おまけです
ヴィルのおまけで、ノィユと両親はネァルガ家で滞在させてもらえることになり、お部屋もご飯も恵んでもらえることになりました!
「エヴィさま、トートさま、天使!」
思わず拝んだノィユと両親に、ちょっとびっくりしたらしいエヴィとトートが、ふふんってうれしそうに胸を張ってる。かわいい。
ネァルガ邸に帰ってきたノィユは、鼻歌スキップだ。
「ごはん、ごはん♪ ネァルガ家の、晩餐──! きゃ──!」
もだもだするノィユと一緒に、両親もくねくねしてる。
エヴィの目が、白い。
「こ、こんなのがお兄さまの伴侶だなんて──!」
ハンカチを噛みたそうなので、さっと差しだしてみた。
「どうぞ、エヴィさま」
「……余計むかちゅく──!」
おこに火を注いだようです。
通されたのは当主と伴侶と客人が食事をする餐の間だ。
磨きあげられた木目がつややかな飴色に輝き、たくさんのろうそくがちらちら揺れながら辺りを照らしてくれる。
お金持ちは魔道具で明るくすることもできるみたいだけど、あえてろうそくを使って風情を楽しむんだって。用意するのが大変な従僕さんたちの怨みは見えないみたいだよ。さすがお金持ち。
「おつかれさまです」
控えていた従僕さんに頭をさげたら『わかってくれますか!』みたいにうるうるして会釈を返してくれた。
不思議そうな顔をするトートにノィユは手をあげる。
うなずいて発言の許可をくれたので、進言してみた。
「ろうそく、大変なんですよ!」
こんなにたくさんのろうそくに火をつけたことなんてないけど、絶対大変だ!
ノィユに言われて初めて気づいたかのように、トートは目をまるくした。
従僕の皆さんが涙目なことにも気づいたらしい。
「た、確かに。皆に今まで苦労をかけてすまなかったね。これからは卓にひとつにしようか」
眉をさげるトートは話のわかる当主みたいだ。
ネメド王国最高峰のネァルガ邸なのに、エヴィの近くでトートが食事をするためなのか、他の人を招きたくないのか、広やかな部屋に反してテーブルはこぢんまりしていた。
国に名だたる高位貴族の邸宅だなんて、めちゃくちゃ豪華で眩暈がして卒倒するかと思っていたから、やさしい雰囲気にほっとする。
エヴィとトートの人柄を表しているのかもしれない。
キンキンギラギラの趣味のわるい置物や絵画はひとつもなかった。
代々お金持ちの風格と、品のよさが香る。
そんなにお金持ちそうに見えないのに、着ている服の仕立てがめちゃくちゃいいトートみたいだ。
「今、失礼なこと、思ったよね?」
にっこり笑うトートが鋭すぎてこわい。
とても上品なのに気さくな感じがほんのり香る食卓についたノィユの胸が期待に跳ねる。
ネァルガ家の晩餐だ。
きっと、お肉──!
お肉の舞い踊りが──!
よだれが口から滴り落ちそうなノィユの隣で、両親もおそろいの口になってる。
もごもごしてる。
エヴィの白い目が刺さってくるけど、口からよだれが滝のように流れ落ちそうです──!
はあはあしそうなノィユの頭を、とてもかわいそうな子を見る目で、ヴィルがやさしくぽふぽふしてくれる。
天使だ。
いちばんの上座、お誕生日席にトートが、右隣にヴィルが、左隣にエヴィが座る。
右のほうがネメド王国では上座なんだよ。
ヴィルの隣がノィユだ。
ロダもお客様待遇で着席を許されたので、ノィユの隣に。
ノィユの正面に母が、その隣に父が座ったら、晩餐のはじまりです!




