ばら色の未来のために!
ちゃんと乾かしたら、もしゃもしゃだったヴィルの髪が、さらさらになったよ!
「髪、きれいね」
とろけて微笑んだノィユは、雪の髪をやさしくすいた。
おじいちゃんの白髪じゃなくて、もともとこういう色みたいだ。
月の光をまとうように、ほのかに青くきらめくさまが、ほんとの雪みたい。
さらさらになった髪をなでなでしたら、照れくさそうにヴィルのまなじりが朱く染まる。
かわいー!
もだもだしちゃう!
こんなにかっこかわいー伴侶ができるなんて、人生に勝った──!
大歓喜しちゃうけど、繋ぎとめるのが大切だからね。
おとうさんも、力強く『つかまえておけ』言ってたからね!
がんばるよ!
最初に、はじめての夜だ!
きゅ、とヴィルの寝衣の裾を握って、上目遣いで見あげてみる。
「一緒に、寝ても、いい?」
「もちろん」
ふうわり笑って頷いてくれたヴィルが、困ったように眉を寄せる。
「もしかしたら……寝相が、悪い、かもしれない……寝ている間に、ノィユを、つぶして、しまわないか、心配だ」
「ぼ、僕も、ヴィルのお腹を蹴っちゃうかも!」
ふたりであわあわして、ふたりで笑った。
指がつながる、ただそれだけで、とろけるようにあまい。
頬が熱くて、胸が熱くて、鼓動がとくとく駆けてゆく。
雨漏りのするバチルタ家では考えられない、天蓋つきのふかふかの大きな寝台に、ふたりで横になる。
「さむくない?」
布団を掛けながら聞いてくれるヴィルの胸に抱きついたノィユが笑う。
「あったかい」
ふわふわ紅くなったヴィルが、ノィユを抱っこして笑ってくれる。
身体の芯がしびれるようないい匂いのするヴィルの胸に顔を埋めたノィユは、ささやいた。
「僕、おじいちゃんの下のお世話をする覚悟と、いじめられちゃう覚悟をしてきたのに、至上のしあわせを手に入れちゃった」
ぽかんと口を開けたヴィルが、喉の奥で笑う。
「……俺も、どんな子、なんだろ、悪ガキとか、生意気とか、乱暴とか、子育てとか、無理だし、援助の契約したら、帰って貰おうと、思ってた」
跳びあがりそうになったノィユが、ヴィルの寝衣をにぎる。
「僕、帰らなくていいよね……? ヴィルと、ずっと一緒だよね……!?」
にじんでゆく視界で、紅いまなじりのヴィルが、微笑んだ。
「そばにいて」
あまい、あまいささやきに、心が、身体が、指先までとけてゆく。
「……初恋に落ちたと思ったら叶うなんて、すごい」
「…………俺も」
ぽそぽそ呟くヴィルの頬が、真っ赤だ。
「うわぁん! ヴィル、だいすき!
待っててね、あと15年したら、僕、とびきりヴィルを可愛がってあげるから──!」
ちっちゃな腕でぎゅうぎゅう抱きしめたら
「…………え。…………そっち、なの……!?」
ヴィルが驚愕してたけど、見なかったことにした。
15年あるから、話し合う時間はたっぷりあるよ!
しかしヴィルの元気が、どこまで続いているか……!
「今からウナギとかマムシとか精力剤とか色々研究しておこう。薔薇色生活のために!」
「………………ノィユ…………?」
ヴィルの目が不穏になってる。




