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失われた世界の中で  作者: 柳 田
第三節:反乱
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File,14

こんばんわ。やっと大学受験に取り掛かった僕です。


取り掛かったのはいいんですがやはり勉強がめんどくさすぎて……。すぐに違うこと考えてしまう今日この頃……。


最後まで読んでいただけると嬉しく思います。

よろしくお願いします。

中央塔に戻ってきた僕たちは、一番初めにカレンを尋ねた。

反乱軍と戦う直後に戦線を離脱したカレンは、僕が中央塔で帝さんに預けたんだ。フロントでカレンの

居場所を訊けば、ロビーの女性は一つの病室の部屋鍵を渡してくれた。


「病棟十二階の223号室だ」

ストルスさんが先を歩いて案内してくれる。


 乗り込んだエレベーターの中は、重苦しい空気が漂っていた。

 廊下も少しだけ早足で、ストルスさんが焦っている様子が伺える。

 そして辿り着いたとほぼ同時に、ストルスさんは病室へと入っていった。


「カレン、大丈夫かッ!」

 僕と葵さんが病室へ足を踏み入れると、カレンは困った表情を浮かべてこちらに目を向けた。


「あ……————えへへ、ごめんね……心配かけちゃって」

 普段通り————とは言い難いような浮かない顔をしたカレンが、笑ってこちらに手を振った。


「ストルスさんも落ち着いてよ。あたしは大丈夫だからさ!」

 笑顔をみせるカレンだったが、やはりその表情はどこか遠くに感じる。


「来たかお前達」

 背後から聞こえた声に、振り返る。そこには、帝さんが立っていた。


「カレン=エヴァ・ルーズ=レクリシアの容態だが————」

 今ここに来た僕たちが、まさにそれを訊こうとしていたことを、帝さんは口にした。部屋には静寂が満ちる。


 帝さんは小さく息を吐いて、

「ただの精神的疲労、全く問題なかったよ。安心していい」

 緩んだ面持ちでそう言った。

 その瞬間、病室に大小のため息が飛び交った。


「心配させるなよカレン……」

「……私の心配を返せ」

「ストルスさんごめんね、葵さんも……」

 張り詰めた空気が、一気に緩和されていく。


 カレンの表情も、少し元に戻ったように感じた。

「白夜、ごめんね……あたしをここまで運んでくれたんだよね?」

「カレンが無事だったんだから、気にしないで」

 カレンは笑顔で、うんと返事をした。

 そこへ帝さんが割って入る。


「さて、じゃあ私からも一ついいかな」

 無言が賛成を表して、ストルスさん達同様に僕も帝さんの質問に耳を傾けた。


「君らが逃した反乱軍の幹部について、早速情報が入ってる」

 その言葉に、この場の全員が強張る。


「差し支えないなら、今ここで話すが……どうだ?」

 帝さんは葵さんを見て言った。


「私は別に構わないが……」

 少し躊躇うようにストルスさんを見る葵さん。


 やはりここにはカレンがいる。今ここで反乱軍の状況を伝えられると、カレンが無理をしててでも行くと言い張るかもしれない。

 それを嫌ったのだろう。

 でもストルスさんは首を横に振った。


「いいだろ。カレンも自分のコトくらい自分で分かる」

 そうなると、必然的にカレンに全て委ねられる。

 一斉に僕たちの視線がカレンへと集まる。


「えっ……と、あたしなら大丈夫だから! だから、その……」

 言葉に詰まるカレンだが、それでも言いたいことは伝わった。ストルスさんは帝さんに目を向けて、小さく頷いた。


「では話そう。————たった今反乱軍が東門を制圧したとの報告が入った。第四番隊グラニー・ドルダムは中央塔で治療中だ」

「グラニーがやられたか……」

 ストルスさんが唸る。

 こうなると多少不利になるよな……。


 門が一つ落とされたことで、奇襲がしやすくなる。中央塔に攻め込まれれば負けだ。

 どうするんだろう……。


 そう思ったのは葵さんも同じだったようで、

「政府の意向は?」

 そんな質問をする。


「それが本題だ。政府は、今すぐにこちらから奇襲をかけると言っている」

「そうか……確かにそれしかないかもしれないな……」

「一番隊と二番隊には既に了承は得ている。後はお前達だけだ」

 帝さんが病室の扉を開けて、続ける。


「もう時間がないから、作戦に参加するなら南門前に来い。そこで他の連中に聞いてくれ……では私はもう行くよ」

 言いながら帝さんは出て行ってしまった。

 病室を渦巻く重たい空気は、ストルスさんの大きなため息でかき消された。


「こんなもん、行くしかないだろ……」

 仕方ない、と付け加えてストルスさんも病室の扉に手をかける。


「カレン……お前はここで待機だ。————行くぞお前ら」

 ストルスさんは小声で叫んだ。僕たちにもう一度喝を入れるように。


「ああ……そうだな」

 葵さんも笑みを浮かべて応を返す。


 よし……僕も行こう!


「はくや……ッ!」

 僕を呼び止める声が聞こえた。

 振り返ってその人物を見る。


「どうしたの、カレン?」

 僕が訊くと、カレンは俯いたまま呟いた。


「約束、帰ってくること……」

 恥ずかしいのか、目を合わせようとしないカレン。それも少し可愛らしいと思えた。


「————うん、約束する」

 その“約束”は、僕の胸を束縛するように蝕んでいた。


「白夜ァ! 早く来いよッ!」

 ストルスさんの声が廊下に響いた。 


「じゃあ僕、行くね」

 カレンに聞こえたかは分からないけど、去り際に呟いて病室を出た。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


勉強したくねぇ……。

勉強せずに合格してぇ……。

あ、僕は成績良くないので指定校推薦は無理です。


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