平穏な一生を送りたい私が、妹のたくらみのせいで悪役令嬢といわれ、婚約破棄され、なぜか隣国のヤンデレ王に拾われ監禁され、溺愛されましたどうしてこうなった?モフモフをめでただけなのに?
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私は平穏な一生を送りたかっただけなのです。
「エミー、お前を愛している。一生離さない、ずっと僕のそばにいろ」
「……鉄鎖をはずしていただければ考えますわ」
「それはできない、お前が逃げようとするからだ! そうだ、お前をいじめたあいつらを滅ぼそう、そうすれば、逃げようとするのをやめてくれるよな?」
「これを外していただけたら考えますわ!」
私の手にはじゃらりと鉄鎖が、そして目の前には紅の瞳、黒い髪の絶世の美青年がおりました。
どうしてこんなことになったのでしょうかね?
寝台で迫られている私は、これを外してくださいと哀願するも、だめだとすげなく断られています。魔法大国と言われたこの国の王とする会話ではないと思われますわ!
寝台に二人、そして逃げようとする私と迫る美青年、名前はクレイといいます。
一応隣国の王ですわ。
しかし……最初は親切な人だなと思っていたのに……ここまでするとは……。
いえ強引ではありましたけどね!
ええ、こんなことになったのも意地悪妹の流した噂のせいだったのですわ……。
始まりはひと月前にさかのぼります。
『エミリナ、お前を妹のユージニアをいじめた罪により婚約破棄とする!」
『いじめておりませんわ!』
ええ何かおバカな会話ですが、婚約破棄を宣言されたのは私でしたわ。
王太子殿下となぜか婚約が決まり、私は妹の嫉妬の視線におびえる毎日でした。
ひどいひどいと毎日言われ、精神がおかしくなりそうでしたのよ。
私のほうがふさわしいと妹が叫ぶたびに両親がたしなめてました。
私は魔法力が高いが、容姿がいまいちの姉、そして愛らしく麗しい社交的な妹、そしてそんな妹を溺愛する両親。
という家族を持ちました。
両親も容姿はいまいちで、どうしてそんな両親からあんな妹が生まれたのか、絶世の美女だった祖母によく似たそうですが……。
そして妹はたいそう口が上手で、私はいつも言いよどみ、お姉さまがいじめるの~という妹の訴えでいつも両親に怒られておりましたわ。
いじめるといわれても、貸したものを返して、とか、人の悪口はやめたほうがいいという姉としての忠告が全て、意地悪に変換されるのです。
違います!
いつも大切なものをとったのは妹ですわ!
でも何度言っても信じてもらえず、妹を嫉妬でいじめる悪い姉のうわさを流されるまでになりました。
そんなで十二歳になった、私の心の癒しはモフモフ、森で拾った一匹の黒猫でした。
ふわふわが大好きだったのですが、猫も犬も飼うのを許してもらえず、動物嫌いの両親はぬいぐるみですら嫌い、触らせてもらえませんでした。
モフモフで愛らしく、赤い瞳がルビーのようで、私はルビーと名付けかわいがっていました。
大層汚れていましたが、洗うとふわふわで、私はモフモフを堪能し、そしてルビーといつも遊んでいました。
両親は大の猫嫌い、飼うことなんて許してもらえるわけもなく私は黙って飼うことにして、なんとか半年が経ったのですが……。
でも……野良猫を拾って部屋で飼っていることが妹の告げ口によりばれまして、私は両親にルビーを捨てられてしまったのです。
泣きました、泣いて泣いて、ルビーをどこに捨てたのか問い詰めても知らん顔、妹はお姉さまいけないんだ、猫なんて黙って飼ってと笑うのです。
そして……私は絶対にこの妹には大切なものを奪わせまいと心に決めました。
それから心を閉ざし、私は四年間生きてきました。
何をしても妹より目立てばいじめるといわれ、告げ口をされる。
なれば目立たず平穏な一生を送ろうと決めたのです。
幸い私は魔法力が高いので、魔法師になろうと、魔法学園に入りました。
すると後を妹が追いかけてきたのです。
ええ、魔法学園では妹は注目の的です。外面がいいので、誰からも愛されました。
姉は人嫌い、妹は社交的、そして容姿は正反対。
私は別に人嫌いではなく、人とかかわるのが苦手なだけでしたが、妹のうわさで「人嫌い」ということになっておりました。
それはそれで仕方ない、私は黙って研究室にこもり……。
『どうしてお姉さまが王太子様の婚約者になるのですの!』
『姉を差し置いて、妹を……』
『どうして! どうして! ずるいですわ!』
ええ、なぜか私が王太子の婚約者に選ばれたのです。
魔法力の高い人間は貴重ということで、血筋から決まったようです。
でも妹が第一候補だといわれていたので、その決定は私にとっては寝耳に水でした。
『ずるいですわ、お姉さま、どうしてお姉さまみたいに意地悪な人が!』
私とて断りたかったです。だけど申し出を受けないとさすがに家の存族が危ぶまれます。
私は婚約を受け、ずるいずるいと叫ぶ妹をやり過ごすことに終始しました。
やがて半年が経ち、私が魔法学園を在籍しながら、十六になって王太子殿下と結婚することになり、そしてその話し合いで呼び出されて、先ほどの婚約破棄宣言となったのです。
妹がなにやらしていることは気が付いていましたが、王太子殿下に取り入るとは予想の斜め上をいきました。
だって私を悪役令嬢とすると、一族に害が及ぶかもしれませんのに……。
しかしそれは妹、うまく言いくるめたらしく、私は国外追放とされることと決定しました。
『お姉さま、ごめんなさい、お幸せにね、お姉さまが大好きな書物がたくさんある国にせめていかせてあげるって、王太子様がいわれたましたし、よかったですわ』
捨てセリフがそれですか、という感じでした。
私は確かに書物とモフモフをこよなく愛していますが、一番のモフモフはルビーだけですわ!
私は反論の余地もなく、国外追放となりました……妹のにこにこ顔は忘れられません。
「……平和ですわ」
隣国との境の辺境に送られ、私は大好きな書物がたくさんあって幸せでした。
どうもかなり昔、うち捨てられた塔にいることになったのです。
昔、悪事を働いた魔法使いが幽閉された塔といわれていました、私は悪人ですか……。
隣国の魔女がいろいろとやらかして、幽閉され、そして、ブルブル怖いですわ。でも私は割と快適な日々を送っておりました。
ええ、まあこれもまた運命、書物ともに過ごしましょう。
などとおもっておりましたら、森に狩りにやってきた一行といきあわせたのです。
「おい、そこのお前、おい、そこの茶色の髪のちび!」
「ちびではありませんわ!」
私は確かに寸足らずといわれる人ですが、ちびではありません断じて! 私は森の中で書物を読んでいました。ええ、行動の自由はある程度許されていました。
迷いの森といわれたここに来る人は誰もおりませんでしたし。
でもきましたわ、どうなってますの?
「お前、お前は! まさか! エミーか?」
私は馬にのった美青年、黒髪に深紅の瞳、きれいな顔立ちの貴公子が驚いた声で叫ぶのを呆然とみていました。
だってお前って言われても私はあなたを知りませんし……。
私の愛称を知っているなんて昔の知り合い? さすがにこんなきれいな人がいたら覚えておりますわ。
「エミー、会いたかった!」
「え?」
いきなり会いたかったと叫ばれ、馬から降りてきた美青年に私は抱きすくめられました。
いやいや知りませんし、話してくださいと抗議すると、もう離さないと大声で叫ばれ、そして私は無理やり連れていかれたのです。
どこにって?
無理やり抱きすくめられ馬にのせられ、連れていかれた先は……。
「エミー、ほら、お前の好きなケーキをたくさん用意させた!」
「だから私はあなたなんて知りませんよ」
古い城に連れていかれた私、どうも隣国の城のようですが、使用人すら私に近づけず、私は一室に監禁されることになったのです。
会話がかみ合いません。会いたかった、だから知りませんという会話を繰り広げ……。
「僕がわからないのか? エミー、かわいいかわいいとめでてくれたのに?」
「いやあなたのような方をめでたことはないですよ」
どうも彼は私が知らないというと悲し気にしゅんとなり、うーんかわいそうになってきました。でも覚えてないのです。
ケーキを前に私はうーんと考えますが、どうも思い出せない。
「四年前に出会ってから、お前のことを忘れたことはなかった!」
「四年前といえば私はまだ十二の子供ですわ」
「……その時拾った黒猫を覚えていないか?」
「ルビー、ルビーのことなら覚えていますわ、ふわふわで私になついてかわいい私の黒猫……」
私がそういうと、そのルビーだ! と躍り上がってクレイが喜びます。
いやクレイと自己紹介をしてくれたし、隣国の王だと名乗りましたし、あなたは人間ですけど? というと……。
「悪い魔女の呪いで、猫の姿にされてたんだ、そして真実の愛によりこの姿に戻れたのはエミーのおかげなんだ、真実の愛を知る乙女の涙で僕は呪いがとかれたんだ!」
そういえば……ルビーが捨てられそうになった時、絶対にいやですとぎゅっとして泣きましたけど、そのあとすぐ捨てられて、でも捨てた使用人が何か錯乱したとかなんとかこうとか……。
だから捨て場所がわからないとか。
ぎゅうっとクレイに抱き着かれ、私は混乱の際におりましたわ。
だってルビーとは一緒にお風呂とか着替えと……。
「あなた、ルビーだっていう証拠でもありますの!」
「エミーのことなら何でも知っている。エミーはお尻に3つ連なるほく……」
「いわないでくださいまし!」
ええ、私のお尻にはたしかにそれはありまして、私はこのクレイがルビーだということを認めないわけにはいかず……。
古い城の一室は私専用とされ、私はそこに滞在することになったのですが、私は逃げ出そうとして捕まり、そして……。
「だってエミーが逃げ出そうとするから、この鉄鎖は仕方ない」
「私はルビーに恋愛感情はありませんでしたし、クレイにもありませんの!」
「真実の愛がなければ呪いはとけなかった。だからエミーは僕を愛している。あの魔女の呪いがとけたのが証拠だ!」
私はモフモフふわふわを愛しましたが、いとしいルビーは猫でしたわ、猫への愛と人間への愛は違いますの! それに私は男性は苦手ですのよ!
何度言っても信用してもらえず、私は鉄鎖につながれ、寝台でクレイに迫られるはめになっておりますの。
クレイは嫌いじゃないですけど、モフモフをめでて、一緒にお風呂も入って、一緒に同衾したのは猫ですわ、人間じゃないのですわ、人間の男性じゃなかったのですわ!
『ルビー、ほらほら!』
『ふにゃーう』
などとモフモフを愛でながら撫でて、ふみゃうと鳴き声すら愛らしく、私はずっとルビーと一緒でした。
「魔女は驚いていたな、心清らかな乙女がまだ残っていたとかなんとか……塔に追放したのを恨んでたようだが、あいつもいろいろやらかしたのは間違いない」
いえ、それはそうとしても、呪いをかけられた原因はあるはずですわよ。
そして隣国を滅そうとさらっと言い切るその言動も少し怖いのですのよ!
その性格のせいで、魔女に呪いをかけらたのでは? と聞くと僕はそういえば少し傲慢だったとさらりと言われましたわ。
私は寝台の上で、愛しているとささやくクレイと今日もだからルビーは猫ですのよという問答を続けます。
しゅんとなったクレイを見ているとどうも罪悪感にさいなまれますが……。
ああ、どうやったら彼を説得できますでしょうか? 愛しているとささやくクレイのほほえみを見ていると、どうも私は彼を嫌いにはなれませんのよ。
どなたかいい方法を教えてくださいまし!
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