05
「できればお礼に行きたいところだが……。リリ。魔女様は何か言っていたか?」
「んー……。どこに住んでるとかは言ってなかったよ。あ、でも、遠くじゃないと思う。お散歩みたいな感じだった!」
「散歩……。この吹雪の中をか」
村長さんが戦慄の表情を浮かべています。よくよく考えると、なるほど確かにすごいことです。少なくともリリは、必要がなければこんな吹雪の中を出歩こうとは思いません。
すでに外に出てしまったリリの言葉に説得力なんてないでしょうけども。
「ふむ……。冬が終わったら、一度探してみよう」
「分かりました」
村長さんの言葉に、お兄ちゃんが頷きます。リリも、気持ちとしては今すぐにお礼を言いに行きたいところでしたが、諦めるしかないでしょう。リリも、死にたくはありません。
少しだけ残念に思っていましたが、それは良くも悪くも、覆されることになりました。
「村長! 外から旅の人が来た!」
男の人が駆け込んできて、村長さんは目をまん丸にしました。
・・・・・
「暇である!」
「であるー」
いや、本当に暇。やることがなさすぎる。
あの散歩から一週間ほど経った。あの散歩も悪くはなかったんだけど、どうしても見える範囲が狭すぎて。正直に言うと、あまり楽しくない。あの日の翌日にも散歩に行ったけど、ニノちゃんですらその二回目で飽きてしまった。私も飽きた。真っ白すぎる。
リリちゃんの様子を見に村にでも行ってみようかなとも思ったけど、それも結局行ってない。なんだか騒ぎになりそうな気がする。薬もそうだし、私たちみたいな子供が出歩いていることにも。やっぱり家で大人しくしているのが一番だ。
でもやっぱり暇なわけで。ふむう。何しよう。
私とニノちゃんがテーブルに突っ伏してぐでっとしていると、また唐突にアーちゃんが現れた。あの真っ白ローブを手に持って、
「すずちゃんすずちゃん完成したよー!」
抱きついてきた。頬ずりまでしてくる。なんだろう。ペットになった気分だ。
まあなんでもいいかー。
「うわあ、無気力だ……。がんばれすずちゃん、傷は深いぞ!」
「だめじゃん。私死ぬの?」
「いつかやると思ってました」
「私犯人側!? で? 何が完成したの?」
話の方向をさっさと正してアーちゃんに本題を聞く。アーちゃんはよくぞ聞いてくれましたとばかりに、真っ白ローブを差し出してきた。
「改良したのだー!」
「のだー!」
何が楽しいのか、ニノちゃんが真似をする。ふむう。
「改良点は?」
「視界を確保できるよ! 周囲三メートルぐらいだけど」
「え。すごい」
うん。それは本当にすごい。前はもう真っ白な視界だったから楽しくなかったけど、それなら散歩も楽しそうだ。
「行く? 行っちゃう?」
「行っちゃう!」
ニノちゃんも乗り気なので、今日は久しぶりに散歩に行くことになった。
精霊たちに先導されて、向かうのはリリちゃんと出会った洞穴だ。リリちゃんがいるとは思えないけど、まあ、何となく。ニノちゃんも反対はしなかった。
それに、近くに村があるなら、遠目でもいいから見ておこうかなって。やっぱり少しは気になるからね。
そう考えて洞穴まで来たんだけど、誰もいないという予想は見事に裏切られた。
「あ」
「あ!」
洞穴にいたのは、二人。リリちゃんと、もう一人知らない女の子。私が思わず声を出すと、すぐにリリちゃんが嬉しそうな声を上げた。
「魔女のお姉ちゃん!」
「魔女!?」
なんでそうなるの!? あ、こら、ニノちゃん。どうして笑うのかな?
「リリちゃん、久しぶり。どうしてここにいるの?」
「お姉ちゃんと会えないかなって、毎日来てるよ」
え? 毎日?
いや、ちょっと待ってほしい。当たり前だけど、吹雪は相変わらずの様相だ。とてもじゃないけど、出歩けるとは思えない。どうやって、というよりも、どうして、という気持ちが強い。だって、危ないじゃないか。遭難しちゃうよ。
あまり怒りたくはないけど、ちゃんと一言言わないといけない。そう思って口を開こうとしたところで、リリちゃんの隣にいる女の子が待ったをかけてきた。
「魔法を使える私がここまで案内しているので、大丈夫です」
真っ白ローブの女の子。背丈は私と同じか、もう少し高いぐらい。長い銀髪が印象的だ。綺麗な髪だと思う。
あと、見ただけで分かった。何となく、直感に近いもの。この子は、純粋な人間じゃない。魔獣というわけでもなくて、どちらかと言えば私に、つまり妖怪に近いものだと思う。
「初めまして。私はルーシアと申します」
「初めまして。すずです。んー……」
ルーシア。うーん……。なんだか、ちょっと聞き覚えがあるような気がする。
「ニノちゃん。知ってる?」
「んーん」
ニノちゃんも首を振る。知らないみたいだ。でも、多分有名な人だと思う。だって、そんな私たちの反応に、リリちゃんが驚いたように目を丸くしていたからだ。
「お姉ちゃん、ルーシア様知らないの? 薬師のルーシア様」
「知らないかなあ。有名な人?」
「うん。すっごく有名な人」
ふむう。それなら私もどこかで聞いててもおかしくないと思うけど……。
ああ、そっか。だから聞き覚えがあったんだ。聞き覚えがあるのに覚えてないってことは、その時の私は本当にどうでもいい情報だと思ってしまっていたらしい。こうして直接会うことになるなんて思ってなかったから、当然かもしれない。
「ん? 薬師? 魔法を使ってここまで来たんじゃないの?」
「私は魔法も使えるんです。長く生きていますから」
どこか、哀愁の漂う笑顔だ。
この子は、望んでこうなったわけじゃないみたいだ。私たち妖怪は、私みたいに最初からそういうものとして生まれた場合と、何かしらが原因で妖怪になってしまった場合と、二通りある。きっとこの子は、後者なんだろう。
ちょっとかわいそうだとは思うけど、私にできることは何もない。知識としてあるだけだ。
壁|w・)邂逅。けれど何かが起きるわけでもないのです。
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ではでは。




