい雰囲気があって……」


「そうですね、確かに少し怖いかも……」


「でも、街の人からは信頼されています。ただ……」


「ただ?」


 ミーナは声をさらに小さくした。


「男性に、全然興味がないんです」


「えっ」


「以前、冒険者さんが何人もアリシアさんに言い寄ったらしいのですが……全員、真っ二つに切られたとか……」


「ひっ」


 心臓が跳ね上がる。


「もちろん比喩ですよ。心を折られた、という意味で」


(よかった……いや、よくないか)


「なので……アリシアさんと一緒に歩いていたハルトさんを見て、ちょっとびっくりしたんです」


 ミーナはほっとしたように笑った。


「護衛だったんですよね?」


「ええ、たまたま見かけただけで……」


 そう説明すると、ミーナは微かに安心した顔をした。


(え? 今の反応……まさか)


 ミーナの気持ちがほんのり揺れたのを感じた。


《愛情反応:極微。経験値+2》


(……好意が入りやすいタイプかもしれない)


 リリア=素直タイプ

 アリシア=超クール難関タイプ

 ミーナ=癒し系、やや攻略しやすい中堅タイプ


 そんな分類が頭に浮かぶ。



「では、登録は完了です。さっそく何か依頼を受けますか?」


「いえ、今日はまず街を見て回りたいと思ってます」


「そうですか。……では、もし分からないことがあればいつでも聞きに来てくださいね。ハルトさんなら歓迎します」


 ミーナが微笑む。


 その笑顔があまりに自然で、胸がまた軽く温まる。


《愛情反応:微増。経験値+10》


(受付嬢……強い)


 癒し系の破壊力は侮れない。


「本当に、困った時はいつでも来てください。……あ、無理に仕事としてじゃなくても、雑談だけでも」


「雑談……?」


「ええ。新人さんの助けになるなら、私も嬉しいですし……」


 言葉の語尾が少しだけ照れているように聞こえた。


 これは、かなり脈がある。


「ありがとうございます。絶対また来ます」


「はい。お待ちしていますね」


 ミーナは嬉しそうに会釈した。



 ギルドを出た瞬間、胸の中で経験値が小さくまとめて跳ねた。


(……この街での出会い、かなり重要かもしれない)


 女神がくれた転生特典。

 愛されるほど強くなる。


 リリアでレベルが上がったように、この街での人間関係が、次なるステップとなる。


「よし……まずは街を歩いてみるか」


 ハルトは冒険者カードをポケットにしまい、アルメスの街へと歩き出す。


 その表情には、不安よりも期待が大きかった。


 この街にはまだ――

 第二、第三のヒロイン候補がいる。


 そしてその中には、アリシアのように攻略難易度が高い相手もいるだろう。


「面白くなってきた……」


 その瞬間、背後から聞き慣れた声がした。


「あなた、登録は済んだの?」


 振り返ると、アリシアが腕を組んで立っていた。


「ア、アリシアさん!」


「街を歩く前に、騎士団からひとつ忠告がある」


「え、忠告……?」


「あなたみたいな初心者が街で無茶をすると、私が面倒を見ることになるの。困らせないこと」


「は、はい……!」


 アリシアはふいに視線を逸らし、小さくつぶやいた。


「……まあ。困ったら助けはするけど」


 その一言に胸が熱くなる。


《愛情反応:微増。経験値+9》


(アリシアさん……優しい)


 街の喧騒の中、アリシアは黒髪を揺らして去っていった。


(こうして見ると……本当に綺麗だな)


 ミーナの柔らかい笑顔。

 アリシアのクールな優しさ。

 そして、これから出会う女性たち。


「よし。絶対に強くなるぞ」


 ハルトは拳を握りしめ、次なる展開へ歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ