閑話 妹から見たお姉ちゃん
壁|w・)番外編。ニノちゃん視点。と言いながら三人称のような何か。
旅立ちから少し時間が経過しています。
すずお姉ちゃんと旅を初めて、一ヶ月が経ちました。
この一ヶ月、色々なことがありました……、と言えればいいのですが、特に何もない平和な、楽しい日々です。
ニノは自分が生まれた場所へ、両親に会いたくて帰りたいと思っていますが、残念ながら手がかりは全くありません。そのためお姉ちゃんの旅に同行して、ついでに手がかりを探す、という形になっています。
ただ、お姉ちゃんも旅の目的は特にないらしいです。お姉ちゃんに目的がないからこそ、この旅が成り立っているのかもしれません。
最初は私に気を遣ってくれているのかなと思いました。もしそうなら、本当に私のことは気にしなくていいから、お姉ちゃんの目的を優先してほしいと思いました。邪魔は、したくなかったから。
ところが、一緒に旅をして分かりました。本当に目的がないと。
どこかの街にたどり着いてお姉ちゃんがやることは、ギルドで私についての情報収集、その街の特産品や名所などを調べて、次の目的地はどこがいいのかちょろっと調べて考えて。終わり。
そう、終わりなんです。やらなければいけないことは、これで全て終了です。あとはのんびりまったり観光して、食べ歩きをして、遊んで笑って、最後に買い出しをして出発。最初の街から三つほど街を回りましたが、どれもこの繰り返しでした。
ニノはお姉ちゃんのことをあまり詳しく知りません。それでも何か、旅の目的があるのだと思っていました。けれどお姉ちゃん曰く、強いて言えばこの世界の観光が目的なのだとか。
世界を観光。なんとなく、びっくりです。そんなことを考えるのはお姉ちゃんぐらいなのではないでしょうか。
お姉ちゃんはとても不思議な人です。大人よりもしっかりしていて、かと思えば遊ぶことや楽しむことに全力で。一緒にいて飽きることがありません。いつもニノのことを連れて行ってくれるので、ニノも毎日が楽しいです。……ちょっと、疲れますけど。
あとお姉ちゃんについて思うことと言えば、なぜか尻尾が大好きです。今ももふもふしています。
「もう……」
「えへへー」
尻尾をゆらゆら。お姉ちゃんもゆらゆら。ふわふわもふもふで気持ちいいんだって。
でも、嫌じゃないです。むしろなんだか嬉しいので、いつもしっかりお手入れしています。
「おっと、ごはんごはん」
お姉ちゃんは我に返ると、火にかけているお鍋の元へと向かいました。ぐつぐつと、美味しそうな香りが漂ってきます。
最初の街で、クロスさんから旅についても教わりました。その時は、食料についてもいろいろと教えてもらったのですが、それについてはお姉ちゃんには当てはまらないと、この一ヶ月でよく分かりました。
お姉ちゃんがいつも持っているリュックは、とてもすごいアーティファクトです。たくさんの物が入るし、その上限は未だに分かりません。しかも、中では時間が経過しないそうで。意味が分かりません。お姉ちゃんも最近気付いたとのことでした。
でも、理屈はどうでもいいとも言えます。肝心なことは、こうした旅の間でも、美味しいご飯が食べられること。
大きなお鍋に綺麗な水をたっぷり入れて、ほかほか湯気の立つご飯もたっぷり入れて、調味料をいくつか入れて味を付けます。その後お肉とかお野菜とかをたっぷり入れた、お手軽料理。旅の間はこの料理がほとんどです。
でも毎回味付けが違うので、飽きることはありません。お姉ちゃんすごい。
お椀にご飯を入れて、渡してくれます。ごろごろした大きなお肉を入れてくれていました。
長期の旅では、街で生肉を買うことは厳禁です。普通なら腐らすだけですから。なので旅の間のお肉は野生動物を狩るか、干し肉で誤魔化すしかありません。
けれどお姉ちゃんとの旅ではいつでも食べられます。ご飯に釣られているみたいでちょっと恥ずかしいですけど、私を拾ってくれたのがお姉ちゃんで、本当に良かった。ご飯おいしい。
お鍋を綺麗に空にして、ごちそうさまでした。これはお姉ちゃんの故郷での風習らしいです。
「美味しかった!」
「そう? 良かった」
お姉ちゃんが頭を撫でてくれるので、ぎゅっと抱きつきます。するとお姉ちゃんはいつも笑いながら、抱きしめ返してくれます。あったかです。
「ニノちゃんは甘えんぼだね」
「んー」
否定はしません。自覚はありますから。
怖いんです。一人だと、怖くて怖くて、どうにかなっちゃいそうなのです。
あの時、気が付いたらニノはすでに一人でした。大勢の人が押し込められた馬車に乗せられて、誰一人として瞳に生気がなくて。今までのことを思い出そうとしても、まるで霧がかかったように、何も思い出せなくて。
心細くて泣いていたら、ニノより少しだけ年上の、すずお姉ちゃんぐらいの子が私を撫でてくれたのを覚えています。
その人もやっぱり憔悴したような顔でしたけど、少しだけ、お話をしました。好きなものとか、食べ物とか、そんな話です。
その話の中で、ニノたちが奴隷だということも知りました。ニノの両親については、知らないようでした。
その人と話をしている時は、心細さを紛らわすことができました。
けど、ある時、大きな揺れに襲われて。馬車が倒れて、たくさんの悲鳴が聞こえてきて。
その時のことは、覚えています。気を失う前に、大勢の人が馬車の陰で小さな穴を掘って、ニノを入れてくれました。あの、私と話をしてくれた子が言いました。
きっと大丈夫。だから生きてね。
その後、布をかけられて、大勢の人がそこを隠すように倒れてきて、すぐに、なまぬるい何かが布から染みこんできました。
それが血だと気付いて、私は気を失ってしまいました。
そしてまた、気が付いた時は、見たこともないなんだか不思議な女の子が目の前にいたのです。
気が付いたら。そう、気が付いたら、誰かがいなくなるんです。両親がいなくなって、一緒にいた人もいなくなって。
だから、不安なんです。お姉ちゃんまでいなくなってしまわないかって。
「仕方ないなあ。今日も一緒に寝る?」
お姉ちゃんが撫でながら聞いてくれます。私が頷くと、お姉ちゃんは笑顔で、
「分かった。じゃ、ちょっと待ってね」
お姉ちゃんがペンダントを取り出します。そしてすぐに、ペンダントが淡く光ったかと思うと、小さなドラゴンが現れました。このドラゴンはお姉ちゃんが見張りをしてもらうために契約したドラゴンで、クロスケという真っ黒で大きなドラゴンの配下だそうです。
「今日も見張りをお願い」
お姉ちゃんが小さなドラゴンに言うと、そのドラゴンは頷いてくれました。
お姉ちゃんと一緒に、準備をしていたテントの中に入ります。一緒の布団に入って、お姉ちゃんにひっつきます。
「ぬくぬく」
「もう」
お姉ちゃんが呆れますが、私は満足です。
お姉ちゃんの温もりを感じながら、目を閉じました。
お姉ちゃんとの旅が、できるだけ長く続きますように。そんなことを、願いながら。
壁|w・)妹から見たお姉ちゃん、を含めたニノちゃんの過去でした。
彼女の生まれについては、いずれまた。
明日から第二話の書きだめに入るので、しばらくお休みしますよー。
二週間以内には戻ってくる、はず……!
きりのいいところなので、たまには。
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ではでは、また近いうちに!




