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失われた世界の中で  作者: 柳 田
第一節:初陣
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File,2

どうもこんにちは。

前と同じく、読みにくいかもしれませんが最後まで読んでいただけると光栄です。



「まず、アナザースカイは五つの区画に分けることが出来る。今いるここは医療区(いりょうく)。病院や薬局といった医学に関係する建物が多い区画だ。地球から帰還した狩竜人(かりゅうど)の手当てもここで行われている」


今僕らの歩く大通りでもいたるところに病院がある。

歯医者や耳鼻科など、他にも専門的な病院もたくさん並んでいた。


「他の区画で言えば、俺達狩竜人がよく出入りする鍛冶区、後は医療区と鍛冶区が挟むように隣接する民街区(みんがいく)が二つだ」

「鍛冶区には武器とか魔力ボトルとかいっぱい売ってるよ!」

「ちょっと待って、喋るの速すぎ……」

知らない単語のオンパレードで頭がパンクしそうになる…。


「それも後で説明する」

「お、そういえばカレン。お前刀新調(しんちょう)したんだってな。後で見せてくれよ」

「そうなんだぁ。前よりも軽くてね――――」


後ろで二人が話始めた。

これって街案内だよね……。

なんかもう皆さんテキトーになってません?

「あ、あの…一つ質問いいですか?」

前を先導する(あおい)さんの隣に並ぶ。

「あぁ。どうした?」


「中央塔ってただの時計塔じゃありませんよね? ここを取り仕切るお偉いさんか誰かがいるとか…?」

「よくわかったな。お前の言う通り、あの中央塔には[政府(せいふ)]と呼ばれるアナザースカイ全土を掌握(しょうあく)する機関がいる。前に話した狩竜人の申請書を提出する相手だ」

あそこに……政府が…。

確かにアナザースカイ全土を見渡すには絶好の場所というわけだ。

「まあ、あまり信用しないほうがいい。奴らは何を(たくら)んでいるかわからないからね」

「それはどういう事なんですか?」

「今はいいだろう。さあ着いた」

はぐらかされた…。でもまあ気にすることもないか。でも…、

「中央塔はあっちにあるんですが…」

今目の前にあるのは、祭壇(さいだん)のようなものと大きな円のみ。


まさかここから行けるなんてことは……。

呆然と突っ立っていると後ろから声がした。

「白夜は知らねーよな。これ」

「は、はい。もしかしてこれが魔法というものですか?」

「まあそうなんだが…。お前ってホント魔法の類に関して言えば無知だよな。お前らの時代なら魔法科学校(まほうかがっこう)もあっただろうに」

まずそんな学校があったこと自体知らなかった。

「僕、学校には行ってません。誰かに教育を受けていたことは覚えてるんですが…」

「まじかよ……。じゃ、第三次世界大戦(だいさんじせかいたいせん)も知らねーのか?」

「世界大戦は第二次までですストルスさん。これくらい常識ですよ?」

「違うよ、第三次世界大戦もあるよ!」

嘘……だろ…?

僕が知ってる歴史と違う? ということは僕が眠っていた間に…。


「第三次世界大戦が始まったのは二十年前。終わったのが十三年前。地球崩壊と同時に幕を閉じたんだ」

「それは……本当なんですか…?」

それじゃ僕は嘘を教えられたって事…?


「ホントだよ? 確かぎむきょーいくってやつで習うんだよ!」

「お前も起きてから習っただろうが」

と、ストルスさんがカレンの頭を小突(こづ)いた。「あうぅ…」

「おいお前達。喋ってないで手伝え」

後ろから、(あき)れ口調で葵さんが言った。

「いや、俺ら転移魔法陣の張り方知らねーし、なあカレン」

「そ、そうだよ!私も知らないもん!」

鳴りもしない口笛を吹いている二人。

そんな二人をみて深い溜息をつく葵さん。


「白夜も覚えておいてくれ。この祭壇には予め転移魔法陣が組み込まれているんだ。端にある長細い台に手をかざすだけで、転移魔法陣が構築される仕組みになっている」

ま、全く意味がわからない……。

「ま、魔法が無知な白夜に言ってもわからないだろうけど、便利だから覚えておくといいよ。アナザースカイの中にあるこの祭壇にならどこへでも飛べるからね」

「わ、わかりました」


魔法の仕組みすらわからない僕にそんなこと言われても…。

「物は試しだ。やってみるといい」

と、葵さんが僕をその長細い台へと促した。

よくみてみると、この台にも似たような円が描かれてある。


「その円の中に手を置いて行き先を言うんだ。転移、中央塔ぐらいでいいと思うよ」

「やってみます」

ストルスさんもカレンも円の中にいることを確認し、葵さんに言われた通りに告げる。


「転移! 中央塔!!」

言い放った直後、目の前の光景が一転し真っ白な光りに包まれた。

驚きのあまり目を(つぶ)ってしまい、その後どうなったのかはわからないが。


「おーい白夜。何目ぇ瞑ってんの? いくぞー」

「………え?」

ストルスさんの声が聞こえ目を開けてみるとそこは、みたこともない場所だった。


「どうしたんだ白夜。また頭痛か!?」

「い、いえ…。ただびっくりしただけです…」

本当に一瞬の出来事だった。

魔法というのだから、もっと不安定なものだと勝手に勘違いしていた。


「ほら、行くぞ」

皆ももう塔の玄関のような場所まで足を進めていた。

「はい…」

思ってたのと全然違う…。


なんの違和感もなく場所が変わった。

本当に一瞬の出来事で理解が追いつかなかった。

「はは……、すごいや…」

魔法の驚異的な凄さに空笑いを浮かべながら、先を行くストルスさんのところへ走った。




中央塔の中へ入ると、目の前に受付があった。

イスの配置といい受付の場所といい、さっきまでお世話になっていた病院のフロントを思わせる。


そう思って立ち止まっているとストルスさんが、

「先に行ったってよ。第六闘技場だ」

「闘技場? そんなのどこにあるんですか?」

見た感じだと、この上にそんな広々とした空間がありそうにもないし。また魔法が関わっているのかな…。

と、色々試行錯誤(しこうさくご)している僕に向かってストルスさんが自慢するように言った。

「地下だよ」


――――


十人くらい乗れそうな長方形の箱は地下へと落下している。

僕は初めての体験に胸を躍らせていた。


そんな僕を不思議に思ったのだろうストルスさんが声を掛けてきた。

「エレベーターに乗るのは初めてみたいな様子だが…」

「はい。どんなモノか知ってはいたんですけど、乗るのは初めてです」

「そうか。ま、俺には関係ないか」

小さい頃から乗ってみたいと思ってたんだよなコレ。


こんなたわいもないことなら覚えているのに肝心(かんじん)な事は覚えてないという……。

ため息混じりに、階を選ぶボタンの前にいるストルスさんを眺めてみる。


改めて見てみると、ストルスさんの体は僕の数倍あるように感じた。

まるで父親の背中のような。

そういえば…、僕の両親ってどんな人だ…。

もし両親がいるなら、僕が十三年も眠っているのだから既に面識しているはずだ。

でもいままでにそんな事は起きていない。

ということは…僕の両親は……。


と、一人で考え込んでいると、またストルスさんが。

「そういえば、お前はなんであの時躊躇(ためら)ったんだ?」

「え…?」

狩竜人(かりゅうど)の事だよ。病院で一度やらないって言ったじゃねえか」

ああ、あの事か…。

「えっと…。こ、怖かったんです…」

「何が?」

「竜を…、いえ、生物をこの手で殺すのが怖かったんです…」

無差別に生き物を殺すことは人殺しと同じだ、皆平等に生きているものなのだから…。

と、昔教わった覚えがあったのもある。

でも、僕はそういうの以前に血を見たくなかった。

トラウマとも言えるソレがあの時の思いだったのかもしれない。


「そういうことか…。まあ誰もがそう思うよな」

「はい…」

まだ狩竜人に成るって決めたわけじゃないけどね…。

会話が終わると共に、ポーンという木琴のような心地よい音が目的地に着いたことを知らせてくれた。




エレベーターを降り廊下に出て、初めに目を奪われたのは…。

ガラス越しに見えるだだっ広い闘技場だった。

昔教えを受けていた頃に本で見たことのある体育館というものとほぼ一緒だったのに驚いた。

「ここが…、第六闘技場…?」

「いや、ここは第五だ。上にも第一から第四まであるぞ」

こんなに広い物がほかに四つもあるとは思ってもいなかった。

それも地下に……。


「俺達が借りてるのはこの隣りだ」

と言い、左へ歩き出した。

先導してくれているストルスさんに僕もついていく。

狩竜人ってどんなことするんだろう…。やっぱり竜を八つ裂きとかにするのかな…。

エレベーターでの質問を思い返していると、一つの疑問が浮かんだ。


「ストルスさんって…、なんで狩竜人になったんですか?」

「俺か? 俺はなあ…」

前を行く顔は見えないけど声のトーンが少し落ちているのがわかった。

聞いちゃまずいことだったかな…。

「俺はよ。愛した女が目の前で殺されるところを見ちまったんだ。」

予想もしない答えにどうしていいのか分からず黙ってしまう。


「その時俺は何も出来なかった。無残(むざん)に殺されていくアイツをただ見ているだけだった」

だから、

「俺はもうそんな思いしたくない。だから力を手に入れて守りたいんだ。今いる大事な奴らを俺は失いたくない」

「…………」


無言で話を聞いていた僕に笑いながらストルスさんが。

「何お前がシンミリしてんだよ。元気出せ、お前の親御(おやご)さんはまだ生きてるかもしれないんだからよ」

気を使っていたつもりだったが逆効果だったらしい。

「あの…なんだかすいません…。嫌なこと思い出させちゃって…」

謝る僕に目の前のストルスさんは、廊下の突きあたりにある扉の前で立ち止まって振り返った。

「気にすんな。そんな辛いことじゃねえよ」

と言い、扉を開けた。




中に入ると、先に来ていたカレンと葵さんが対面していた。

それを見たストルスさんが彼女らに、

「おいお前ら。その辺にしとけ」

と叫んだ。


その声が届いたのか、二人はこちらに目を向けた。

「あ、やっと来た!」

「遅かったな。お陰でこのとおりだ」

先に口を開いたのはカレン。


その両手には包丁というには長い刃物が一本づつ握られていた。

腕にも機械のようなものが見える。

あれってもしかして刀…。

なにやら危険な香りが漂う第六闘技場。

その予感は当たらずとも遠からずだった。


「お前ら何してた…」

「カレンのやつが新調した太刀の切れ味を確かめさせろってうるさくてな…。闘った…」

「仕方ないじゃん! だって全然切らせてくんないんだもん!」

「私を実験台にするのが悪い。切れ味なら地球にいる手頃な竜でも()っ切ればいい」

「一人じゃ死んじゃうし!それにウロコ硬いし!」

「あーもうわかったから一旦黙れ…」

深い溜息とともに口論する彼女らを(なだ)める。


もう僕帰りたいな…。

話についていけず、ストルスさんの後ろで待たされる僕の身にもなって欲しい…。

「とりあえず今日は白夜だろ?」

少し怒った様子で未だに口論をしている二人に問う。


すると、葵さんはストルスさんの声に耳を傾けた様子だった。

「そうだな。私としたことが...」

腕を組み頭を抱えて(うな)る。それを見てカレンが。

「わーいやったやった!葵さんに勝った!」

「とりあえずカレンはスルーの方向で」

「うん。そうだな」

「え!?なんで!?あたしも仲間に入れてよぉ...」


完全においてけぼりだなこれは...。

三人の会話についていけない僕を悟った葵さんが一言。

「さ、さあ。そろそろ始めよう」

それに皆も賛同し、やっと本題に入った。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

今作まだまだ続けて行く予定なので今後ともよろしくお願いします。

次話はやっと模擬戦です!

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