きゅうえん?
「はー、3歳で優秀で天才で、選書の腕は確かだったのにな……」
あわよくば領地復興に知恵を貸してくれないかなとか浅ましいことをちらっと考えちゃったから、こんなことに!
しょんぼりするノィユに、エヴィが涼やかな眉をあげる。
「ノィユ、本物の天才って知ってる?」
「……え、ネニ……?」
敬称忘れました。
「賢そうに見えるのは、大抵、本物の天才じゃない。器用なだけだ」
ふんとエヴィが鼻を鳴らす。
「エヴィさまは本物の天才にお逢いになったことが……?」
聞いてみたノィユに、エヴィは目を剥いた。
「お兄さまに決まってるだろぉおおお──!」
絶叫いただきました。
ありがとうございます。
「あ、身内びいきだと思ってるだろう! お兄さまがどれだけ破格な天才なのか、この僕が100年かけて叩き込んでやろう!」
「あの、死にます」
申告してみた。
はずかしそうにヴィルの耳がほんのり赤くなって、両親が笑うのをこらえるように、ぷるぷるしてる。
「でもこれだと図書館が使えなくなっちゃいましたね。せっかく領地改革しようと思ったのに!」
残念だ!
でも図書館あるあるだと思うけど、新刊は予約でいっぱいで1年以上待たないと借りられなくて、人気の本ほど延滞しまくる人が連なっていて全然回ってこないし、予約100件とか涙しかないし、すぐに借りられる本はちょっと古い。
この世界でもおんなじで新しい本は高位貴族や上位貴族が独占していて、下位貴族が読める頃には古くなってる。
性格はアレだけど選書の腕はよかったネニのおかげで、バチルタ領の現状は把握できたし、これ以上は難しいかも。
本で読んだ知識で領地改革って言っても、包材業者とか流通業者とか農耕技術指南とか、誰を頼ったらいいのかとか、肝心なところが全然解らないよ。
口コミが検索できないんだよ! どうしたらいいの……!
バチルタ家の特技『変なのに引っかかる』が発動したら大変だ!
「はー……せっかく領地改革できると思ったのに……」
しょぼんと落ちたノィユの肩を、ヴィルのごつごつのてのひらが、ぽんぽんしてくれる。
「仲間、紹介、する」
「わあ、ヴィルのおともだち!? 伴侶って紹介してくれるの? うれしい! ありがとう、ヴィル! 大すき!」
きゅう、とおひざに抱きついた。
面白そうにエヴィがぷるぷるしてる。
「お兄さま、仲間と仰ると──」
もさもさの雪の髪を揺らして、こくりとヴィルがうなずいた。
「売れ残り仲間」
な、なんとなく危険なワードな気がする……!
しかしヴィルのおともだちなら、変な人はいないはず──!
心配と期待が闘うノィユの隣で、ヴィルが魔法を起動してくれる。
「救援、求む」
「……救援なの……!?」
あわあわするノィユとバチルタ家を横目に、ヴィルの魔法陣が輝いた。
『何かあった? 今なら皆いるよ! 学究の宮まで来られたし』
「わあ!」
魔法に拍手するノィユに、両親も一緒に拍手してる。
エヴィは長い指をひらめかせ、魔法でネァルガ家の馬車を呼んでくれた。
「あ、あのあの、ぶ、分不相応で、誠に申しわけございません……」
深々と頭をさげるノィユと一緒に、両親も頭を下げてる。
「お兄さまがいらっしゃるんだから当然でしょ。おまけに乗せてあげる」
ふふんと胸を張るエヴィがやさしい。




