錬成師
「スキルとは!」
軍曹さんが説明してくださるらしい。
ありがたく聞きます。
「特殊な力である!」
うん。
「個人から、社会、自然といったあらゆるものがある程度スキルに頼って生きている。それだけスキルは大きな意味を持つ」
なるほど。
話を聞いていくと、どうやらスキルはそうとう複雑なつくりらしい。
簡単にいうと、それぞれの生物が持つスキルのパーツを組み合わせることでスキルができるらしい。
火という特性のパーツを持つ人が、矢という特性のパーツの力を借りてスキルを創ると、火の矢が打てるといった感じ。
「一度スキルを決めたら簡単には変えられない。気をつけろ」
◇◇◇
大きな祭壇の前にやってきた。
中心には人の大きさくらいの女神像。
右手に祭具を持っている。
「今からお前の特性を調べる。右手を像の手のひらの上におけ」
軍曹さんの指示通りに行う。
すると女神像から女性の合唱曲のようなものが流れてくる。そして眩しく輝いた。
光が収まると、目の前に異世界のものなのか、変わった文字が現れた。
何故か読めるので読んでみる。
「錬成師?軍曹さん、これどういう効果?」
「錬成師......聞いたことねえ特性だ。錬成ってのはスキルを創る作業のことだが、それができるってことじゃねぇか?」
ほー、錬成。スキルを創るスキルってこと?
ややこしい能力だね。
「まあちょうどいい。次は錬成しに行くか」
◇◇◇
錬成用の祭壇前に、なぜか魔王様がいた。
初めて見る老執事もそばにいる。
「のぉ、シュワシュワ、こち寄れ」
もう、それ、古い。......古いんです魔王様!
とりあえず膝をついておく。
すると魔王様が肩に飛び乗ってきた。
私の垂れたうさ耳がそっと握られる。
「そなたの耳、いいな。.......よーし、ゆけ、ぴょん吉!」
「ヨーシュ様、先に錬成の方をしたいのですが.......」
「おーそうであった。ではやるか」
老執事のお陰で魔王様の足ごっこはやらなくて良くなったらしい。感謝。
「ところでそなたの特性はなんだ? 申せ」
「錬成師です」
「錬成師......珍しいな」
ちなみに今回、最初のスキルは魔王様直々に手を貸してくださるとのこと。
魔王様の特性は昇華。あらゆる特性をそのまま強化するという。
先の祭壇と似たような祭壇の前で、女神像の手に触れる。
先ほどと違うのは女神像の両手が空いていること。それと左手に赤い宝石の指輪、右手に緑の宝石の指輪をはめていること。
「錬成」
そう小さく呟くと、女神像から先ほどと同じ光が溢れてくる。
だが先ほどと違って大きな痛みが私を襲った。
全身が引き裂かれるように痛い。痛いが絶える。ひたすら耐える。
............。
なかなか錬成が終わらない。
............。
どれくらい経ったか。
数日は経過している......と思う。
横の魔王様は手を離していても大丈夫なのか、私の肩の上に乗って激励をしてくださっている。
あとたまに水を飲ませてくれる。
ようやく錬成が終わった頃には私は疲れ果ててそのままその場で倒れ込んでしまった。