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元サラリーマン、愛の力で世界を救います  作者: 坂元たつま


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15/19

帰還と、揺れる視線

 アルメスの街が見えた時、ハルトは思わず息を吐いた。


「……無事、帰ってこれましたね」


「ええ」


 隣を歩くレイナは、いつもと変わらぬ表情だったが、足取りはどこか軽い。


 旧魔導研究所での依頼は、想定以上に神経を使った。

 それでも、大きな怪我もなく戻れたことに、安堵が込み上げる。



 ギルドに入ると、ミーナが真っ先に気づいた。


「あっ、ハルトさん! お帰りなさい!」


 視線がすぐに全身を確認する。


「怪我は……」


「ありません」


「よかった……本当に」


 胸をなで下ろす仕草が、心配の大きさを物語っていた。


《愛情反応:増。経験値+16》


「依頼は成功」


 レイナが簡潔に報告する。


「資料も無事」


「確認しますね」


 ミーナが書類に目を通しながら、何度も頷く。


「……評価、とても良いです」


「当然」


 レイナは当然のように言った。


「判断が早く、無理をしない」


 ちらりと、ハルトを見る。


「信頼できる前衛」


 その言葉に、周囲の冒険者がざわついた。


(前衛……?)


 自分ではまだその実感がない。



「おかえりー」


 そこへ、セシルが現れた。


「無事でよかったじゃん」


「ありがとう」


「で?」


 セシルはレイナを見て、にやりと笑う。


「どうだった?」


「……悪くなかった」


「それ、最大級の褒め言葉でしょ」


 レイナは否定しなかった。


 セシルはハルトに目を向ける。


「やるじゃん。ちょっと遠くに行ってる間に」


「そんなことないです」


「あるある」


 軽口だが、どこか視線が真剣だった。


《愛情反応:微増。経験値+7》



 少し遅れて、アリシアもギルドに姿を見せた。


「戻ったのね」


「はい」


 アリシアはレイナを一瞥し、ミーナの報告書を見る。


「……旧研究所。無事帰還」


 ハルトに視線を戻す。


「判断を誤らなかった」


「……ありがとうございます」


「褒めてる」


 短く言い切る。


「もう、見習いとは言わない」


 その一言が、胸に強く残った。


《愛情反応:増。経験値+20》


(アリシアさんに……完全に認められた)



 依頼の精算を終え、ギルドの片隅で少し休んでいると、レイナが近づいてきた。


「……次も、組める?」


 意外な言葉だった。


「え?」


「条件が合えば」


 視線は合わせないが、逃げるようでもない。


「はい。ぜひ」


 即答すると、レイナは小さく頷いた。


「……じゃあ、また」


 それだけ言って、静かに去っていく。


《愛情反応:微増。経験値+10》


(少しずつだな……)



 夕方、ギルドを出ると、ミーナが後を追ってきた。


「ハルトさん」


「はい?」


「……あの」


 一瞬、言葉を探す。


「最近、危ない依頼が増えてますよね」


「そうですね」


「無理は……しないでください」


 真っ直ぐな視線。


「ハルトさんが……その……戻ってこないと、困ります」


「……必ず戻ります」


 そう答えると、ミーナは安心したように微笑んだ。


《愛情反応:増。経験値+22》



 その夜、宿の部屋。


 ステータスを確認する。


【レベル:9】

【愛の経験値:順調に上昇中】

【周囲の評価:上昇】


(……確実に、世界が変わってきてる)


 最初は、簡単に落とせる好意だった。

 だが今は、信頼と行動が必要になってきている。


「……悪くない」


 ハルトはベッドに腰掛け、静かに笑った。


 魔王討伐への道はまだ遠い。

 だが、その道を共に歩く仲間は、確実に増えていた。


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