転生
気がつけば見知らぬ風景に囲まれていた。
なんというか.......不思議な大広間だ。
全体的に白と赤が使われ、バロック調のような豪奢な金細工が施された部屋。
目がくらくらする。
「膝をつけ」
そう言われて、自然とこうべを垂れる。
よく見ると目の前に大きな階段があり、そこから私の足元を通って赤いカーペットが引かれている。
左右を見る。
んっ!? なんかよくわからない怪物? が背筋を伸ばして起立している。
それもたくさん。
精巧な像かな?
そして階段の上には、これまた派手な玉座に偉そうに座る幼女。いや魔王様。
なぜか直感でわかった。
「そなたに名を与える」
幼女がいう。
間が空く。
しばらくして近くの像が小声で話しかけてきた。
「おい、返事しろ、“はっ、ありがたき幸せ“とかでいいから」
めっちゃびっくりした。生きてるのかこれ。いや、こいつら。
とりあえず返事。
「ハーリガタキシャーセ」
......。
「はっ、ありがたき幸せ」
恥ずかしい。呂律がうまく回らなかったみたい。
魔王様は......うわ、ちょっと笑ってるよ。真顔が歪んでる。
「ソナタのナは......名はシュワッ......シュワウくくくっ。余のためにはげめ。」
シュワシュワ?なんだって?やばい魔王様笑いすぎて聞き取れない。
「賜ります。このシュワシュワ、魔王様に忠誠を誓いまする」
咳払いが各所から聞こえる。なにわろてん。
この後王座の間から退出し、衛兵っぽい人の導きで個室で待機することになった。
◇◇◇
色々わかってきた。
どうやらここは異世界らしいこと。私は転生したこと。ここがダンジョンと呼ばれる施設で、あの魔王様がここの支配者らしいこと。
個室にあった
”シュワウレフエのためのダンジョン入門“
とかいう分厚い本に大体書いてあった。
1ページ目に
「ようこそシュワウレフエ! 我がダンジョンへ! .......ヨルシュカトー」と書いてある。
多分、シュワウレフエってのが私の本当の名前。ヨルシュカトーは魔王様の名前かな。
変わった名前だけど、とりあえずシュワシュワとかいう変な名前じゃなくてよかった。
あと鏡がおいてあったので覗いてみた。
見知らぬ中性的な少年?がいた。
推定年齢14、5歳。
黒くて長い髪だけど体はそれなりにしっかりしている。
頭に垂れた兎耳がある。しかも動かせる。
前の私はどんな感じだったっけと思い出そうとして、何も覚えていないことに気づいた。
なんとなくここと全然違うところにいたことが思い出せる感じ。
しばらく状況整理に勤しんでいると、黒いもやをまとった中年の男が入室してきた。
「よぉ、シュワシュワ。今日も元気にシュワってるなぁ」
「あんた初対面でしょ。誰よ。てかシュワシュワいうな」
「俺か? 俺の名前はどうでもいい。仲間からは軍曹って呼ばれてる。お前の指導官だ」
「そう、よろしく。チュートリアルおじさん」
「誰がおじさんだ、シュワシュワが。シュワるぞ」
これでおあいこだろうか。
なんか変なノリになってしまったが。
「まあいい、シュワシュワ、ついて来い。お前のスキルを開発するぞ」
「スキル?」
「そう、スキル。ちゃんと入門書読んどけよ」
というわけで、何だかんだでスキルをいただけるらしい。
のんびりやっていこうと思います。
のんびり見てってください。