選挙ポスターに関する公職選挙法改正とSNS規制はどうするのか? について
◇決まりそうなこと ⇒ 選挙ポスターについて新たな規制
筆者:
7党若しくは6党での合意でポスターの品位に関する公職選挙法改正案と、
今回は「付則」として検討することに留まることになった「2馬力」と「SNS偽情報対策」についても考えていきたいと思います。
質問者:
7党での合意と言うのは凄い話ですね……。
筆者:
国政政党の中ではれいわ新撰組と共産党だけが「表現の自由の権利」の観点から反対したようですね。
※「品位」や「2馬力」で問題が取り沙汰された旧NHK党は現在国政政党では無いです。
質問者:
でも、それだけの政党が賛成という事は、まずこのままの案で法律化されそうですよね……。
具体的にはどのようなことが選挙ポスターで規制されるようになったのでしょうか?
筆者:
今回の公職選挙法の改正案では、
・候補者の氏名を見やすく記載するよう義務づけ。
・他人や他の政党の名誉を傷つける内容、善良な風俗を害したりするなど品位を損なう内容の記載を禁じる。
・商品宣伝などの行為には100万円以下の罰金を科す。
・全ての選挙で規格を長さ42センチ以内、幅40センチ以内に統一(これだけ参政党が賛成せず、6党の合意)
と定めることになりそうです。
※ちなみに東京都知事選挙での品位を貶めるポスターは、公職選挙法では無く、迷惑防止条例などを理由に初日に剥がされました。
質問者:
ポスターの件は昨年7月の東京都知事選挙で問題になりましたよね……
筆者:
従来であればこんなことを規定せずとも「紳士協定」みたいなもので、
誰もやってこなかったわけです。
しかし、昨今の政治家が「法律に抵触していなければOK」という厚顔無恥ぶりで政治資金のポケットに入れる様相が、選挙そのものの品位を落とすポスターやビジネス目的のポスターなどを生み出してしまったと思っています。
ですが「違法では無いこと」は必ずしも「倫理的にやっていいこと」では無いわけです。
しかし、残念なことにそのことを履き違えている方がいらっしゃるという事です。
質問者:
しかし、それでも規制を増やしてしまう事は「表現の自由」にとってあまり良くないことのような……。
筆者:
「自由」というのは「他者の権利を侵害しない程度において」という絶対的な前提条件があります。
ただ、現在の規制では他者の権利を害してしまうこと、
大きな不快感をもたらすこと、
投票行動に悪影響をもたらす状況などが起きていることから、
今回の追加の規制はやむを得ないことだと僕は思っています。
※しかもポスターは勝手に剥がすことは出来ず選挙管理委員会などに通報しなくてはいけないです。
◇「2馬力」への規制は見送り
質問者:
なるほど、現状で倫理的に問題行動を起こしてしまう人がいる以上は仕方の無いことなんですね……。
今回規制の対象として検討されていた「2馬力」というのは、あれは一体どういう事なんですか?
筆者:
去年11月の兵庫県知事選挙では、「NHKから国民を守る党」の立花孝志氏が、自身の当選を目的とせず立候補し、事実上の「斎藤知事の応援」に回ったことが問題になりました。
斎藤知事の演説後にサラリと現れて「これまでの斎藤県政を擁護する」演説を永遠と続けると言った活動を続けていたことから「事実上の2人分の枠を使って立候補している」と言われてしまったわけです。
僕もこのようなことを背景とすると「2馬力」を許すような状況を規制するための制度をすぐさま構築していくべきだと考えます。
質問者:
確かにそれを許すと、お金持ちの方が他の人を建てて自分を応援すると言ったことが出来てしまいますね……。
ではどうして、今回は「検討をする付則止まり」という事になったんでしょうか?
筆者:
まず、「当選を目的としない」と言うのはどこまでのことを言うのかが謎であるという事です。
立花氏の一件では齋藤知事から「直接頼まれたわけでは無かった」ということでOKだったようなので、「ボランティア」として立候補者の範囲内である「表現の自由」が認められてしまったのです。
質問者:
よく言われている供託金の引き上げについてはどうなんでしょうか?
筆者:
それについては反対したいですね。
供託金は一定程度の得票率を得れば返金されるものの、
GNI(国民総所得)比率で見た場合の日本の供託金は、これでも世界で一番高額になっています。
そのためにこれ以上供託金の金額引き上げてしまいますと、選挙のために用意するお金は増えてしまい(前払いのため)、立候補がしにくくなってしまいます。
また、かなり上げないと「影のリターン」が供託金をも上回ると思うのであれば何の意味も無くなります。
質問者:
それならどうしたら良いんでしょうか……。
筆者:
これは他でもあまり言われてい無さそうな僕の私見なので賛否はあると思うのですが、
街頭演説で「他の候補者について「評価すること」を禁止すれば良いと思います。
これによってプラスの評価をすることが出来なくなりますので、
「2馬力」という事が難しくなります。
ついでに、「批判の不毛な応酬」という事も防ぐことが出来るために、
より自らの公約を訴える街頭演説になると思われます。
質問者:
なるほど……。
でも、何か他の候補者と何の関りが無いというのもどうなのかなぁ? という感じもするんですけど……。
筆者:
それならば、大きな選挙なら「公開討論会」の立候補者の参加義務付けを行うと良いと思います。(緊急を要する理由が無く参加しない者は立候補取り消しとみなす)
ただ、討論会でも「モラルを逸する人間」と言うのが出てきそうなので、ここでのルール作りも大事になりそうですけどね。
◇SNSは規制では無く「簡易免許制」又は「スコア制度」にするべき
質問者:
いちいち事細かくルールを定めないと無法地帯になってしまうだなんて、本当に今の日本人の方々はどうしてしまったんでしょうかね……。
SNSでデマ情報の規制についてはどうしたら良いんでしょうか?
選挙に影響を与えてしまうようなデマ情報では深刻なモノになりそうですけど……。
筆者:
これは選挙に限った話では無いのですが、
SNSのデマ情報は災害時などでは生死に直結しかねないと思います。
(デマを頼りに救助隊が駆けつけて、救える人を救えなくなる可能性があるため)
選挙においても火消しに成功しても、肝心の選挙がもう終わっている可能性があります。
「悪事千里を走る」という言葉がありますが、その「悪事」が「デマ」であったとしてもセンセーショナルのために伝わる速度は速く、火消しの速度は遅いことは近年の研究結果でも明らかになっています。
皆面白そうな話は拡散したり「いいね」をしたりしたくなってしまうのです。
ですが、モラル無きSNSはいわば「全員に言論の重火器」を配っている状況であり、
これを規制していかなければSNSそのものの存続すら危うくしていくことでしょう。
質問者:
これに対して有効な対策はあるんでしょうか……。
筆者:
これは選挙対策では無くSNS全般への対策になってくると思うんですけど、
ある程度の「個人情報の紐づけ」と「信用スコアの表面化」というのはやむを得ないのではないか? と考えています。
特に、社会的影響をもたらしそうな発信に対しては「過去にこういう出来事でマイナス評価を受けていました」と自動的に表示するぐらいの措置です。
「ネットリテラシーの試験」を通過しなければ「収益化」を出来ないようにする上にその試験内容に反する行為をした場合は「収益化剥奪」と言った措置を容易に行う事を可能にすることです。
また、名誉棄損についても裁判での訴訟手続きや費用、手間を考えるとそんなに気軽にできるものでは無いのでプラットフォーム側で対応するのがベストだと考えます。
質問者:
なるほど、言論そのものは統制しないものの、倫理的秩序を収益化を剥奪したり、スコアなどで分かり易くするのですね……。
※現在においても「スコア」に近いものは内部データに存在していると言われており、フォロアーにすら見られにくくなる「シャドーバン」のようなことが起きていると言われております。
筆者:
それぐらいSNSでの発信には「威力」があり、個々人に責任があると思うからです。
そして、「アテンションエコノミー」や「インプレッション」によるお金稼ぎの社会的損失も大きいです。
ただ、「紐づけたくない」と言う方の意見も尊重したいので、個人情報を登録しなければ「お勧め表示しにくくする」と言った措置を取ることでそれぞれの整合性を取っていけばいい塩梅なのかな? と思います。
また、SNS運営企業が個人情報を流出した場合、個人に対しての損害賠償の補償を手厚くするなどの措置も入れておく必要があると思います。
(要はSNS運営企業は顧客の個人情報を死ぬ気で守れということ)
質問者:
「裏垢を作る自由」みたいなのも一応は残しておくという事なんですね。
筆者:
アカウント数が広告出稿数に影響すると思うので、アカウントそのものは減らさない方向性が良いと思います。SNS企業にはそれなりの負担を強いることになるのである程度の旨味も残しておく必要があるでしょう。
こういった「政治的発信の規制」という側面をするのではなく「SNS運営における根本を是正」していき、「自然な形でユーザーの発信を健全化」に向かわせる方が良い方向性に行くのではないか? と僕は考えています。
質問者:
それぐらいSNSの影響力は大きく、その発信は他の方の人生すらも左右しかねないという事ですよね……。
筆者:
現在はまだまだ「SNS過渡期」なのだと思います。
でも、その過渡期を過ぎて安定した状況になれば、「何かに忖度している」と思われるテレビや新聞などのメディアと比べると遥かに有用であると僕は思いますね
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回の公職選挙法改正案は「違法では無いからOK」という日本人のモラルの低下を背景にしたものであるということ。
ポスターについては全面的に肯定したいものの、
2馬力防止のための措置やSNS全般の誤情報を流布する者に対する「スコアの表面化」などを行う必要があるという事をお伝えしました。
今後もこのような政治について個人的な解説をしていきますのでどうぞご覧ください。