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失われた世界の中で  作者: 柳 田
第一節:初陣
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File,1

やっと主人公が喋ります! 前と同じように読みにくいかもしれないですが最後まで読んでいただけると光栄に思います!

よろしくお願いします。


あれから一週間目の朝。


アナザースカイには太陽がないため、今が朝か昼か夜かも分からない。そんな中で、このアナザースカイにある時計において、全ての基準となる時計がある。

それが中央塔。

時計塔になっているそれは朝晩六時に大きな鐘を鳴らす。それをしるしに時間が刻まれてるのだ。


今は五時四十五分。

ここの病院は朝の鐘の音、すなわち六時丁度に起床なのだがいつも僕―――白夜(はくや)はその十五分前に目が覚めてしまう。

「もうちょっとだけ......」


寒いわけでもないのに布団を頭からかぶる。

二度寝しようにもあと十分程で鳴り響く鐘がそれを許さない。


十三年共にしてきたこのベッドとも今日でお別れか...。

もう退院しても問題ないだろうと担当医から告げられたのが一昨日(おととい)

昨日は大事を取って院内にいたもののリハビリはしていない。


そして今日。ついに僕はアナザースカイに来て初めて外を歩く。


もうこのことはストルスさん達に話してある。九時にフロントで待っていると言われた。


例の件について僕の意思が聞きたいそうだ。


はあ...。ここ、離れたくないな。

退院すれば自由だ。それは全て自分の力でやっていかなければならない、ということになる。そう考えるととても。

憂鬱(ゆううつ)だな......。


無駄なことを考えているうちに眠気が舞い戻り二度寝の体制が整ったその時、鐘が鳴った。


――――


荷物をまとめ十三年間を共にした病室に別れを告げ、フロントへ向かおうと廊下に出た時。


「退院おめでとう白夜君。十三年間お疲れ様」

後ろから聞き慣れた声がした。

振り返ってみると、自分の担当医―――あの白衣の男性が立っていた。

「いえ、こちらこそ十三年間もありがとうございました」

「しかし白夜君(はくやくん)には驚かされてばかりですよ。二年かかるとされていたリハビリを一週間で終わらせてしまうなんて」

褒められて悪い気はしないんだけどな…


「僕はただ先生の言われた通りに続けていただけです」

「それがすごいことなんだよ。やっぱり君は狩竜人になるべきだ」

またか……。

この人は退院を告げられた日からこればっかりだ。正直うんざりする。

「そのことはいいんです。もう決めたことですし」

「そうかい…。君なら絶対成り上がってくれると思ったのに…」


その落ち込む顔をみせないでくださいよ…。

見ているこっちが気を落としそうになる。

「ではこれで。本当にありがとうございました」

感謝の気持ちにとお辞儀(じぎ)をする。

「いいんだいいんだ、こちらこそお大事にね」

「はい」

担当医にも別れを告げ、歩みを進めた。


少し行ったところで、また声が聞こえた。

「白夜君! 頑張ってね!」

張りのあるいい声だった。そのせいで周囲の視線が僕に突き刺さる。

は…恥ずかしい……。

それでも後ろで手を振ってる担当医を無視できないから。

僕も精一杯手を振り返した。


―――――


フロントに着くと、その人達はすぐに見つかった。理由は簡単。

目の前の人集りがそれを示してくれていた。

「ストルス・フォンだ!」「最強の狩竜人(かりゅうど)よ!」「ナンバーズのパーティじゃねぇか!」


うん、外で待ってよ。

即答。人の圧に負けて近づきたくなかった。多分近づくと巻き込まれるしね。

僕はその人集(ひとだか)りを無視して外に出た。


出たのはいいけど…。

僕、ここに来て一回も外で歩いたことないんだよな。

リハビリ中はずっと院内にいたし。屋上も立ち入り禁止だったし。

外の情報を全く知らない僕がこのまま出歩くと、その先のことは予想できる。


ここで待つか…。

仕方なく病院の外壁にもたれかかって座った。

それにしても、

「本当に地球じゃないんだな」

病室から見た景色とはまた違った雰囲気(ふんいき)(かも)し出している。


そんな、未だに信じられない光景を目の当たりにしていると、時間が過ぎるのが早く感じたのだろうか。

フロントで騒いでいた人たちがゾロゾロと出てきた。

頃合(ころあい)かな。

立ち上がってまた院内へ入った。


そこにはさっきとは違い、普通の病院のフロントがあった。

それでも彼らの姿は浮いていた。

黒主体でところどころに赤い線の入ったロングコートのようなものを着ており、自然とストルスさんの髪の色を思い出させた。


そんな黒ずくめの三人組が、受け付けの人とやり取りをしている。僕の退院の確認をしているんだろうけど…、

もう強盗にしかみえないんだけど。


それでも話しかけないとあの事についても話ができないから。

「お久しぶりです、皆さん」

「――――」

一向に振り向かない。

そういえば声を掛けるのは初めてだったな…。


退院の知らせも担当医の先生にしてもらった。病院の利用者と間違われても仕方ない。

今度は少し大きめに、

「あの、すいません」

なんで謝った……。

自分で言って自分でツッコミを入れる。


すると目の前の大男は焦りを見せながら振り返った。

「うをぅ!? すいませ……? って白夜!?」

聞いたこともない声に僕だとは思わなかったらしい。


「ご無沙汰してます。ストルスさん」

「おう。しかし驚いたぜ、あのリハビリを一週間で終わらせちまうなんてよ…」

「いえ、僕はただ先生の言われた通りのことを続けただけです」

先生との別れ際にも似たようなことを言ったな…。


「あたしは一年もかかったのにぃ…」

すぐ横にはふてくされたように頬を膨らませるカレンの姿があった。

その反対側に葵さん。

(そろ)っているようだった。


と、葵さんが口を開いた。

「さぁ白夜。お前の決断を聞こう」

そうだよな…。

聞いて欲しくはなかったけど今日はそれを話すために皆来てくれたんだし…。


僕は自分の気持ちを、自分の決断を、伝えた。

「皆さんには悪いとは思いますが僕は、狩竜人にはなりたくないです」


そのまま時が止まったように、四人とも全く動かずにいた。

その時間はいやに長く、それでいて僕の心にズキズキとダメージを与えている。


そんな中、初めに口を開いたのはストルスさんだった。

「は…白夜…。聞き間違えたかもしれないから…もう一度だけ言ってくれないか…?」

もう言いたくない。けどやっぱり言わなくちゃいけないよな…。


「わかりました。えっと…、皆んさんには悪いとは思いますが、僕は狩竜人になりたくないです」

一言一句同じように、さっきよりもゆっくり話す。


皆驚きを隠せず呆然(ぼうぜん)と立っている。

き…気不味い……。

「…」

カレンも(うつむ)いて黙ったままだ。久々に見たあほ毛も元気をなくしている。


「あ、あの…それじゃ僕はこれで…」

早くこの場を離れたい一心で言葉が濁る。

振り返って外へと向かおうとするが…、それは閉ざされた。


カレンが腕を掴んだからだ。

「待ってよ…。どこ行くの? なんで……」

言葉はそこで途切れた。振り向くと葵さんの手が顔の前にあった。

「やめろカレン。これは白夜が決める事だ。私達が口出ししていいような問題じゃない」

「でも……だって……」

声が震えていた。下を向いているせいで顔はみえないけど、多分泣いてる。


それを見てなぜか、胸が強く痛む。目眩(めまい)と頭痛も激しくなり、鼓動が速くなる。

なんで……だよ…!

「大丈夫か白夜!?」

異変に気づいた葵さんとストルスさんが支えてくれて、なんとか転倒はせずにすんだ。

「一回看てもらったほうがいいんじゃ…」

「いえ、大丈夫です…。もう自分で立てます…」

少し強がりを言ってでも立ち上がる。


カレンは俯いたままだ。それを見ると…、

…………。

「案内…」


凄く小さな声で口にした。

「…え?」


「まだここの案内されてない…から、案内ついでに…狩竜人がどんな風に戦うのか…みたい…かも」

恥ずかしさのあまり、語尾につれて声が小さくなってしまう。

「ほ、ほら! 何も知らないのにしたくないって言うのもおかしいかなって…」


心にもない事を口にする。ほんとは絶対に嫌だった。

あのまま手を振り切って外に出ていたら、多分また病院に舞い戻っていたかもしれない。

それほどまでに彼女の…、いや女の子の涙は見たくないと感じた。

親の(しつけ)とも違う、何か脳を直接刺激するような。そんな感じ…。


「ほん…と…?」

顔を上げ、上目遣(うわめづか)いでこちらをみる。

やはりカレンの目には涙の跡があった。奥の方にもまだ残っていそうな程の涙目だ。


また…頭痛……。

直接涙をみればさらに痛みが増した。それでも返答を待つカレンがみていられないから…。

「本当だ……。なんなら今からでも…いいよ…」

痛みを(こら)え、振り絞った。


それを聞いたカレンは涙を拭いて嬉しそうに、

「やったぁ! 白夜大好き!」

と言い、抱きついてきた!?

「お…おい!カレン離れろ!」

「いやだぁ。このまま案内する!」

「いいから離れて…!」

じゃないとむ…胸が…!当たってるんだって…!


「お前達、私とストルスがいることを忘れてないだろうな…」

「いいなぁ青春…。俺もこんな可愛い娘と過ごしたかったぜ!!」

左右両隣から聞こえる二人の声には刺があった。


僕は青春を寝て過ごしたけど…。

「それはさておき。アナザースカイの案内ついでにお前と誰かが模擬戦をやる方向で決定だな?」

「ちょっと待って!? 僕は模擬戦をやるとは…」

「それでけってーい!早く行こ!ね、白夜!」

僕の話を遮られた上に話が全く別の方向に飛んでいるんですが…。

「とりあえずお前は離れろ。そして恥を知れ」

「あうぅ…」

葵さんが首根っこを掴み剥がしてくれた。

この光景も懐かしく感じる。


「じゃあ、行こうか」

葵さんの号令に、ついていかざるを得ない。

「よーし!レッツゴー!」

カレンも葵さんの横で張り切っている。あほ毛も元気を取り戻したみたいだ。

「どーせ俺なんて…。はぁ…」

肩を落としてため息をつくストルスさん。

会話に入れなかったことがそんなに悲しいことなのか…?


それに頭痛も治ったみたいだ。ただの疲れだったのかな…。


いろんなことを考えつつ、その病院を後にした。


プロローグに続き、最後まで読んでいただきありがとうございます。

まだまだ頑張って投稿する予定なので応援よろしくお願いします!

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