File,6
こんにちは!
最近は投稿にも慣れてきた感じです。
次回あたりに竜を出したい...。
まぁそんなことよりも、
最後まで読んでくれると嬉しく思います!
よろしくお願いします!
「こ、これ…なかなか難しいな…」
鍛冶区のとある一室で本と睨めっこしている僕。
想像力が乏しい僕にとって魔法一つ覚えるのに一苦労するよ…。
「焦ることはない。初めて覚える魔法は誰でも難しいものだ」
なにやら機械をいじりながら、時折アドバイスを飛ばしてくれる葵さん。
彼女は、鍛冶区でも一際有名な職人の一人らしい。
そして今いるここは、葵さんの作業場。
そのこともあって、床や壁に小さな部品から大きめの剣まで見て取れる。
この地下で仕上げた商品を上のフロアのお店で売っていると、聞いた。
さらにそこは、葵さんの営むバーでもあるらしい。
ここに来る前に少し見せてもらったが、カウンターのような机とイスもしっかり置いてあって、印象強かったのを覚えている。
まあでも、狩竜人になってからはあまり開けてないのだとか。
そんなことを思いつつ部屋を見渡していると、
「どうだ。初級魔法の一つくらいは覚えられたか?」
「ま、まあ一応初級魔法は一通り目を通したんですけど…」
いまいちこれで魔法が放てるようになったなんて思えない…。
すると、作業の手を止めた葵さんが魔装籠手を差し出した。
「ボトルは入っている。一度成果を試してみるといい」
「わかりました」
それを受け取り、右腕に装着した。
えっと確か…。
魔法を放つにはまず魔力の流れ、即ち血の流れを感じなければならない…、らしい。
まだ試したことがないから半信半疑だ。
その後に詠唱。
想像力が豊かな人なら無詠唱で魔法が撃てるそうだけど、ほとんどの人はできないとのことだ。
詠唱は、まず階級code。
Aなら最上級、Bは上級、Cは中級、Dは初級。
今回は初級魔法なのでDcodeの詠唱になる。
まだまだある…。
魔法ってすごい力だけど覚えるの大変だな……。
次は属性の確定。
分岐は五つ。
四つは四大元素に通ずっていて、火はwand、水はglass、風はsword、土はcoins、となっている。
そして、天と呼ばれる五つ目の属性。
これは特殊な属性であり竜の持つ属性で、詠唱はbenny。
この時点で魔法陣は展開されていなければ、魔法は放てないとのこと。
ちなみに色があって、火は赤、水は青、風は緑、土は黄の色に淡く光っている。
天は白とも言い難い、無色の陣が構築されるらしい。
三つ目に起動式。
これまでの詠唱を踏まえた上で、どのような効力を与えるのかを示すための詠唱。
自分のイメージをより強めるためにする、といったものだ。
ストルスさんのような上級者になると、elementの総称式での詠唱も可能になるらしい。
僕にはまだまだ先のことだろうけど…。
これだけの過程を終えた後に、やっと発動式。
これは簡単で、startの総称式でいいらしい。
注意事項もある。
詠唱途中の魔法陣を構築する際に陣を破壊してしまうとそれ相応の報酬、ダメージを負う。
これを、陣破壊と呼ぶ。
要するに魔法は、危険と隣り合わせってことだと思う。
はあ…。もう嫌だ…。
この内容のほとんどを暗記しないと戦えないなんて聞いてない…。
「どうした? 早くやってみろ」
目の前の葵さんは人の苦労も知らず、すまし顔で聞いてくる。
とりあえず今までの復習がてらやってみることにした。
火属性の初級魔法。
手のひらに小さな火を起こすだけの簡単な魔法。
「えっと…、火属性初級魔法《Dcodewandmakeafire》……っと…」
まだ覚えきれてない分、ぎこちなさが残るが最後まで詰まらず言えた。
赤色の魔方陣も出てる。
よしっ…、これなら…!
「発動《start》…!」
これで火が……。
……アレ?
「で…ない…?」
キラキラとした光りの粒子とともに、魔方陣は僕の右手から消失した。
その光景に葵さんも目を丸くしている。
「な、なんで…。うまくいったと思ったのに…」
どうしよう…。
このままじゃ僕…、地球へ行けない…かも…。
そんな不安と焦りが徐々に込み上げてきた。
助けを求めようと目の前の女性に目をやる。
初めは驚いていた葵さんだったが、今は何か考え込んでいるようだ。
「白夜も私と同じ非適合者…。これはまた武器を作り直さなければ…」
ブツブツと独り言を言ってる。
「あ、あの…葵さん…。この状況はいったい…」
魔法が発動しなかった。
テキストにも載っていなかった事が起きた。
そのわけが知りたくて、問いかける。
すると、少し間を置いてそれに答えてくれた。
「端的に言えば、お前はこの先、魔法が使えない可能性が高い。私と同じようにな」
「……え?」
思いもしなかったカミングアウトに言葉が出ない。
「嘘…ですよね…?」
「今嘘をつく理由がない。実際、私も魔装籠手はつけていないだろう?」
そ、そう言われれば…、そうだな…。
カレンと戦っていた時も、模擬戦の時も、魔装籠手はつけてなかった。
だったら、
「どうやって戦うんですか? 竜がどれほどのものかはわからないけど…、魔法が使えないと…」
言ってて気づく。
あの時の防御魔法。
そして手に持っていた紙…の様な物。
「もしかしてあの紙で!?」
「詳しいことはあの二人が来てから話そう。もうそろそろ来てもいい頃なのだが…」
と、言っているとドアの開く音がして、その人たちが入ってきた。
「おう、二日ぶりだな。白夜」
「おっはよー! 白夜!」
二つの元気な声が聞こえ、ストルスさんとカレンが姿を見せた。
「話しているそばから来たな」
言いながらイスから立ち上がり二人に視線を合わせる葵さん。
それに連なって僕も席を立つ。
「あ、あの…僕は皆さんがここに来る事は聞かされてなかったんですけど…」
とりあえず現状を伺ってみた。
すると、カレンが紐のついた小さな筒状の何かを取り出して、
「白夜おめでとう!」
引っ張った。
大きな破裂音と共に紙吹雪が舞い、僕に降りかかる。
「おい! 一緒にやるって約束だろ!? なんで先走るんだよ!」
ストルスさんもそう言いながら同じものを取り出した。
それに続いて葵さんも。
「やれやれ…。どうせこんなことになるんだろうと思っていたが…」
「えへへ、ごめんね」
呆れた二人を笑顔で誤魔化している。
「あーもう、だからコイツは呼ぶなっつったのに…」
「ス、ストルスさん! ごめんねってばぁ!」
また二人でケンカし始めた。
そんな二人を見て、ため息をついている葵さん。
「また始まったか…」
腕を組んで、止めに入らず眺めている。
僕が仲裁に入ったところで多分止まらないと悟り、葵さんへ質問を投げた。
「これ…、なんです?」
ストルスさんとカレンが急に来たと思ったら、クラッカー?で驚かされるし…。
「白夜が狩竜人申請を送った事を伝えたらこうなった」
「なんですかそれ…」
よくわからないや……。
空笑いしながらもう一度二人に目を戻すと、カレンがストルスさんに乗りかかっているところだった
すると、ストルスさんが乗られているカレンをそっちのけに、
「白夜…、退院おめでとう。それと、狩竜人申請…送ったんだってな」
「ち、ちょっと! 今はあたしでしょ!」
つまりのある声で、僕の退院を祝った。
ストルスさんがカレンを無視してるから僕もそれにノり、無視する。
……あ、そうか。
「これって僕を祝うために…?」
「そういう事。なら始めるか」
葵さんの掛け声とともに、二人はしっかりと僕の方へ向き直した。
そして三人が声を合わせ、パーティは始まった。
「「「白夜! 狩竜人認定おめでとう!!」」」
飲み食いするだけの食事会になってしまった祝福会も終わりを迎え、葵さんが本題を話し始めた。
「今日は、第三番隊のこれからの方針を決めたいと思ってお前達を呼んだ所存だ」
「新メンバーも加入したことだしいいと思うぜ」
「はふほーほーひんっへはひ?」
二人とも賛成のようだけど…。
ケーキをほぼ一人で食べきったカレン。
今もまだ口に残っているみたいで、何を言っているのか全然わかんない…。
「カレン…。行儀が悪いから口のものを飲み込め…」
今にも怒りが弾けそうな、呆れ顔の葵さんが注意する。
こ…、これは…。
いつ怒ってもおかしくないような表情だったから、僕もこっそりカレンに注意を促す。
「カ、カレン、先に飲み込もう、ね…?」
それが効いたのか、素直に口のものを飲み込んだ。
「活動方針って何?」
今度は聞き取れた。
「何度もやっていることだろう...。少しは覚えてくれ...」
呆れた口調の葵さんが言った。
でも、その質問は僕も聞きたい事だったので、そのまま続ける。
「あ、あの僕もわからないです...」
ああ、そうかと葵さん。
「今までの反省とこれからどうするかを決めるんだ」
僕には優しく答えてくれる。
「ったく...、おめえはいっつも寝てるからな...」
と、カレンの方を向いてストルスさんが言った。
そんな二人の罵倒に傷付いたのか、隣で黙り込んでしまった。
「カ、カレン…? お、おーい」
顔の前で手を振っても返事がない。
「ほうっておけ。話さえ聞いてもらえればそれでいい。むしろ黙っていてくれた方が静かで都合がいい」
「むぅ…。言わせておけば……」
頬を膨らませてブツブツとぼやいている。
あほ毛も垂れ込んでいる。
ここは気にかけるより、話を聞く事を優先しよう…。
そう思うと同時、二人は話を進めた。
「とりあえず、今月の実績は地竜が三匹、飛竜、邪竜、蛇竜が一匹ずつだ」
「今月は色々あったし…、まあ少ないが良いんじゃないか?」
「良くはない。確かに色々あったとはいえ、六匹じゃ話にならん」
「白夜のこともあるしこれ以上は無理じゃないか……?」
聞いているのはいいけど...。
この状況…、模擬戦の時以来だ…。
また僕だけ話には入れずにいる。
まあでも、話を聞いているだけでも悪くはないかな…。
そのまま二人の会話を聞いていることにしたが、早速僕の出番が来たようだった。
「白夜が討伐に参加できる技量を身に付けてくれりゃ話は別だがよ」
どういう経緯かは聞きそびれてしまったが、僕の名前が出ていた。
「あ、あの…僕がなにかしましたか…?」
話に入るチャンスは逃すまいと、思い切ってみる。
「いやあな、お前が魔法やら武器やらを人並に扱えるようになったら……」
すると、急に立ち上がった葵さんが叫んだ。
「そうだストルス! 話しておきたいことがあったんだ!」
少し大きめの声のせいで、ストルスさんの言葉を遮った。
「な、なんだよ急に…」
「落ち着いて聞いてくれ…。白夜が、非適合者だった」
言い終わると同時、ストルスさんの目の色が変わった。
「ほ、本当か!?」
その目は歓喜に満ち溢れているようだった。
「本当だ。初級魔法すら発動できない」
ストルスさんとは逆に、冷静な面持ちで答える葵さん。
や、やっぱり魔法が使えないとマズいんじゃ……。
そんな僕とは裏腹に、二人の会話は弾んでいた。
「なら、やっぱり呪符使った後衛してもらうっきゃねーな!」
「うちは馬鹿な前衛が多くて苦労していたからな。そう考えると大助かりだ」
二人の表情と話の内容を聞く限りは、大丈夫そうだ…。
よかった…、追い出されるのかと思っちゃったよ…。
安心すると、なぜか右肩が重く感じた。
見てみると、カレンがこちらにもたれかかって眠っていた。
あほ毛がぴょこぴょこ動いてご機嫌のようだ。
バ、バカな前衛さんの一人は、今もバカをやってます…。
「さて、じゃあ今日はこの辺りで切り上げるか」
「そうだな。今後の方針も見えたし」
うわわわ、どうしよう! 会議が終わっちゃう!
二人にこの現場を見せたら終わりだ!
その前にカレンを起こさなきゃ…!
「ほ、ほらカレン。起きて!」
「うにゃ…? 終わっらの……?」
小声でカレンを起こそうとするが…、遅かった。
「白夜、カレンはいいからお前も身支度しとけ」
ストルスさんの怒りの溢れる声が飛ぶ。
「わ、わかりました!」
もたれかかっているカレンを机に寝かし、その場を離れた。
「ふぇ? はくやは……? ――――っうぎゃあ!!」
「てめえこら! 今日もぐっすりお休みタイムしやがってコノヤロー!!」
カレンの叫び声とともにストルスさんの尖った声も聞こえた。
うぅぅ…。耳が痛い…。
でも次第に、尖った声は笑い声へと変わっていった。
どうやら擽りあっているようだった。
「い、いつもあんな感じなんですか…?」
「ああ、残念ながらいつも通りだ…」
腕を組み、ため息をつきながら言う。
「あ、そうだ忘れるところだった」
目の前で転げ合っている二人を置いて、葵さんがポケットから一つの鍵を取り出した。
「昔、私が使っていた部屋の鍵だ。私物は片してあるから好きに使ってくれ」
「え…、あ、ありがとうございます」
戸惑いながらも、鍵を受け取る。
そうか。家もなくなったのか…。
自然と肩が落ちるのがわかった。
「安心しろ。お前の私服やら下着やらは全てタンスの中だ」
「あ、ありがとうございます…」
「私の店の真上がその鍵の部屋だ。基本ここにいるから、何かあったら呼んでくれ」
「わかりました。それじゃ、僕はこれで」
そうだな…。あまり考えないようにしよう…。
心に決め、新しい部屋へと向かう。
振り返ると、疲れたのか、二人が机に突っ伏していた。
「あ、あの先に失礼します」
「お、おう……、お疲れ…」
「……また…明日……ね…」
息を荒らげながらも、返事をしてくれる。
「今日はありがとうございました」
最後に礼をして、その場を離れた。
扉を閉め、ゆっくりと上りの階段を登る。
階段は静かで、あの時のように色んな事を考えてしまう。
魔法のこと。
僕の過去のこと。
そして、母さんのこと。
さっきも、家の外見や内装を思い出そうとしてみたけどダメだった。
やっぱり、地球に一度行ってみないとな…。
そう考え込んでいるうちに、階段を上りきったみたいだ。
気持ちを切り替えるためにも、一旦外に出て深呼吸しよう。
上には行かずに、歩道へと足を踏み出したその時、人とぶつかった。
ぶつかった人は老人のようで、転ばせてしまった。
「ご、ごめんなさい! か、考え事してて…」
手を指し伸ばしながら、頭を下げる。
「いいんじゃいいんじゃ。わしも不注意じゃった」
その手を取りながら、おじいさんも謝罪を述べている。
「そ、それじゃ失礼します…」
気不味くなり、その場を離れようとすると、
「禁忌には気をつけるのじゃぞ。あれは呪いじゃ」
おじいさんの声が聞こえた。
「えっ?」
振り返るが、そこには誰もいなかった。
でも、確かにあのおじいさんは…禁忌と口にした。
不思議は深まるばかりだが、
「気にしていられないよな…」
気持ちを切り替えて、そのまま部屋へと向かった。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
もうすぐ新学期が始まりますが、春休みが終わる前に二節目に入りたいです...。
これからもまだまだ頑張っていきます!