おまけのお話 舞踏会だよ!
トートとエヴィとヴィルをお茶に招くついでにザイア陛下に招待されたノィユは、王家のお茶会に鼻歌スキップだ。
お菓子とサンドウィッチがタワーになってる!
よだれじゅるじゅるで踊りそうなノィユに、ザイア陛下とアォナ王配殿下が、面白いものを見る目になってる。
「そうだ、今夜、王室主催の春の舞踏会があるんだよ。ヴィルとノィユは正式に伴侶になったんだし、お披露目に丁度いいだろう」
にこにこ告げるザイア陛下に、お菓子を口いっぱいにほおばって、バターとあまい蜂蜜にとろけていたノィユは仰け反った。
あわあわ手を挙げると、ザイアが頷いて発言の許可をくれる。
「あ、あの、僕、ちっちゃいので、ヴィルと踊れません!」
ものすごい身長差だからね!
抱きつくのがおひざだからね!
「抱っこ、する?」
小首をかしげてくれるヴィルが天使で、抱っこは大歓喜なのですが!
「……ヴィルと、踊り、たい……」
しょぼんと落ちたノィユの肩を、わるい笑みを浮かべたザイア陛下がぽふぽふする。
「変わった魔法を研究してる人がいてね、ちょっとの間ならノィユを大人にできるよ。16歳くらいかな?」
「ほ、ほほほんとですか! そ、そそそれはえちえちの許可が!?」
「成人は18だァア──!」
エヴィに叫ばれました。
ごめんなさい。
「せっかく王都に来てくれたんだし、踊りに来て。エヴィもトートも一緒に」
微笑むアォナ王配殿下に、ヴィルが首を傾げる。
「踊る?」
「……あの、僕、おっきくなるの、ヴィル、やじゃない?」
「ぜんぶ、ノィユ、だから」
ふうわり微笑んでくれるヴィルのおひざに抱きついた。
「ヴィル、だいすき!」
「その調子でうちのザファの初恋を完膚なきまでに叩きのめしてくれたら、ザファも心置きなく次に行けるだろう」
「望み皆無なんだから、さっさと見切りつけないとね! 未練がましく、ねちねちうじうじしてると真剣にきらわれちゃうからさー、悲惨だよ」
うむうむしてるザイア陛下とアォナ王配殿下が、失恋のプロだ。
「胸の張り裂ける失恋を乗り越えてこそ、立派な王となれるのだ!」
拳を握るザイアに、アォナが拍手してる。
仲良し伴侶だよ。
ほわほわ、不思議な魔紋に包まれたら、16歳になりました!
「僕の若いときのだけど」
舞踏会用の装束を渡してくれたエヴィのまなじりが、ちょっと赤い。
「エヴィさまは今もめちゃくちゃお若いです! お心遣い、ありがとうございます」
丁寧に頭をさげて衣を受け取ったら、エヴィの蒼の瞳が鋭くなる。
「踊れるの?」
「……え、えと……」
前世の知識にネメド王国の舞踏会のダンスは含まれていません!
「ちょ──! 今夜なんだよ!? お兄さまに恥をかかせたら──!」
「だいじょうぶ。練習しよう、ノィユ」
はにかむように微笑んだヴィルが、手を引いてくれる。
「お、お兄さまのおみ足を踏んだりしたら、許さないんだからぁあアァア──!」
ギリギリしてるエヴィにごめんなさいと思いつつ、ヴィルにダンスを教えてもらいました!
至福!
だって、抱っこして、密着して『愛しあってます♡』全開で踊っていいんだよ!?
至福!
前世では運動が苦手だったけど、今世は3歳で脳みそがやーらかいのか、運動神経がまあまあよいのか、ヴィルが教えてくれたステップをするする呑み込んでくれた。よかった。
ぶすくれたエヴィも頷いてくれたので、皆で舞踏会です!
「おい、あれ、ヴァデルザ家当主様じゃないか……?」
「舞踏会にいらっしゃるなんて、珍しい」
「……ちょっと待て。なんだあの精霊の子は──!?」
舞踏殿に足を踏み入れた途端、詰めかけた貴族たちがざわざわした。
「……月の精霊ノチェさまにそっくりじゃないか……?」
「いや、陽の精霊ユィクさまだろう!」
「おふたりの子ども!? まさか──!」
16歳になってるのでね、両親が5歳の時の子どもになっちゃう!
確かにまさかだ!
しかし両親が精霊さんみたいに言われてるよ。精霊さんにおこられちゃう!
心配なノィユは、漂うふくよかな肉汁の香りに足を止めた。
おぉおおお!
そ、その壁際に並べられているのは、お、お肉では──!?
食べてもよいのですか!?
ざわざわする貴族より、お肉に夢中なノィユに、エスコートしてくれるヴィルが肩を揺らして笑ってる。
「もらう?」
「は、ははははい!」
「ちょ──! 踊らないで食べるとか止めてよ!」
エヴィに叱られました。ごめんなさい。
竪琴が奏でられ、ヴィルが手を引いてくれる。
指を重ねて、端っこで踊ろうとしたら、貴族たちがさあっと道を空けてくれた。
「来たか」
微笑んだザイア陛下が手を挙げると、舞踏殿が静まり返る。
「ヴィル・ヴァデルザとノィユ・バチルタだ。伴侶として認可した。祝ってやってほしい」
「……バチルタ……?」
「や、やはり精霊の子──!?」
「し、しかしあの家は借金まみれでは!?」
「身売りか!?」
「あのかんばせなら次代の王配にもなれるだろうに、ヴァデルザ家!?」
ざわざわする貴族たちに、ザイア陛下の眉があがる。
「ひ──!」
静まり返った舞踏殿は、お祝いの拍手に満たされた。
「あ、あの、ヴィル、ごめんなさい。借金まみれな僕のせいで、酷いこと、言われて──」
「あの人たち、は、いつも、わあわあ、してる。気に、しなくて、いい」
舞踏会でも、ヴィルの雪の髪はもしゃもしゃで。その理由が、あの人たちなのかと思うと、胸が潰れる。
ぎゅ、と唇を噛んだノィユは、顔をあげる。
「踊ろう、ヴィル!」
ほんのり紅いまなじりで頷いたヴィルが、手を引いてくれた。
竪琴が、夜を揺らす。
おどる
瞳をかさねて
腰に腕をまわして
抱き寄せて
おどる
踏み込む足に、白い衣がひるがえる。
あなただけを瞳に映して
愛してるをこめて
おどる
竪琴が、消えてゆく。
「わぁあぁアア──!」
万雷の拍手と歓声が降ってきた。
「……え?」
びっくりするノィユに、ヴィルが微笑む。
「ノィユ、きれい」
「ヴィルだよ!」
きゅう
抱きついた瞬間
ぽふん!
音が鳴って、魔法がとけた。
「…………え?」
ちっちゃくなったノィユに
「おぉおぉおおお──!?」
周りの皆もびっくりしてる。
3歳のノィユを抱きあげて、ヴィルが笑ってくれる。
「踊ろう、ノィユ」
火照る頬で、ぎゅっとヴィルの首に抱きついた。
「ヴィル、だいすき! あいしてる!」
ざわざわしていた舞踏殿が、静寂に包まれる。
ひとつの拍手が、あふれる拍手に変わってゆく。
「見ました?」
「見ました」
「ヴァデルザ家当主のご尊顔が御髪の隙間からちらっと拝めたなんて、今日はなんてよき日──!」
「精霊の子は、成長するとああなるのですね、うひゃあぁあ──!」
「並び立てるのは、お互いだけ!」
「月の精霊ノチェさまと、陽の精霊ユィクさまとおんなじアレですな!」
「これ以上お似合いな方がいましょうか!」
たくさんの拍手の向こうで、ザファ王太子殿下が、泣いてる。
「くぅうう──!」
「な、ザファ、あれは無理だろう。次行こう、次!」
「失恋したことあるほうが、やさしくて、強い、いい子になれるんだよ!」
ザイア陛下とアォナ王配殿下が、涙のザファを抱きしめた。
ごめんなさいをこめて、胸に手をあて、膝を折る。
ヴィルも一緒に、膝を折ってくれた。
涙をぬぐったザファ殿下が、拍手してくれる。
「……おめでとう」
涙の瞳で、笑ってくれた。
おまけのお話まで読んでくださって、ありがとうございます!
評価やブックマークで応援してくださる方、ほんとうにありがとうございます!
おかげで、ちょこっとランクインさせていただけたみたい? で、まだ読んでくださる方がいらっしゃることに、びっくりして、ノィユとヴィルと一緒に、とても、とてもうれしいです。
本にしていただけることになった『もふもふ獣人に転生したら最愛の推しに溺愛されています』皆さまのおかげでコミコミスタジオさま週刊ランキング小説部門9位、Web版、本日、最終日です! 今日まで無料なので、活動報告から、もしよかったら!
ノィユとヴィルをずっと可愛がってくださって、心から、ありがとうございます!




