妖狐の眷属化
「ねえ、なんで帰りたいの?ねえ、なんで?」
男がヨウカに近寄って聞いてきた。
ヨウカは、スマホを取り出して警察に電話をしようとした。
しかし、スマホは電源がつかなかった。
「なんで………」
「無駄だよ、異界で現世のものは使えないよ。ヨウカちゃん」
「い、かい?」
ヨウカは、男が何を言っているのか分からなかった。そのせいで、彼がなんで自分の名前を知っているかを考えている場合ではなかった。
「そうだよ、ここは君がいた場所・現世とは別の世界の異界」
「何を言って………」
ヨウカは、男が何を言っているのか理解できなかった。
「さっきいろんな人を見たでしょ?狼男やスケルトン、キョンシーとか───あれらはみんな本物だよ。」
男の頭に先が少し尖った耳が生え、九本の尻尾が生えた。
「そして、僕は妖狐。コゲツって呼んで。」
「よう、こ?」
「そうだよ。ねえ、異界で一緒に暮らそう。」
「なんで私なの?」
ヨウカには、コゲツにそんなことを言われる筋合いは思い当たらなかった。
「えっ覚えてないの?」
「?」
「昼間に僕とぶつかったじゃん!」
「えっと……それで腹いせにやったってこと?」
「違うよ。そのとき、僕は君に一目惚れしたんだ。」
「ひと、め、ぼれ?」
「うん、そして僕のものにしたいと思った。人間のままにしておくのはもったいない。永遠にその美貌を保っておきたい」
「ごめんなさい、そんなのはいや。だから、家に帰して」
ヨウカは、コゲツの話を到底受け入れることができなかった。
だから、彼女は彼に背を向けて、走って逃げようとした。
「待ってよ」
あっという間にコゲツに追いつかれたヨウカは、彼に抱き込まれて、尻尾で逃げられないように包まれた。
「放して」
「残念だけど、それはできない。ここで君を逃がしたら、ほかのやつに殺されちゃうかもよ?」
「ひっ……ころ……」
「それに、もう逃げることなんてできないよ。10月31日が終わったら、異界と現世の扉は閉まっちゃうんだから」
「えっ………じゃあ、帰れないってこと?」
「まあ、そうなるね。でも、大丈夫!ここで一緒に暮らせばいいんだから」
コゲツはそう言って、何かをブツブツと唱え始めた。
唱え終わったと思ったら、ヨウカは、身体が熱くなるのを感じた。
「あ、あつい……」
ヨウカは、コゲツにもたれかかった。
「大丈夫……怖くないからね……」
しばらく痛みに身体を苦しめていた彼女だったが、しばらくするとそれもおさまった。
「うん、かわいくできた。」
「えっ?!」
ヨウカが出した鏡に映る自分を見て、彼女は驚愕した。
「見てごらん、妖狐の耳と尻尾だよ。」
そこには、頭から耳を生やし、一本の尻尾が生えた彼女が映っていた。
「これで、一生一緒にいられるね。異界で二人楽しく暮らそう。」
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異形の存在に決して魅入られてはいけない……
もしも────
それらに魅入られ、異界に連れてこられてしまったら……
────二度と現世には戻ってくることができなくなってしまうだろう……
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いちおうこれで完結です。
もしかしたら外伝を出したりするかもです。




