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【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします  作者:   *  ゆるゆ
本編

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26/87

おひざだよ




「ぼ、僕もついてく! お兄さまが、だまされてないか、ちゃんと見届けるんだから!」


 ぎゅぅう、とヴィルの腕にすがりつけるエヴィが、うらやましい。


 ノィユが抱きつくのは、おひざだ。


「ヴィルにも、エヴィさまにも、トートさまにも、ロダさんにも、決して嘘はつきません! ありのままを正直にお話しします」


 エヴィに対抗するように、ノィユにおひざを抱っこされたヴィルが、真っ赤な顔を覆ってる。



「エヴィ、僕らはお邪魔だよ」


 なだめるようにエヴィの腰にさりげなく回そうとしたトートの腕が、素晴らしい速度でエヴィに叩き落とされてる。



「邪魔なのはトートだけだもん──!」


「エヴィ──!」


 伴侶漫才が楽しい。



「心と、言葉が、裏腹な、エヴィを、ずっと、慈しんで、愛して、くれて、ありがとう」


 微笑むヴィルに


「お義兄さまにお礼を言われることではありませんから──!」


 叫ぶトートの耳が赤い。

 こっちもツンデレみたいだよ。


 ロダがによによして、ネァルガ家の衛士の皆さんもにこにこしてる。



「エヴィが行くなら、僕も行きます」


 ヴィルに対抗するように前に出るトートに、エヴィが細い眉をしかめた。


「えー、トートは来なくていいよ。僕がお兄さまといちゃいちゃしてるところ、そんなに見たいの?」


「エヴィ──!」


 トートが号泣してる。


 エヴィがほんのり楽しそうだ。

 ちょっとトートが可哀想になってきたよ。





 衛士さんが馬をもう1頭連れてきてくれて、馬車もひと回り大きな6人乗りになって、皆で王宮に向かうことになりました。


 ノィユはおまけ枠で、馬さんたちが頑張って牽いてくれるらしい。

 きゅうきゅうになっちゃうので、ヴィルのおひざ抱っこだ。


 ほんのり赤い頬で抱っこしてくれるヴィルと、とろけて笑うノィユに


「きぃいイィイイ──!」


 エヴィの愛くるしいかんばせが、ものすごいことになってる。

 ロダが、にこにこしてる。

 これがエヴィの通常営業みたいだよ。

 トートはエヴィと一緒の馬車に乗れて、とてもうれしそうだ。


 エヴィとトート、お似合いみたいだよ!



 高位貴族と上位貴族と一緒に馬車に乗ることになった両親が、青くなってカタカタしてる。

 馬車でも一番隅っこの下座を死守してる。ロダにも譲りたくないみたいだよ。


 ネメド王国では、伴侶を持つことによって、個人の家格が上がったり下がったりはしないのだけれど、ネァルガ家当主の伴侶となったエヴィは、ちょっと配慮されて、ヴァデルザ家当主のヴィルより上座に就くことになるらしい。


「僕がお兄さまより上だなんて、天地がひっくり返っても、ありえないから!」


 しゃっとエヴィがヴィルより下座の、ヴィルの隣に座ろうとするので


「じゃあ僕もお義兄さまを立てて」


 微笑んだトートが、ちゃっかりエヴィの隣の下座に座ってしまう。


「………………」


 一番上座に座っていいのかな、という顔をしたヴィルをよそに、エヴィの隣でにこにこしたトートが手を挙げた。


「出してくれ」


 御者さんが応えて、馬さんが走り出す。


 緑豊かな帝都郊外にある広大なネァルガ家から、6人乗りの馬車で王都に向けて出発です。







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