表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元サラリーマン、愛の力で世界を救います  作者: 坂元たつま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/19

街の騒動と、踏み出した一歩

 アルメスの街は、昼前になると一段と賑わいを増す。

 露店の呼び声、子どもたちの笑い声、行き交う冒険者たち。


 ハルトはギルドでの簡単な雑用を終え、街を歩いていた。


(討伐依頼の後……少しだけ、街の空気が違って見える)


 ほんの数日前まで、ここは「知らない世界」だった。

 今は、少しだけ「自分の居場所」になりつつある。


「……?」


 不意に、通りの向こうが騒がしくなった。


「誰か止めて!」

「危ないぞ!」


 人だかりの中心から、聞き覚えのある声がした。


「……まさか」


 嫌な予感がして、ハルトは人混みをかき分ける。



 路地の入口。

 そこでは、セシルが小型の魔物――スライムに追われていた。


「ちょ、ちょっと待ってって!」


 セシルは短剣を構えているが、足元に倒れた荷物のせいで動きが鈍い。


「なんで街の中に!?」


 周囲の人々は距離を取り、混乱している。


(騎士団は……まだ来てない!)


 一瞬、足が止まりかけた。


(……でも)


 頭に浮かんだのは、昨日の討伐。

 アリシアの言葉。

 ミーナの心配そうな顔。


「――セシル!」


 考えるより先に、体が動いていた。


 ハルトは剣を抜き、路地へ駆け込む。


「ハルト!? 来ちゃダメ!」


「大丈夫! 動かないで!」


 スライムがハルトに気づき、方向を変える。


 ぬめるような動き。

 だが、前ほどの恐怖はなかった。


(落ち着け……角はない。跳躍も遅い)


 踏み込み、剣を振る。


 だが――


「しまっ……!」


 剣が滑り、浅い傷しか与えられない。


 スライムが反撃に跳ねる。


 その瞬間、セシルが前に出た。


「無理しないって言ったでしょ!」


 短剣がスライムを弾くが、完全には止められない。


「……っ」


 ハルトは歯を食いしばった。


(逃げるな……)


 足を踏ん張り、剣を構え直す。


「セシル、後ろに!」


「え?」


「今度は……当てる!」


 スライムが跳ねた瞬間を狙う。


 訓練で教わった「待つ」動き。


 ――今だ。


 剣が核を捉え、スライムは霧散した。



 一瞬の静寂。


「……やった?」


 セシルが目を瞬かせる。


「……やった!」


 周囲から安堵の声が上がる。


「怪我は?」


 ハルトはすぐにセシルへ駆け寄る。


「ない……けど」


 セシルは少し呆然としていた。


「……なんで、来たの?」


「危なかったから」


「それだけ?」


「……それだけ」


 セシルはしばらく黙り込み、次の瞬間、笑った。


「ほんと、バカ」


 だがその声は、どこか嬉しそうだった。


《愛情反応:増。経験値+20》


(……助けてよかった)



 遅れて、騎士団が到着する。


「街中で魔物を討伐?」


 アリシアが状況を確認し、ハルトを見る。


「あなた……やったの?」


「はい」


「……一人で?」


「セシルも一緒です」


 アリシアは腕を組み、しばらく沈黙した。


「……無謀ではあった」


「……」


「でも」


 視線が真っ直ぐ向けられる。


「逃げなかった判断は正しい」


 その一言が、胸に響いた。


《愛情反応:増。経験値+18》


「街の中では、守る意識が大事よ」


「はい」


「……それを、ちゃんと持ってる」


 アリシアはそう言って、背を向けた。



 その後、ギルドで事情説明をすることになった。


「本当に、よかった……」


 ミーナは胸に手を当て、深く息を吐いた。


「無茶は……でも、無事で……」


 言葉が少し混乱している。


「すみません、心配かけて」


「……いいえ」


 ミーナは首を振った。


「勇気を出してくれて、ありがとうございました」


 その視線は、今までより少しだけ特別なものだった。


《愛情反応:増。経験値+22》


(……この力、確かに増えてる)



 その夜、宿の部屋でハルトは一人、ステータスを確認した。


【レベル:7】

【愛の経験値:大幅上昇】


(……急に、上がったな)


 だが、それは数値以上の実感があった。


 誰かのために動いた。

 怖くても、踏み出した。


「……これが」


 この世界で生きるということ。


 ハルトはベッドに倒れ込み、小さく笑った。


「少しは……冒険者らしくなってきたかな」


 街の灯りが、窓の外で静かに揺れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ