表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします  作者:   *  ゆるゆ
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/87

ほんとの僕




 あばばばば!

 はじめての夜が不穏で終わったら大変だ!


 ほんとうを告げる決意を固めたノィユは、ヴィルを見あげる。


「ご、ごめんなさい、僕、生まれる前の記憶がちょこっとあるみたいで、色々変なこと言うかもしれないけど……」


 ほんとは契約する前に言うべきだったと思うけど、信じてもらえないかもしれないうえに、ふざけてると思われて不愉快にさせてしまったらと、怖くて言えなかった。


 でも早く言うに越したことはない。

 王の認可が出ていないから、まだ正式には伴侶じゃない。


 ヴィルがいやなら、引き返せる。

 もちろん、伴侶になった後でも離縁できるよ。



「……生まれる、前の記憶……?」


 ぽかんとするヴィルにうなずく。


「僕ね、魔法がなくて、その代わりに科学が発達した世界で生まれて、生きて、30代くらいで死んだっぽいの。だからヴィルと同い年くらいだよ!」


 前世の脳力が全然ないから、チートなんて欠片もないけど。

 同い年くらい! たぶん!

 だから歳の差あるかって言われると、?? なんだよね。心としては!


「……その世界で死んで、この世界で生まれた?」


 ふしぎそうにヴィルが首をかしげる。


 この世界に、輪廻転生の観念はない。

 夢物語に聞こえるだろうに、頭から否定することなく、ヴィルはノィユの話を聞いてくれる。


「契約の前に話せなくて、ごめんなさい。……ふざけてるって思われるかなって……もしヴィルが、こんな気持ちのわるい僕がいやだったら──」


「そんなわけ、ない!」


 ぎゅっと抱きしめてくれる腕が、あったかい。

 広い背中に回す指が、うれしい。


「……夢みたいな話なのに、僕のこと、信じてくれるの……?」


 藍の瞳が、まっすぐ見つめてくれる。

 目を見て、うなずいてくれた。


「ノィユは、賢過ぎるから。……天才だと、思ってた」


「まさか!」


 笑ったノィユは、ヴィルの胸に頬を寄せる。


「経験も知識も何にもないけど、僕、ヴィルと同い年くらいだからね」


「わかった」


 ちいさくヴィルが笑う。


「ちょっと、気が楽に、なった」


「え?」



「……ちいさな男の子が、趣味なのは……ちょっと……」


 もごもごするヴィルが、かわいー!



「じゃあ僕、はやくおっきくなっても、だいじょうぶ?」


「おねがいする」


 ヴィルが笑って、ノィユも笑う。



「……初めて逢ったなんて、嘘みたい」


 ごつごつのヴィルの指をつかまえる。

 剣だこの手を、そっとなでたら、ヴィルの指につかまえられた。


「……俺も」


 ちっちゃな指を、愛しむようになでてくれる。


 みあげる藍の瞳は、星の空みたいだ。




 そっと、目を閉じたら


 ふわりと、かんばせが近づく



 ちゅ


 あまやかな音をたてて、くちびるが、頬にふれる



 燃える頬で、ヴィルを抱きしめて


 その頬に、そっと、くちびるを、押しあてた。



 ちゅ



 あまい音が、からまる指が、かさなる瞳が、燃えるように熱い。



「……ちゅう、はじめて」


 ささやいたら、ぎゅうぎゅう、抱きしめてくれる。


「…………………………俺も」


 耳まで真っ赤なヴィルが、世界一かわい──!




「はじめて、ぜんぶ、一緒にしようね」


 きゅうう


 抱きついたら、紅い耳で、真っ赤な頬で、ヴィルがノィユの胸に顔を埋める。


「……ノィユのほうが、大人だ……」


「同い年なんだから、一緒だよ。ね?」


「……大人の対応……」


 拗ねたみたいなヴィルに、声をたてて笑う。



「ヴィル、かわいー! だいすき!」


 ぎゅううう


 抱きしめたら、抱きしめてくれる。



「……俺も」


 どきどきして、眠りたくなくて、ずっと話していたいのに


 あったかい指がつながって、あったかい胸に、腕に包まれたら

 やさしい睡魔が降りてくる



「……ヴィル……」


 むにゃむにゃしたら、頭のうえでヴィルが笑った。



「おやすみ、ノィユ」


 そっと


 そっと


 やさしいくちびるが、おでこに、降ってくる


 おかえしをしたくて、手をのばしたら、ねだるようにかがんでくれた。


 ちゅ


 ヴィルのおでこに、くちびるをくっつけて、笑う。



「おやすみ、ヴィル」


 からめた指まで、愛しくて



 はじめての夜が、やさしく、やさしく更けてゆく。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ