帰還と、揺れる視線
アルメスの街が見えた時、ハルトは思わず息を吐いた。
「……無事、帰ってこれましたね」
「ええ」
隣を歩くレイナは、いつもと変わらぬ表情だったが、足取りはどこか軽い。
旧魔導研究所での依頼は、想定以上に神経を使った。
それでも、大きな怪我もなく戻れたことに、安堵が込み上げる。
◆
ギルドに入ると、ミーナが真っ先に気づいた。
「あっ、ハルトさん! お帰りなさい!」
視線がすぐに全身を確認する。
「怪我は……」
「ありません」
「よかった……本当に」
胸をなで下ろす仕草が、心配の大きさを物語っていた。
《愛情反応:増。経験値+16》
「依頼は成功」
レイナが簡潔に報告する。
「資料も無事」
「確認しますね」
ミーナが書類に目を通しながら、何度も頷く。
「……評価、とても良いです」
「当然」
レイナは当然のように言った。
「判断が早く、無理をしない」
ちらりと、ハルトを見る。
「信頼できる前衛」
その言葉に、周囲の冒険者がざわついた。
(前衛……?)
自分ではまだその実感がない。
◆
「おかえりー」
そこへ、セシルが現れた。
「無事でよかったじゃん」
「ありがとう」
「で?」
セシルはレイナを見て、にやりと笑う。
「どうだった?」
「……悪くなかった」
「それ、最大級の褒め言葉でしょ」
レイナは否定しなかった。
セシルはハルトに目を向ける。
「やるじゃん。ちょっと遠くに行ってる間に」
「そんなことないです」
「あるある」
軽口だが、どこか視線が真剣だった。
《愛情反応:微増。経験値+7》
◆
少し遅れて、アリシアもギルドに姿を見せた。
「戻ったのね」
「はい」
アリシアはレイナを一瞥し、ミーナの報告書を見る。
「……旧研究所。無事帰還」
ハルトに視線を戻す。
「判断を誤らなかった」
「……ありがとうございます」
「褒めてる」
短く言い切る。
「もう、見習いとは言わない」
その一言が、胸に強く残った。
《愛情反応:増。経験値+20》
(アリシアさんに……完全に認められた)
◆
依頼の精算を終え、ギルドの片隅で少し休んでいると、レイナが近づいてきた。
「……次も、組める?」
意外な言葉だった。
「え?」
「条件が合えば」
視線は合わせないが、逃げるようでもない。
「はい。ぜひ」
即答すると、レイナは小さく頷いた。
「……じゃあ、また」
それだけ言って、静かに去っていく。
《愛情反応:微増。経験値+10》
(少しずつだな……)
◆
夕方、ギルドを出ると、ミーナが後を追ってきた。
「ハルトさん」
「はい?」
「……あの」
一瞬、言葉を探す。
「最近、危ない依頼が増えてますよね」
「そうですね」
「無理は……しないでください」
真っ直ぐな視線。
「ハルトさんが……その……戻ってこないと、困ります」
「……必ず戻ります」
そう答えると、ミーナは安心したように微笑んだ。
《愛情反応:増。経験値+22》
◆
その夜、宿の部屋。
ステータスを確認する。
【レベル:9】
【愛の経験値:順調に上昇中】
【周囲の評価:上昇】
(……確実に、世界が変わってきてる)
最初は、簡単に落とせる好意だった。
だが今は、信頼と行動が必要になってきている。
「……悪くない」
ハルトはベッドに腰掛け、静かに笑った。
魔王討伐への道はまだ遠い。
だが、その道を共に歩く仲間は、確実に増えていた。




