環境設定RPGで起きたバグ『高レベルモンスターが最初の町を囲んだ』って状況を打破するために人間にチートを積んで色々試してみる話。
世界には人類が数百人だけ。
『無限に湧き出る水』も『広大で肥沃な土地』も『尽きることのない鉱脈』もあるから、何千年もこのままの状態で生きてこられてる。
それは神が創ったルールだから。
人類は決められた範囲。街の中心部にある塔から半径50キロ以内。
そこから外には、レベル1000を超えるモンスターが待ち構えている。
人類の平均レベルは7。
歴史上の最高は500で、それはもう数百年も前の話。
みんな、生きているけど、希望は無い。
外と中を区別する塔の結界に縋ってて、中での生を惰性で過ごしてる。
けどたまに、『勇者』が生まれる。
ステータスに『ブレイバーシステム』と書かれている者は、他の人間よりもすごく強くて、生まれつきレベルが100を超えてる。
そんな『勇者』が生まれる度に、ぼくらは勝手な希望を抱いては、失望して絶望する。
「こんな非道な運命は変えないといけない!人類が立ち上がる時だ!」
『ブレイバーシステム』を持ってる者の特徴はあと二つ。
異常な勇気と、扇動力。
死を顧みない勇敢で心強く荘厳でかっこいい。そんなオーラに当てられて、他のみんなも希望を持つ。
そうして生まれた『勇者』は、街の外に蔓延るモンスターを倒して、その先に待ち構えるラスボス『魔王』を倒すために、迷い無く街の外へ飛び出して
呆気なく死ぬ。
いくらレベル100だろうとレベル300だろうと。
仮にレベル1000の突然変異が産まれても。
レベル1000以上が人口よりも多いなんて、勝ち目はない。
めちゃくちゃレアな『ブレイバーシステム』を持つ勇者が二人以上生まれても、多分無意味。
そんな事分かっていても、人々は街の外へ、モンスターのために餌を運ぶ。
そんな時に、初めて見る現象が起きた。
『ブレイバーシステム改』
『レベルシステム改』
『マジックシステム改』
『スキルシステム改』
四つもある『超勇者』が現れた。
人類のステータスは『レベル』『HP』『MP』『筋力』『魔力』『敏捷』『忍耐』『知力』『幸運』でできているが、この子はそれに加えて『ネオレベル』『SP』『気力』『仙力』『亜力』『パッシブスキル』『アクティブスキル』『ドグマスキル』を備えている。
従来の魔法よりも強力な魔法が使える様になり、『スキル』の中には魔法の効果を高めるものや、ステータスを増加させるものもあった。
レベルもいくらでもぐんぐん上がり、3歳で過去最高の500を超えた。
10歳で1000を超えて、旅立ちの18歳の頃には5000を超えた。
人々は彼を熱狂的に支持した。
待ちに待った旅立ちの日。
みんなに見送られて外へ出た『超勇者』は、最初の魔物を倒した。
倒す度にレベルは上がる。レベルが上がればステータスも伸びる。
10匹を倒した時、何かが空から降ってきて
超勇者は一瞬で死んだ。
ソレは魔王だった。
極悪なオーラを放っている魔王。
超勇者は最終的にレベル10000弱に届いていたのに対して、魔王のレベルは
『100万』
結局、押し潰されて死んだ超勇者は、魔王にまるで敵わなかった。
モンスターの1割も倒せずに、簡単に、蟻の様に死んだ。
人類はまた絶望に追い込まれて、でも最低限の安全があるから、またのんびりと待ち続ける。
次の勇者を。