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失われた世界の中で  作者: 柳 田
第一節:初陣
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File,5

こんばんは。少し私用で投稿遅れてしまいました。すみません。

今回で六回目の投稿になって、慣れてきたところもあります。

読んでいただけると嬉しいです。


目が覚めるとそこは、白い天井だった。


「あ! 白夜起きた!」

つい一週間前にも似たような体験をしたな…。

でも今のカレンに涙は見えず、どちらかといえば笑顔だった。


「よかった…。また十何年も眠られると、こちらの身が持たないところだったよ」

「…………」


葵さんとストルスさんもいる。

皆揃っているようだった。

起き上がって辺りを見渡す限り、ここは病院なんだろう。


そして気になる所が一つ。

窓際に男女二人が立っている。

二人共特徴的な蒼い髪をしていて、ストルスさん達と同じデザインの藍色のロングコートを着ていた。


誰だろ…。

そう思っている矢先、その二人組の男性が喋った。


「目も覚めたようだし、私たちは帰るとしよう」

ストルスさん程低くはないが、とても威圧感のある声。

女性の方は口を開かず、男性の言うことに頷いている様子だ。

「そうだな…。白夜を助けてくれて本当にありがとう」


葵さんが深々と頭を下げ、お礼を述べる。

僕が、何かしたのかな…?

その横でカレンもお辞儀している。


「ほら! 白夜もお礼言いなよ!」

小声で僕にお礼を促す。

ぼ、僕本当に何かした!?


「あ、ありがとうございます」

あの時と違って声は出るようだ。

「自分が何をしたのか、考えてから礼を言え」

トゲのある口調で言い離されてしまった。


お礼をする二人を見てストルスさんも。

「本当にすまない。ありがとうウルヴ」

「礼を言うぐらいなら、さっさと降りて“最強”をよこせ」

嘆息(たんそく)をもらしタンカを切る。

「ハッ、若造が。お前にそれはまだ重い」

売り言葉に買い言葉…。

「言うじゃねえかストルス。闘るか?」

言いながら彼は右手を前に突き出した。


その腕には…、魔装籠手が!?

「この前の続き、やろうか?」

イスから立ち上がってストルスさんもやる気みたいだ。


あの…、ここ一応病院なんですけど…。

僕の病室で模擬戦をしようとしている二人。


その時、

「もうお兄ちゃん! 場所を考えてよ!」

「ストルス。騒ぐなら外でやれ」

葵さんと二人組の女性が仲裁に入った。


そして女性がこちらを向いて言った。

「ごめんね白夜くん、お兄ちゃんが迷惑かけちゃって」

「え…あ、はい」

自分のことを言われてるのかわからなかった...。


「お兄ちゃん、ちょっと怒りっぽいところがあるから...。許してあげて、ね?」

前かがみになり、可愛い素振りを魅せる。

普通の男性ならこれでイチコロだろう。

現に自分がそうであるように...。


「え…と…あの、全然大丈夫です!」

上ずった声で返す。

自分でもわかるくらいに頬が熱い。


「ホント? ありがとう! 白夜くんって優しいのね」

百点満点の笑顔。

カレンや葵さんとはまた違った可愛さを持っている人だな...。


そんな蒼髪の女性に見とれていると、隣から痛いくらいの視線が刺さる。

「白夜のバカ...」

「まあ...、青春がなかったお前だから許すが...」

ブツブツと何か言ってる...。


二人の視線を気にしていると、また男性が口を開いた。

「もういいだろう、私達がここに留まる理由がない。カイ、帰るぞ」

少し声を荒げながら、帰宅を(うなが)している。

「はぁい。じゃあね、白夜くん」

バイバイと手を振りながら、魔法陣が展開されて消えてしまった。


今のも転移魔法...なのかな...?

二人が消えて、違和感がなくなった病室。

そこで、今まで違和感の象徴になっていた二人のことについて聞いてみた。


「あのそれで...、さっきの人達は...?」

僕の病室にいたのだからそれなりの理由があるはずだ。


その質問には、ストルスさんが答えた。

「ああ...、アイツらか...」

なんだか乗り気じゃなさそうだ...。

ストルスさんは話しそうにないから、葵さんに伺ってみた。


「僕、何かしたんですか?」

少しの間の後、葵さんが、

「お前は彼らに助けてもらったんだ。模擬戦の後倒れたこと、覚えてないか?」

「ぼ、僕倒れたんですか!?」


確かにあの後頭痛がしたけど…。

だから今ここにいるのか…。

だったらもう一度会った時にしっかりお礼しなくちゃな…。

あ、でもあの人たちの服装…。


「その…、あの人達もやっぱり狩竜人なんですか?」

「あぁそうだ。しかもとびきり強い」

その後に続きストルスさん。

「第一番隊のアルカス兄妹。アイツらはここじゃ超有名人だ。まあ、ずっと寝てた白夜は知らないだろうけどな」

確かに聞いたことのない名前だ。


「彼らも禁忌保有者だ。人工のな」

………え? き、禁忌…?

聞き慣れない言葉に少し戸惑いを見せる。


それを感じとったのか葵さんの顔色が変わった。

「バカ! ストルスお前何言って...」

「別に隠すことでもないだろ。それに、白夜にも自分が禁忌保有者だってことの自覚を持ってもらいたいし」

僕が...、何だって...?


困惑が大きくなり、緊張と動揺が表へ出てしまう。

嘆息をつきながら葵さんがその重い口を開く。

「白夜、お前にはとある危険な力が宿っている。さっき私とストルスが話していた“禁忌”と呼ばれる魔法だ」

そして、

「お前の宿す禁忌は“可視(かし)”。情報によると、可視の禁忌は全てを視る力らしい。抽象的過ぎるのは許してくれ、前例のない禁忌らしいんだ」

全てを視る…。こんな急に言われても…、

「ま、まず禁忌って何ですか?」


そこからの問題だ。

そもそもを知らないことには何を言われてもわからない。


この質問には、ストルスさんが答えた。

「“禁忌”ってのはあんまり公にはなってないから俺達にもよく分からん」

「そうなんですか?」

「ただ、第三次世界大戦勃発(ぼっぱつ)のきっかけとなったのは間違いなくソレだ」

「き、きっかけになったって…」

「魔力を使う魔法に対して、禁忌は魔力を必要としない。そうなりゃ魔法文明が栄えていたあの時代の人間なら、世界を取りに行くわな」

それで第三次世界大戦が始まった…。

「大戦が終わってココに移り住んでからは政府による禁忌保有者の処刑が行われて、今や天然物の禁忌を保有してる奴なんてほぼいなくなっちまった」


そんな物を僕が…。

という事は、

「ストルスさん達が十三年間僕を守ってくれていたってことですか?」

「まあ、そうだな。血液検査だけだったから助かったぜ…」

命を助けてもらって、それからもずっと守っていてくれた。


感謝してもしきれないくらいの恩が彼らにはある。

「魔力を使わない魔法…。そんな感じでいいんですか?」

「俺もそんな感じだ。ちなみに言うと禁忌保有者は他にもいるぜ」


そう言うと、入れ替わるように葵さんが話し始めた。

「実際、今いる禁忌保有者のほとんどは人工物だ。天然持ちはお前とあと一人いるんだが、今はいいだろう」

起きてすぐ大変なことを知ってしまった…。

それにしても禁忌か…。

地球のこともあってあんまり強い印象は受けないな。


カレンもこの話には黙って聞いていた。

「今ここで話したことは私たち三番隊だけの秘密だ。今でも政府に目をつけられると処刑まである」

「そこまで重いんですか!?」

なんとなく捕まるのは予想できたけど、こ…殺されるのか…。


「禁忌保有者は、その強さゆえ反乱を起こさないか心配なんだ。だから殺す、もしくは手元に置いておきたい。そんな所だろう」

権力者になれば皆そう思うのかな…。

「まあでも地球までは監視の目は行き届いてねえから、向こうに行けば使えるぜ」

禁忌って思っているよりも凄いモノなのかな…。


僕には今まで積み重ねてきた努力がない。

魔法も使えない。武器も上手く使えない。

あるのは今聞かされた才能だけだ。

使えるものは使っていかないと、今まで努力してきた人に追いつけない。


「それでだな、白夜」

声のトーンを落としたストルスさんが改まって言った。

「今日のことはすまん。調子乗ってやりすぎちまった」

頭を下げ、謝罪を口にした。


模擬戦のことか…。

「だ、大丈夫です! 僕の事は気にしないでください! それにアレがあったから得たことだって…」

僕の言葉を遮って話し始める。

「だから、お前の狩竜人になる話は…、諦めるよ」

「え…?」

「あんなことがあったし、それに…無理して欲しくない…」

頭を上げて続ける。

「そういうことだから、禁忌のことにだけは気をつけて…」


さっきとは正反対の空気になった病室。

三人とも肩を落としている。

そういえば…、そうだな…。

こんな状況になった以上言うしかないよね…。


「あ、あの…、ストルスさん…」

「ん? どうした…?」

少し間を空けて、心を決めた。


「僕、やっぱり狩竜人になります」

「………え? 今なんて…」

驚きのあまり皆声が出ないようだった。

それを差し置いて話を続ける。


「眠っていた間、夢を見ていたんです。そこに母が出てきました」

そこで、

「母さんは言ったんです。私は生きている、故郷へ帰れ、と…」

「……」

「僕は地球に行きたい。行けば何か分かるかもしれない…、だから」


「僕に戦い方を教えてください!」


固まったまま、数分。

初めに口を開いたのはカレンだった。


「白夜…、ホント…?」

今にも泣き出しそうな顔で問いかける。

「本当だよ。カレンにも頼んでいいかな?」

言うと同時にストルスさんを押しのけ抱きついてきた。

「やったぁ! 白夜大好き!」


今回だけは受け入れた。

女の子ってムダに柔らかいんだな……。

カレンの一言で、場の時間が動き出した。


「な、なんだよ…。なるんなら初めからそう言えよ…」

大きなため息とともに背伸びをするストルスさん。

葵さんも腕を組み嘆息をついている。


「い、いいんですか…?」

この反応からして結果は分かっているが、確認を取る。

返答は予想通りだった。


「当たり前だろ。これからもよろしくな、白夜!」

「よろしくね! 白夜ぁ」

抱きついたままのカレンも返してくれた。


そろそろ離れてもらわないと…、色々困る…。

そう思っていると、急にカレンが離れた。

「カレン…、お前は本当に学習能力がないな…」

よく見ると、葵さんがカレンの首を掴んでいた。

また助けられたな。


「うぅ…、白夜の温もりが…」

「とりあえずお前は座れ」

言いつつ、カレンを元のイスへ座らせた。


まあでも、とりあえず狩竜人になれた。

母さんのことも気になるけど、まずは竜を倒せなきゃ意味がない。

今まで以上に頑張らないとな…。


そんな意気込みを胸に、みんなの顔を見て言い放った。

「ストルスさん、葵さん、カレン。これからお世話になります!」

最後まで読んでくれてありがとうございます!

やっと白夜が狩竜人になりました!

早く竜を出したいですね!



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