しあわせなのです
一緒にお風呂に入って、一緒に出て、一緒に部屋に帰ってきて、髪を乾かしてあげるとか、伴侶最高──!
うっとりしながらヴィルの髪を
「ほわほわー」
魔法で乾かすノィユを
「魔法は、おっきく、なったら」
ヴィルが止めた。
「あ、そ、そうだった。ごめんなさい」
ぽふぽふタオルオフに変えたノィユが、ヴィルの真っ白な雪の髪をやさしく撫でる。
「髪、きれいね」
「ノィユ、短いほうが、すき?」
細くてやわらかい髪だからか、風が吹いたり時間が経ったりすると、すぐもしゃもしゃしてしまうらしいヴィルが首を傾げる。
お風呂上がりはさらさら揺れる雪の髪に、指をすべらせたノィユは、ささやいた。
「僕だけに、かっこいーヴィルでいて欲しい気持ちと、めちゃくちゃかっこいーヴィルが僕の伴侶だって自慢したい気持ちと、どっちも、さもしい気持ちだから。
ヴィルは、どっちのほうが、すき?」
いつもはもしゃもしゃの髪の向こうに隠れてしまう藍の瞳が、ふせられる。
「髪と、髭がないと、人が来て、わあわあ言われる。それが、苦手で。受け答え、できない、し、巧く……話せない、から」
「じゃあこのままで」
微笑むノィユに、ヴィルの眉が下がる。
「……いや、じゃ、ない……? おじいちゃん、みたい、で……」
「ヴィルはとびきりかっよくて、とびきりかわいー!」
きゅ
抱きしめて、とろけて笑う。
「僕の、自慢の、伴侶です」
ふうわり朱くなったヴィルが、笑ってくれる。
「ノィユが、伴侶に、なってくれて、うれしい」
「僕も!」
おでこをくっつけて、ふたりで笑った。
願うと、互いの額に、互いの魔紋がきらめきはじめる。
「ヴィルの伴侶にしてくれて、ありがとう」
「ノィユの伴侶に、してくれて、ありがとう」
手を繋いで、瞳を重ねて、からまる指が、やさしくて、あまくて、切なくて。
そっと、ヴィルの頬に、くちびるで、ふれる。
「……ヴィル……」
あなたを呼ぶ声が、あまく、あまく、つやめいて、かすれて、消える。
「ノィユ」
抱きしめて、やさしく背を、髪を撫でて、赤い頬で笑ってくれる。
それだけで、とろけてしまうほど、しあわせなのです。
ヴィルがエヴィを甘やかして可愛がる任務のため、王都にひと月も滞在することになりました!
王都はネメド王国中の情報と産業が集まる地だ。
借金返済のヒントが、もしかしたら、あるかもしれない……!
「おかあさま、おとうさま、何としても借金を返さねばなりません。王都滞在を有益なものとするのです!」
拳をにぎるノィユに
「おー!」
両親も拳を掲げてくれる。
王都にいなければできないこと、と考えて、皆で王立図書館に通うことにしました。
トートが王陛下の側近として王宮にゆくついでに、王宮の近くの図書館まで馬車で送ってくれることになったよ。
やさしい!
「ありがとうございます、トートさま。この御恩をお返しできますよう、バチルタ家一同、奮闘します!」
胸に手をあてひざを折ったら、トートの意外にごつごつな掌が頭をなでなでしてくれた。




