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闘うおじいちゃん執事なロダが強すぎる!
さらに魔物がガウンガウン当たってきても、平気で進む馬車──!
「……ヴァデルザ家、すごい……」
ノィユと両親の顎が、落ちそうになってる。
たまに王都に召喚されるため、ヴァデルザ家から王都へと続く道が、いちおうあるそうなのだが、ヴァデルザ家以外の者は通れないらしい。
──魔物に殺されるんですね、わかります……
『ひぃいいい!』
必死に悲鳴を呑みこんでいる両親は、頑張ってる!
ノィユも冷や汗ダラダラの背で、拳をにぎる。
3歳のノィユにできることなんて何もないかもしれないけれど、魔物が襲撃してくるのにヴィルとロダに闘わせて、馬車で守ってもらうなんて、めちゃくちゃ申しわけない。
「あ、あの、僕、魔物を、見たことがなくて、あの、び、びっくりすると思うんですが……あの、僕でもお手伝いできることは、ありますか……?」
「わ、私どもも、闘います!」
ぷるっぷるの腰が引けてる母と父が、ぷるぷるな拳をかかげてる。
きょとんとしたロダとヴィルが顔を見合わせる。
「ここ、しっかり、にぎる」
ヴィルの言葉に、ノィユと両親はこくこくうなずいた。
馬車のなかにつかまるための取っ手がついていて、革が巻かれている。
しっかり握りしめられた痕でいっぱいだ。
ほんとに魔物がガウンガウン当たって揺れるんだ!
ぴゃ──!
泣きそうになるのを必死でこらえる。
「悲鳴をあげないでください。魔物が興奮して寄ってきます」
ロダの言葉にガクガク両親がうなずいた。
ちょっとちびりそうになったノィユもきゅっと唇を引き結ぶ。
まだ泣いてないし、悲鳴をあげてない、とか喜んでる場合じゃない。
『魔物が来るよ』だけでちびりそうだなんて、情けない──!
「ぼ、僕、ヴィルの伴侶にふさわしくなれるよう、強くなる!」
ぷるっぷるの拳をかかげるノィユに、照れくさそうに、うれしそうに、はにかむようにヴィルが笑ってくれる。
「……俺も、ノィユに、ふさわしく、なりたい」
ごつごつの手で、手をにぎってくれた。
「ブルルルン!」
ツーとホーがいなないて、鋼鉄のめちゃくちゃ重そうな馬車が、軽快に走りだした。
魔物の森を突っ切る道は、細い獣道みたいなもので、とても馬車が通れるような幅ではないし、悪路だろうに、巨体をかろやかに操り、飛ぶように馬車が駆けてゆく。
「え……!? と、飛んで、る……!?」
ツーとホーが並んで、ぶわっと前足を蹴ると、ふわっと馬車が、浮いて、る──!?
しっかり取っ手をつかみながらあんぐりするノィユと一緒に、両親もしっかり取っ手をつかみながらあんぐりしてる。
「馬も跳ぶように走るでしょう? 馬より遥かに脚力がありますので、あの滞空時間が長くなると考えていただければ。ツーとホーじゃないと、このような獣道を馬車を牽いて走るなど、とてもとても」
ですよね──!
「す、すごい──!」
着地するのは、大地を蹴って反動をつけるためのほんの僅かな時間で、ほとんど飛んでる!
歓喜と拍手するノィユの賞賛が聞こえたのだろう、自分たちのことだと解ったらしいツーとホーが、誇らしげにいなないた。




