ようこそ!
「おっきめの肥料ひと袋と、ちっちゃな洗顔料ひと袋と同じ値段にしましょうか。高いほうが効く気がしますから!」
ふふんと胸を張るちっちゃなノィユに、可愛い豪商ニィハは首を振った。
「ノィユはまだまだ甘いね。火山灰の細かさで等級をつけよう。極上の細かさのものと、すこし荒いもの、荒めのもの、3段階にして、値段を変える。
極上のものは貴族向けに、あんぽんたんみたいに高い値をつけてやる! あほ売れするぞ!」
愛らしさをかなぐり捨てたニィハが握る拳に、ノィユはぱちぱち拍手した。
「さすがニィハさま!」
「いや僕は平民だから」
「大切な共同事業者です!
バチルタ家と一緒に、がっぽり稼ぎましょう!」
「がっぽりぃいイイ──!」
可愛いニィハが、別の人になってる。
よい感じに日も暮れて参りましたが、貧乏なバチルタ家には、夜ご飯を用意するお金がありません!
「僕が野草と茸の汁物をおつくりします!
ちょっと森で採ってきますね。水と鍋はありますからだいじょぶです!」
拳を掲げるノィユに、バチルタ家以外の皆が、あんぐりしてる。
「の、ノィユちゃん、お客様なんだから、芋くらいは……」
「肉の切れ端とか」
「ガラとかないのかな?」
領民の皆さんに心配された!
「おお、ノィユ! 腐りかけの野菜があるぞ、持っていけ!」
「うわあん! おじちゃん、いつもありがとうー!」
「ノィユちゃん、鳥ガラあるよ! お客様だし、タダでいいよ!」
「うわあん! お兄ちゃん、いつもありがとうー!」
腐りかけの野菜と鳥ガラをいただいて、泣いて喜ぶバチルタ家に、皆が泣いてる。
「皆さま、ようこそいらっしゃいました! バチルタ邸です!」
案内したノィユが胸を張る。
「………………え………………?」
バチルタ家以外の皆が、あんぐりしてる。
いちおう領主の館っぽくおっきめだけれど、屋根が傾いて、窓が割れてるのを板で塞いで、隙間風がびゃーびゃーしてる。
埃とかはないようにお掃除してるけど、足を踏み出すたびに、老朽化でギシギシ鳴る。
雨漏りもするので、あちこちに桶が置いてある。動かしたらだめなんだよ。
「こ、ここに、住んで、る……?」
「はい!」
領民の皆さんより酷い家だよ。
さすが最底辺貧乏バチルタ家!
バチルタ家以外の皆が泣いてる。
ヴィルが抱っこしてくれた。やさしい。
いちおうある客間に案内したら、皆が引き攣った。
「いやちょっと寝台と寝具を買うね、ごめんよ」
ボロボロすぎた!
「こ、こちらこそ誠に申しわけなく──!」
バチルタ家一同でそろって頭を下げました。
ご飯のお金もないのに、皆の寝台とお布団や枕や敷布を買うお金なんて、勿論ないよ!
町の皆が寝台と布団を運びこんでくれている間に、鳥ガラとお野菜をやわらかに煮込んでスープにして、恵んでくれた商品にならないくず芋をふかしてみたよ!
「え、こんな貧相なご飯が、おいしいんだけど──!」
ものすごく舌が肥えてるだろうに、可愛いニィハがあんぐりしてる。
「ほうほう、これが素材のうまみ、というものじゃのう」
邪悪な魔法使いっぽいゾホがうむうむしてる。
「へえ、バチルタ家領でできる野菜ってうまいんだな。うまい野菜のクズを食ってるから鳥もうまい。極上お野菜、宣伝のための嘘じゃないのか」
ガチムチガディも褒めてくれた。よかった!
「………………♡」
茶色いフードの瓶底眼鏡な王兄メィファも、おいしそうに食べてくれてる。うれしい。




