表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元サラリーマン、愛の力で世界を救います  作者: 坂元たつま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/19

初討伐依頼と、三者三様の想い

 アルメスの街に朝日が差し込む頃、ハルトはすでに目を覚ましていた。


(今日は……討伐依頼)


 訓練を始めてから二日。

 体はまだ重いが、剣を握る手には確かな感触が残っている。


 宿を出てギルドへ向かうと、いつもより胸が少し高鳴っていた。



 ギルドの中は朝から賑やかだった。


「おはようございます、ハルトさん」


 ミーナがすぐに声をかけてくれる。


「今日は……こちらの依頼を受ける予定ですよね?」


 差し出された依頼書には、はっきりと書かれていた。


【街道沿い・ホーンラビット討伐/危険度:低】

【報酬:銀貨一枚】


「ホーンラビット……?」


「角の生えた魔物です。単体なら危険は低いですが、油断すると突進されます」


「……わかりました」


 昨日までなら躊躇していただろう。

 だが今は、少しだけ自信がある。


「アリシアさんが同行してくれることになっています」


「え?」


「騎士団の巡回を兼ねて、とのことです」


 その言葉に、心が引き締まった。


(見られる……ちゃんと戦わないと)



 街道を進むと、すでにアリシアが待っていた。


「準備はできている?」


「はい!」


 即答すると、アリシアは少しだけ目を細めた。


「……いい返事ね」


「昨日の訓練のおかげです」


「そう。なら、無駄にしないこと」


 歩き出そうとしたその時。


「おーい!」


 聞き覚えのある明るい声が響く。


「……嫌な予感」


 アリシアが小さく呟いた直後、セシルが駆け寄ってきた。


「その依頼、あたしも受けたんだけど」


「あなた、勝手に――」


「初心者放っとくほど薄情じゃないでしょ?」


 セシルはにっと笑い、ハルトの肩を叩く。


「大丈夫。ちゃんとフォローするから」


「よ、よろしくお願いします……」


 アリシアは深いため息をついた。


「……好きにしなさい。ただし、指示には従うこと」


「はーい、隊長」


「隊長じゃない」


 空気が少し和らぐ。


(……この三人で討伐か)



 街道から少し外れた草原。

 足跡を追って進むと、すぐに魔物の姿が見えた。


「……いた」


 草むらの奥、角の生えた兎型の魔物――ホーンラビット。


 二体。


「セシル、右。ハルト、私の後ろに」


「え?」


「今はまだ、前に出る段階じゃない」


 冷静な指示。


 アリシアが踏み込み、素早く一体の注意を引く。


 その瞬間、もう一体が横から跳んだ。


「ハルト!」


 セシルの声。


 体が自然に動いた。


 剣を構え、踏み込む。

 昨日の訓練で繰り返した動き。


 ガキン。


 角を弾く感触が腕に伝わる。


「……できた!」


「いいよ、そのまま!」


 セシルの声に背中を押され、ハルトは一歩前に出る。


 魔物が体勢を崩した瞬間、アリシアの剣が閃いた。


 二体同時に倒れる。


 戦闘は一瞬だった。



 静寂。


「……無事?」


「は、はい……」


 心臓が激しく鼓動している。


 だが――恐怖より、達成感が勝っていた。


「よく反応したわね」


 アリシアの声は、いつもより柔らかい。


「私が言うのもなんだけど……合格よ」


「本当ですか?」


「ええ。昨日より、確実に成長してる」


 その言葉に胸が熱くなる。


《愛情反応:微増。経験値+15》


「でしょ?」


 セシルが胸を張る。


「ちゃんと前見てたもん。あれ、訓練してない人の動きじゃない」


「……ありがとう」


「素直なの、ほんといいよね」


 軽くウインクされ、思わず視線を逸らす。


《愛情反応:微。経験値+7》



 討伐を終え、街へ戻る道すがら。


「……無茶しなかった」


 アリシアがぽつりと呟いた。


「え?」


「前なら、怖がって動けなかったでしょう」


「……はい」


「それを、ちゃんと判断して動いた」


 歩調を合わせながら、アリシアは続ける。


「守られる側から、一歩前に出始めた」


 その言葉は、何よりの評価だった。


《愛情反応:微増。経験値+10》


(アリシアさんに認められた……)


 自然と背筋が伸びる。



 ギルドに戻ると、ミーナが駆け寄ってきた。


「お帰りなさい! ……あっ、怪我は?」


「ありません。無事に終わりました」


「よかった……」


 ほっとした表情。


「……本当に」


 その一言が、胸に深く染みる。


《愛情反応:増。経験値+18》


「初討伐、成功だね」


 セシルが笑う。


「今日は奢りでもいいんじゃない?」


「えっ」


「冗談、冗談」


 だがその場の空気は、どこか和やかだった。



 宿へ戻る途中、ハルトはふと立ち止まった。


(……ちゃんと、前に進んでる)


 愛されて強くなる。

 だが、それは決して楽な道ではない。


 相手と向き合い、信頼を積み重ね、行動で示す。


 それが、力になる。


 まだ弱い。

 だが確実に、昨日の自分とは違う。


 ハルトは空を見上げ、小さく息を吐いた。


「……次も、頑張ろう」


 その言葉に、誰もがそれぞれの思いを胸に抱いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ