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三途の川のほとりでコンビニ店員始めました  作者: 雪途かす


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12/12

終:変わらない日常

 その日、退勤した俺は、鬼籍荘に向かう途中で、ふと足を止めた。


 なんか、ここでの暮らしにもだいぶ慣れたな。


 死んだはずなのに、まるで生きていた頃よりも「日常」というものを感じている気がする。

 三途の川を渡れず、仕方なく始めたコンビニバイト。最初は戸惑いと諦めしかなかったのに。


 と、その時。


「おや、ヘブン・イーヴンの……」


 前からやってきたのは、懸衣翁のバイトをしていら灰田さんだった。


「あ、灰田さん。お疲れ様です」

「これから帰宅ですか?」

「はい。灰田さんは出勤ですか?」

「ええ。そろそろたくさんの死者がやってくる時間なので」

「死者がやってくる時間……?」

「ええ。地縛霊にならずここに来るためには、供養をされる必要があります。仏教であれば火葬されたタイミングですね。火葬は基本的に日中に行われますので」

「あー、なるほど」


 納得して頷くと、灰田さんは「では、失礼します」と言って俺の横をすり抜けて行ってしまった。


 ヨミちゃんが言っていた通り、真面目が服着て歩いている感じだ。生前に同じクラスにいたらまず関わらないタイプだろう。


 此岸でのコンビニバイトという不可思議な環境で、自分は確かに、他者と関わりながら暮らしている。


 俺は小さく息を吐くと、前を向いた。

 彼岸に渡る日はいつか来るだろう。それまで、自分にできることをやっていこう。


「……よし。明日も、ちゃんと働こう」


 小さな決意を胸に、俺は自宅へ向かって再び歩き出した。

 

 あの世とこの世のあいだ。

 渡し賃が貯まるその日まで、もうしばらくここで、頑張ってみよう。


 死んだはずの俺に待っていた、まさかのバイト生活。

 でも、ここでの生活も悪くないと、俺は思い始めていた。

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― 新着の感想 ―
藍沢君が三途の川を渡るのは随分先になりそうですが……続きが気になります!
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