第1話:日常
前作の作品とは一切関係ありません。
それはこの世の理
全ての生物に命があり
全ての生物に魂がある
生物達が命尽きる頃
魂だけが残される
残された魂は時間と共に消滅をしてしまう
しかし、世の中に情を交した生物は命尽きる頃
その魂を相手に渡すことが出来る
それは、犬でも猫でも人間でも…
魂を宿した者は
その魂を生前に持っていた能力を使う事が出来る
それが、この世界の理…
狼 リバ-ス〜魂〜
「あーもー!スッゴい暇!」
ここは町から少し外れた場所にある小さなBAR。
そんなBARに、まだあどけなさが残った少女が座っていた。彼女の名前はプリム…この国を納める王女らしいが、彼女は貴族や権力と言うものが嫌いらしく毎日の様には城を抜け出してはこのBARに顔を出している。
「男の人って、毎日の様に修行だ!訓練だ!って、毎日毎日よく飽きないわよね!」
プリムはカウンターに座り飲みかけのメロンソーダを乱暴に机に置いた。
「ねぇ!聞いてるの?マスター!」
プリムは少しイライラさせながらも、カウンターの中でグラスを研いているマスターに怒鳴る。
マスターはもう何回も聞いたと言う顔をしながら頷くがグラスを研く手を休めない。
お客はプリム1人だけである。何故なら、昼から酒を飲もうと言う輩は居ないからであった。
「大体さぁ、私だってもう18よ?もう大人の女性でしょ?なのに、ガライさんったら私の事を子供扱いみたいにしてさぁ!」
ガライとは、先ほどからプリムが愚痴を言っている人物であろう。
「あんな酷い怪我をして、この町に辿りついて、あの酷い怪我を誰が治療したと思ってんのよ!」
プリムは、残りのメロンソーダをグイッと飲み干した。
「マスター!お代わり!」
プリムはグラスを持った手を前につき出した。
「プリムちゃん…飲みすぎだよ…もう、6杯目だよ?」
マスターは心配そうにグラスを受けとると7杯目のメロンソーダをプリムの前に置いた。
「大丈夫だって!私、メロンソーダを飲んで酔った事は無いからっ」
そんな事があった人間が居たら紹介して欲しい物だ…マスターはつくづく思う。
「それよりマスターさぁ、今日の新聞見た?」
マスターは頷いた。
「聖なる狼、発見す。って奴だろ?」
マスターはカウンターの中にしまってあった朝刊を取り出した。新聞の見出しには、『クルシスの森で金色の狼を発見!!』と大きく書かれている。
「クルシスの森って言えば、町外れの幽霊屋敷の裏側にある不気味な森の事よね」
プリムは真剣な顔をして、マスターを見た。
「幽霊屋敷は酷いんじゃ無いかい?あの家は、一応1つの家族が住んでるじゃないか」
マスターは少し苦笑いをした。
「それに、あの薄気味悪い森も!聖なる狼とか言って、実はただの金色のオバケとかじゃ無いの?」
そんなオバケが居たら、見てみたいものだ…。
「いやいや、そんな事は無いさ。紛れも無く聖なる狼だよ」
マスターはニコリと笑って答えた。
「何でそんな事が分かるの?」
プリムは不思議そうにマスターを見た。
「これから来るお客さんに訳を聞いてごらん?そしたら、分かるからさ」
マスターはそう言いながら自分の腕にしてある時計を見た。時計の針は3時を指していた。
店の壁にかかっていた柱時計が鐘を3回鳴らす頃、店の扉がギィと小さな音を立てて開いた。
「おはようランド、今日は良い天気だね?」
マスターは扉を開けた人物に話しかけた。