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 フロストさんの家に帰宅! 数日しか離れていなかったのに、なんだかすごく懐かしい。フロイちゃんは元気にしてるかな?


「戻ったぞ」


 フロストさんに続いて、私とニノちゃんも中に入る。少しだけ後ろめたく思ってしまって、そっと。そんな私をニノちゃんが不思議そうに見つめてくる。やめて、見ないで。不審者みたいなのは分かってるから。


「お父さん、おかえりなさ……、あ!」


 当然のようにすぐに見つかった。隠れる場所もない上にフロイちゃんはいつものテーブルで本を読んでるんだから当たり前だ。


「お姉ちゃん! どこ行ってたの!」

「うひゃ……!」


 声が大きい、それ以上に怖い! すごい剣幕だ、この剣幕があればクロスケさんでもびっくりしそうだ。


「いや、あの、お仕事でね……?」

「急な泊まりの仕事だったんだよね。ギルドのケイトさんって人が説明に来たよ。薬草の目利きが優秀で、高ランクの人に雇われてついて行ったって」


 そういうことになっているらしい。ニノちゃんが不思議そうにしているけど、私の顔を見て、何も言わないことにしてくれたみたいだ。そっと私の陰に隠れた。


「えっと、うん。急だったから、そのまま行くことになってね」

「でも、せめて一言、ほしかった。心配したもん」

「ん……。ごめんね」


 うん。これは間違い無く、全面的に私が悪い。

 人を幸せにする妖怪が、心配かけてちゃだめだよね。事情が事情とはいえ嘘ばっかりついているんだから、もう少しちゃんと考えないといけない。反省、しよう。


「ごめんなさい」


 もう一度、しっかりと頭を下げる。フロイちゃんは小さくため息をつくと、もういいよ、と薄く笑った。

 そして、


「で、そのふわふわな子はだれ!?」


 ニノちゃんに食いついた。がんばれニノちゃん、そんなに震えなくても大丈夫だよ。……多分。




「ふわふわ! もふもふ!」


 ニノちゃんがゆらゆらと尻尾を揺らして、フロイちゃんがその尻尾に抱きつく。ずっとそれを繰り返している。飽きないのかな。

 ニノちゃんも楽しそうにしているので、一先ず安心だ。やっぱり同い年ぐらいの子だから、話しやすいのかもしれない。

 とりあえず二人が仲良く遊んでくれているようので、私は先に渡すものを渡そうと思う。


「フロストさん。ちょっといいですか?」

「ん? どうした?」


 頬を緩めて子供の様子を眺めていたフロストさんを、家の外に連れて行く。誰もこちらを見ていないことを確認して、私はフロストさんに青い玉を差し出した。

 そう、ドラゴンの糞……、じゃなかった、魔力結晶だ。


「な……」


 おお、フロストさんの目がまん丸になっている。驚いてくれたみたいだ。ちょっとだけ胸を張っておこう。ふふん。


「魔力結晶です。取ってきました」

「取ってきましたって……。どうやって……」

「どう……。うーん……。交渉して……?」


 交渉なんてしてないけど。あるかどうか聞いたら探してくれて、置いておいてくれただけだけど。これが何なのかは、まあ黙っておこう。知らない方がいいこともあるものだし。


「どうぞ。受け取ってください」


 フロストさんに渡そうとするけど、なかなか受け取ってくれない。どうしてかと首を傾げていると、フロストさんは声を震わせて、


「せっかくだけど、受け取れない。今はまだ、そんなお金がなくて……」

「差し上げます。私は使いません。受け取ってくれないなら割っちゃいます」

「ええ……」


 困惑してる。子供は黙って大人に甘えればいいのだ。だから受け取りなさい、ほら早く。

 いや、見た目は私の方が子供ってのは分かってるけどね? 大人になりたい。


「それに実はいくつかもらってきたんです。ほら」


 リュックから、大小様々な青い玉を取り出す。フロストさんは目だけじゃなくて口もあんぐりと開けてしまった。


「そのかばんはまさか……、アーティファクト……?」


 そっちか! そっちに反応しちゃったのか! いや私もうかつすぎたけど!

 北に行って探せば見つかるだろうと言われている魔力結晶よりも、ダンジョンで探しても見つかるかどうか分からないこういった道具の方が、当然ながら高いらしい。容量や口の広さ、他いくつかの特殊効果で変わるらしいから、言い切ることはできないらしいけど。


「これは、その……。内緒です」


 言い訳が思い浮かばないのでそう言ってみる。無茶があるかな、とは思ったけど、けれどフロストさんは苦笑いを浮かべただけだった。


「分かった、何も聞かないでおくよ。……本当に、もらっていいのか?」

「もちろんです。それがあれば、フロイちゃんの病気、治るんですよね?」


 あれ、フロストさんの顔が曇った。どうして? この結晶があれば、お薬を作れるって……。


「加工が難しいんだ。これを加工できるのは、熟練の薬師だけだし、加工するためにはさらに魔力を精密に操れる魔法使いもいる」

「その……。ギルドには?」

「いないよ。等級で言うと、一等、もしくは二等の上位になるから」


 それはつまり、国が勧誘してしまっているってことじゃ……。

 ギルドで受けた説明では、二等級以上はほとんど国に引き抜かれるって聞いている。冒険者として残る物好きもいるんだろうけど、フロストさんの様子を見るに、この街にはいないんだろう。

 それも仕方ないとは思う。他の依頼も見てはいるけど、どれもが薬草とかそういったことに関することだ。腕の覚えのある人は、違う街に行ってしまうと思う。


「薬師さんもいないんですか?」

「ああ……。この街で作られるのは、ほとんどが一般的なポーションだ。腕が立つようになればこの街から出て行ってしまう。熟練の人は、新しい弟子を取ったら連れてくる時ぐらいにしか来ないよ」


 頻度で言えば年に二、三回あればいいそうだ。魔法使いにいたってはもっと低いらしい。

 つまり方法としては、別の街から雇ってくるか、高価な結晶を預けて薬にしてきてもらうか、になる。でも、両方とも現実的じゃない。


 別の街から雇う場合。いくらになるか、フロストさんにも分からない。高位ランクというのは、それだけ貴重な人材なんだそうだ。

 預ける場合。信頼できる人を探さないといけないし、探せたとしても、この世界は街中ならともかく、その外はそれなりに危険だ。盗賊なんてかわいいもので、魔獣に襲われる危険性もある。貴重な結晶が失われてしまうかもしれない。


「じゃあ、私が行くのはどうですか? その、詳しいことは言えないんですけど、安全に往復できます」


 乗りかかった船だから、それぐらいはしてもいい。フロストさんは怪訝そうに眉をひそめて、そして、


「凄腕の薬師や魔法使いが分かる? 騙されるかもしれない」

「結晶、たくさんありますから」

「うん。一個目だけならだまし取られた時点で興味を無くしてもらえるかもしれないけど、二個目以上あるとなると、目立つから。間違い無く襲われるから。ニノちゃんも連れて行くんだろう? あの子も危険な目に遭う」

「あー……。なるほど」


 だめだ。私には他に方法が思い浮かばない。せっかく魔力結晶を手に入れたのに、フロイちゃんの病気を治してあげることはできない。

 魔力結晶みたいな物なら、私が探しに行けばいい。でも、人を連れてくるとなると、私は何もできない。


「まあ、それでも、手元に魔力結晶があるんだ。いつか、きっと加工する機会がくるはずさ」


 そう言って笑うフロストさんは、けれど少しだけ悔しそうだった。


壁|w・)結晶だけあっても仕方がないのです。

あと、すみません。週末はお仕事が忙しいので、感想返信ができません。ごめんなさい。


誤字脱字の報告、感想などいただければ嬉しいです。

ではでは。

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