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第2話

 


 休日が明け、俺はただの高校生として、また平凡な学校生活が始まる。

  と、思っていたのだが────。



  校門をくぐってすぐ、視界に入ってきた1人の女子生徒に、俺は目を剥いた。


  「おい……うそ、だろ。君はもしかして……」


  制服姿で一瞬わからなかったが、一際目立つ明るめの茶髪に大きな瞳。長いまつ毛に透き通るような白い肌。まるでギャルゲの中から飛び出してきたような、完璧な美少女。


  間違いない。この子はあの時痴漢されていた少女だ。


  「また……会えましたね」


  あの時助けた男が俺だとすぐに認識した彼女は、小さな笑みを浮かべながら、その甲高くて可愛らしい声を発した。


  嘘だろ……こんな偶然があるのか!?


  徹夜でゲームしてたから夢でも見ているのだろうか。


  俺は口を開く前に自身の頬を抓った。


  ……痛い。てことは、夢じゃない!?


  「……何してるんですか?」


  ベタなことをしていた俺に怪訝そうな視線を送ってくる。


  「ああ、いやなんでもない。君は……ここの生徒だった、のか?」


  「はい。私、倉瀬萌佳って言います!高校1年です。あの時はその、ありがとうございました!えーっと……」


  「あ、俺は宮峰大夢。高校2年だ。まあ、とりあえずえっと、よろしく」

 

  いや、そうじゃない!思わず普通に返してしまったが……こんな偶然ある!?



  俺の今までの人生の中で1番と言えるほどの天文学的奇跡が起きたのだ。




  それからというもの、倉瀬萌佳はやたらと俺につきまとってくるようになった。


  最初はあの時の痴漢の件で、ああだこうだ言われるものだと思っていたのだが、一行にそんな話題はでない。


「先輩!昨日のドラマ見ました?」


「先輩!朝ごはん何食べました?」


「先輩!」


「先輩!」


  顔を合わせればすぐに話しかけてくる。付きまとってると言ってもいいかもしれない。


  わけも分からないまま誰かに付きまとわれるというのは、なかなかどうして落ち着かないものだ。


  とうとう我慢が効かなくなった俺は彼女に聞いた。


  「ねえ倉瀬さん。なんでいつも俺につきまとうんだよ。学年も違うのにわざわざ2年エリアに来てさ。倉瀬さんは何がしたいんだ?」


  少し強めの口調で聞いてしまったが、俺は理由が知りたいんだ。なんでこんなギャルゲヲタクの俺につきまとってくるのかを。


  「……先輩、もしかして私のこと、面倒くさいって思ってますか?」


  「あ、いや、その……そういう訳じゃなくて」


  別に面倒くさいなんて思ったことはない。


  しかし、こんな可愛い子がギャルゲヲタクの俺に構ってくるのが不思議で仕方なかっただけだ。


  「俺はただ、なんで俺に構うのかその理由が知りたくて」


  「……なんでだと思いますか?」


  「え……」


  なんだよ、その言い方。


  「……なんで私が、先輩につきまとってるか、わかりますか?」


  そんな、そんな言い方って……つまり、彼女は俺のことを。


  ギャルゲみたく、痴漢から助けた女の子に惚れられた、みたいな展開なのか!?


  俺の胸の内に一抹の期待が芽生える。


  「私……興味あるんです」


  やっぱりか!?やっぱりなのか!?


  「興味があるんです……ゲームに」


  「ちょっ、ちょっと待ってくれ!ほら、まだ知り合ったばっかりだしさ、心の整理がついてなくてその…………て、ん?はい?」


  途中で気づいた俺は、思わず聞き返してしまった。


  「だから、先輩のやってるゲームにです!」


  「あ、ゲーム……ゲーム、ね」


  くぁぁあああ!!やっちまったぁあ!!なんか1人で盛り上がってキモすぎだろ俺!


  「あれれ?あれあれぇ?先輩……もしかしてぇ、何か勘違いしてませんでしたかぁ?」


  「なっ、べ、別に勘違いなんて……」


  「へー、ふーん。そーなんだぁ」


  彼女は得意げな笑みを俺に向けてくる。しかも上目遣いで。


  な、なんだこいつ……これはあれなのか?からかってるのか?


  「……そ、それで?ゲームったって色々あるけど、何に興味があるんだよ?」


  「あの時先輩が持ってたゲームです」


  「へー、アインツゲイル3か。倉瀬さんも興味あったんだ」


  「あいんつげいる?」


  こいつ……知らないで興味あるとか抜かしてたのか。


  まあ知らないことに興味を持つのは別に普通か。


  「アインツゲイルっていうのは、まあ簡単に言えば……よくあるRPGのことだ」


  「……それって楽しいんですか?」


  「はは、それは愚問だ倉瀬さん」


  俺は嘲笑にも似た笑みを浮かべやながらそう言った。


  「楽しいなんて次元の話じゃないんだ。あの小さなディスクの中に、全ゲーマーの夢と希望が詰まっているんだ」


  そう、こういうゲームこそまさに、楽園と呼ぶべきに相応しい至高の存在なのだ。


  「そんなにですか……じゃあ私もやってみたいです。だから今日先輩の家に行っていいですか?」


  今、彼女からとんでもない発言が飛んできたが、共感を求めるゲーマー脳にシフトチェンジしていた俺は勢いのままに答えてしまった。


  「おお、そうか!そういうことなら是非来てくれ!倉瀬さんもこのゲームの素晴らしさを知ることになるさ!」


  「おー、なんか凄そうですね。じゃあ放課後にお邪魔しますね」





  ───そんなこんなで、現在俺の家に1人の3次元美少女が来ることになった。

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