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「売却希望です!」


 もともと私がギルドで依頼を受けていたのも、旅の資金を稼ぐためだ。これを売ったお金があれば、その必要もなくなる。むしろたくさん買い食いできたりして!

 ニノちゃん何食べたい? お肉? いいよきっとたくさん食べられるよ!


「この大きさだと、そうね……。正式に鑑定しないとはっきりとは言えないけど、少なくとも金貨百枚は下らないはずよ」

「……………。すみませんよく聞こえませんでした」

「金貨百枚は下らないはずよ」

「わあ……。あー……。えー……」


 どうしよう。怖くなってきた。え、そんなに高いの?


「あのね、すずちゃん。魔力結晶は、本当に手に入りにくいの。これぐらいの結晶が、一年に一個、出回るか出回らないか、ってところかな? 需要そのものがあまりないからこの値段だけど。いえむしろ、需要がないにも関わらずこの値段なのよ」


 そういうもの、なのかな。多分クロスケさんたちは結晶を守る意図はなくて、単純に鬱陶しいから人間を追い払ってるだけのはず。その結果、こうなるなんて……。

 アーちゃんに教えてあげよう。アーちゃんが街に遊びに来る時の資金になるかも。


「お姉ちゃん、つまりどれぐらい?」


 ニノちゃんが袖を引いて聞いてくる。


「うーん……。高い串焼きのお肉が一万本は買えるぐらい?」

「一万本!? すごい! 毎日お腹いっぱいになる!」

「うん。食べきれないねー」

「比較対象が串焼きって……」


 ケイトさんは呆れてるけど、私たちには食べ物以外に特に欲しいものはないから、こんなものだと思う。

 そのまま三つとも売ることになったので、正式な鑑定をしてから報酬をもらうことになった。結晶はそのまま預けておく。ケイトさんは持って行ってほしそうだったけど、私としては盗まれて困ることはないからいらない。むしろ預けるので早く鑑定してください。


「あ、依頼も出していいですか? 報酬は結晶のお金から引いてください」

「え、ええ。いいわよ。どんな依頼?」

「私とニノちゃんに文字とかを教えてくれる人を雇いたいです。報酬は、とりあえず一ヶ月で金貨十枚でどうでしょう」

「高すぎるから! 危険もない依頼でその値段なんて、二等級でも雇うつもりなの!?」

「はい。できるだけ高位の方を雇いたいです。旅をする時の注意点とか、情報の探し方とか、教わりたいので」

「情報……?」


 ケイトさんが首を傾げる。そう言えば、ニノちゃんについては何も言ってなかった。

 かいつまんで説明。ほとんど情報もないままに、この子の故郷と両親を探すということを。

 黙って聞いていてくれたケイトさんは、とっても難しい表情になった。多分、無茶なことを、とか思ってるんじゃないかな? 私もそう思う。正直、本当に見つけられると思っているのか聞かれてしまうと、もちろんとはちょっと答えられない。

 でも、どうせ大した目的もない旅なんだし、それならできることぐらいはやってあげたいのだ。


「そういうことなら、こっちで探してあげるけど……。本当に、いいのね?」

「はい。お願いします」


 私が頭を下げると、ケイトさんは苦笑しながらも引き受けてくれた。


「ところでケイトさん。この結晶の代金で、加工できる人を雇えたりは……」


 それだけお金が手に入るなら、別の街にいる高位の冒険者さんを雇えるかもしれない。そう期待したんだけど、ケイトさんには首を振られてしまった。

 どうしてだろう。これでもまだ、足りないのかな?


「お金じゃないのよ……。高位の冒険者となると、お金に困ってる人なんてまずいないの。彼らが依頼を受ける判断基準は、面白いかどうかだけ。すずちゃんさえよければ、依頼だけは出してあげるけど……」

「じゃあ、はい。お願いします。結晶のお金、全部でも構いませんから」

「そう……。こっちで調整しておくわね」


 お金で動くわけじゃないなら、その辺りの加減はケイトさんに任せるしかないかな。相場なんて私には分からないし。

 あとはケイトさんに任せて、私はニノちゃんを連れて帰ることにした。




 翌日。仕事へと向かうフロストさんを送り出して、私はニノちゃん、フロイちゃんと一緒にいる。昨晩、ギルドの人が来て、依頼を受けてくれた人が直接来てくれることになったためだ。

 フロイちゃんが暇になるかも、と思ってしまったけど、なんとフロイちゃんにもついでに教えてくれるらしい。すごくいい人みたいだ。どんな人が来るんだろう?

 ニノちゃんとフロイちゃんも、なんだか今日はそわそわしている。私もちょっとどきどきしてきた。


「お姉ちゃんどうしよう。お水とか用意しておくべきかな?」

「お姉ちゃん。私、変じゃない? えと、何か、変じゃない?」


 気持ちは分かるけど落ち着いて。別に貴族が来るわけじゃないんだからさ。

 そわそわと落ち着かない二人を宥めながら待っていると、やがて家の扉がノックされた。どうやら来たらしい。びくりと二人が震えて、私は思わず噴き出してしまった。


 うん。ごめん。だからそんな、睨まないで。かわいいだけだよ?

 フロイちゃんがおっかなびっくりといった様子で扉を開けに行く。小さく隙間を作って、短く会話。ちゃんと警戒している。偉い。


「どちら様、ですか?」

「初めまして。ギルドから依頼を受けてきたクロスです。すずちゃんはいるかな?」


 薬草の採取で一緒だったクロスさんだ! ということは、ミルカさんも一緒かな?

 フロイちゃんが振り返って私を見てきたので頷いてあげると、フロイちゃんは扉を開けてクロスさんを招き入れた。やっぱりミルカさんも一緒だったみたいで、二人で入ってくる。


「やあ、すずちゃん。依頼を受けてきたよ」

「ありがとございます。知っている人だと私も安心です。でも、引率はいいんですか?」

「引率役を引き受ける人は僕以外にもいるからね。それに、ギルド側から是非にと頼まれてしまったし」


 聞くと、私の出した条件に合致していて、なおかつ私と顔見知りだからクロスさんとミルカさんが選ばれたらしい。クロスさんは三等級だけど、近いうちに二等級に昇格できるそうだ。

 あれ? じゃあクロスさんって、実はものすごく強い人……?

 疑問に思ったけど、聞かないでおく。聞くのがちょっと怖い。

 ともかく、勉強開始だ。とりあえず文字を覚えないとね。




 一時間ほど教えてもらった結果。致命的なことが発覚してしまった。

 私、どうやらこの世界の人と言語が違ったらしい。クロスさんたちが書く文字と音が一致しない。一つの文字で二つの音を言われたりと混乱してしまう。

 ニノちゃんはそうでもないようで、スポンジのごとく覚えていっている。姉の威厳が!


 そもそももっと早く気付くべきだった。地球ですら海を渡れば言葉が違うというのに、別の世界に来て日本語が通じている時点でおかしいと思うべきだよ。どうして私は疑問に思わなかったのか。いや、アーちゃんに通じてしまったせいで、そういうものだと思ってしまっただけなんだけど。

 多分これに関してはアーちゃんがまた何かしてるのかな、と思ったんだけど、答えは意外にもミルカさんが出してくれた。


「なるほど。すずちゃんには高度な翻訳魔法がかけられていますね」


壁|w・)お勉強タイム。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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