6:未来へ
【To Near Future】
『Side→????』
ザーザーと砂嵐の流れるラジオ。電波をとある数値に合わせると、とある放送が流れ出す。
滅びた世界に向けての、メッセージ。
同士を集わせるための伝言。
安寧の地があることを知らせる、唯一の手。
『こちら楽園島……こちら楽園島……どこかにいるであろう、生存者……同胞達に次ぐ……ここは感染者がいない、安全な島だ……食料も、豊富である……生きてる者がいるなら……我々は歓迎する……こちらは楽園島……所在は……千葉県沖……元”砦島”……』
聞きなれた声。聞きなれたメッセージ。聞きなれた内容。
はあ、とため息を吐いてラジオの電源を押そうとする。
その時。いつもとは違う、別の声が流れる。
『これを聞いている、名前も顔も知らない誰かへ……。今のこの世界は、理不尽だらけ……命がゴミの様に失われてる……。でも、希望を捨てないで。どんな絶望に瀕しても、生き続けてさえいれば……やがては最高の希望を掴める。だから、生きて。家族を、親友を、恋人を失っても生きて。あなたには、仲間が居る。この壊れ切った世界で生き抜いた、同胞が。――私の名前は……』
私はフッと笑うと、ラジオの電源を落とした。茶色の古びたリュックにラジオを適当に放り込む。そして、ゆっくりと目の前に広がる海を見つめた。
――希望はまだ、輝いていた。
END.