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【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします  作者:   *  ゆるゆ
本編

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45/87

しあわせなのです




 一緒にお風呂に入って、一緒に出て、一緒に部屋に帰ってきて、髪を乾かしてあげるとか、伴侶最高──!


 うっとりしながらヴィルの髪を


「ほわほわー」


 魔法で乾かすノィユを


「魔法は、おっきく、なったら」


 ヴィルが止めた。


「あ、そ、そうだった。ごめんなさい」


 ぽふぽふタオルオフに変えたノィユが、ヴィルの真っ白な雪の髪をやさしく撫でる。


「髪、きれいね」


「ノィユ、短いほうが、すき?」


 細くてやわらかい髪だからか、風が吹いたり時間が経ったりすると、すぐもしゃもしゃしてしまうらしいヴィルが首を傾げる。


 お風呂上がりはさらさら揺れる雪の髪に、指をすべらせたノィユは、ささやいた。


「僕だけに、かっこいーヴィルでいて欲しい気持ちと、めちゃくちゃかっこいーヴィルが僕の伴侶だって自慢したい気持ちと、どっちも、さもしい気持ちだから。

 ヴィルは、どっちのほうが、すき?」


 いつもはもしゃもしゃの髪の向こうに隠れてしまう藍の瞳が、ふせられる。


「髪と、髭がないと、人が来て、わあわあ言われる。それが、苦手で。受け答え、できない、し、巧く……話せない、から」


「じゃあこのままで」


 微笑むノィユに、ヴィルの眉が下がる。


「……いや、じゃ、ない……? おじいちゃん、みたい、で……」


「ヴィルはとびきりかっよくて、とびきりかわいー!」


 きゅ


 抱きしめて、とろけて笑う。



「僕の、自慢の、伴侶です」



 ふうわり朱くなったヴィルが、笑ってくれる。



「ノィユが、伴侶に、なってくれて、うれしい」


「僕も!」


 おでこをくっつけて、ふたりで笑った。



 願うと、互いの額に、互いの魔紋がきらめきはじめる。



「ヴィルの伴侶にしてくれて、ありがとう」


「ノィユの伴侶に、してくれて、ありがとう」



 手を繋いで、瞳を重ねて、からまる指が、やさしくて、あまくて、切なくて。


 そっと、ヴィルの頬に、くちびるで、ふれる。


「……ヴィル……」


 あなたを呼ぶ声が、あまく、あまく、つやめいて、かすれて、消える。


「ノィユ」


 抱きしめて、やさしく背を、髪を撫でて、赤い頬で笑ってくれる。




 それだけで、とろけてしまうほど、しあわせなのです。









 ヴィルがエヴィを甘やかして可愛がる任務のため、王都にひと月も滞在することになりました!


 王都はネメド王国中の情報と産業が集まる地だ。

 借金返済のヒントが、もしかしたら、あるかもしれない……!


「おかあさま、おとうさま、何としても借金を返さねばなりません。王都滞在を有益なものとするのです!」


 拳をにぎるノィユに


「おー!」


 両親も拳を掲げてくれる。


 王都にいなければできないこと、と考えて、皆で王立図書館に通うことにしました。


 トートが王陛下の側近として王宮にゆくついでに、王宮の近くの図書館まで馬車で送ってくれることになったよ。


 やさしい!


「ありがとうございます、トートさま。この御恩をお返しできますよう、バチルタ家一同、奮闘します!」


 胸に手をあてひざを折ったら、トートの意外にごつごつな掌が頭をなでなでしてくれた。








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