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失われた世界の中で  作者: 柳 田
第一節:初陣
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プロローグ:目覚め

読みにくいとは思いますが、最後まで読んでいただけると光栄です。

プロローグ:目覚め


夢を見ていた。


王族のため、民のため、その星の覇権を掛けた一つの星の戦争。

もう千を超える月日が経過していたソレは終わりを迎えるなど程遠い。


その戦乱の中に一匹の龍がいた。

その背中は懐かしくもあり、逆に恐怖にも感じた。


ソレに終止符が打たれることはなく。

今もまだ続いている…。


一一一一


目が覚めると、そこはみたこともない天井だった。真っ白な部屋にベッドが一つ。今自分が寝ているベッドだ。それ以外には…、機械音が微かに聞こえる。

身体中に色々くっついている。そんな気がした。


起き上がって辺りを見渡そうとするが...、

あれ......?

体が思うように動かない。

仕方なく寝たまま耳を澄ましてみた。

足元で女の子が少しうるさいぐらいに泣いている。それに膝あたりに重みを感じる。

何がそんなに悲しいんだろう...。


ほかに人は二人。

部屋の隅で話し声が聞こえる。あまりよく聞こえないが声からして男性と女性だろう。


そんな事を思っていると、ふいに扉の開く音がした。

誰だろ...。


目をやると白衣に身を包んだ二十代くらい男性が近づいてきて、僕の隣まで来ると口を開いた。

「おはようございます、白夜(はくや)君。いや、初めましてと言った方がいいかな」

ここはどこであなたは誰なんですか。

「あ……あ…… 」

口を開いて初めて異変に気づく。


あれ、うまく喋れない。


意識してみると、感覚が、鈍い。

「いやぁ僕も驚いたよ。なにせ十三年間も眠っていた子が目を覚ますなんてねぇ… 」

と、手に持つ紙をめくりながら言う。


なら、ここは病院?

そう考えればこの人が白衣を着ていることにも合点がいく。

十三年も眠っていたのか…。実感ないな...。


すると突然今の今まで泣き喚いていた金髪の少女が立ち上がり、口を開いた。

「そうよ! 十三年よ、十三年! あたしがどれだけ待ってたと思ってんのよ!!」

目に溜まった涙のせいで怒っているのか、泣いているのかよくわからない。


ご、ごめん…

「う……あ…… 」

その甲高い声と彼女の圧に押されて謝らざるを得なくなるが、言葉にならない。

「何言ってるか全然わかんないわよ! もう…! 」

ごもっともです…。

っと、心の中で話してても意味ないか…。


自分で勝手な解決をしていると聞いたこともない声がした。

「カレン、少し黙れ。お前も同じようなもんだろう…」

透き通るような声。おもわず聞き入ってしまいそうになる。

その声の主は、さっきまで部屋の隅にいた女性だ。

「でもあたしの方が三年早いもん…」

ふてくされたように頬を膨らませて目を()らしながらまた座った。

「よし、静かになったことだし…」


言いながらカレンと呼ばれる人のとなりまで来た。よく見ると女性は黒髪で日本人らしく、その大人びた風貌(ふうぼう)にひきこまれてしまいそうな。彼女にはそれほどの魅力があった。


「白夜、話が聞きたい。先生お願いします」

と、ベッドの上半身を起こして体についていた器具が一通り外された。

「今はまだ喋れないだろう。これに書いてくれ」

ホワイトボードと水性ペンを手渡してくれた。


「聞きたいことが山ほどあるとは思うが、一旦こちらが提示する質問に答えてくれ」

(うなず)く。

「まず君の名前は?」

おぼつきながらも名前を書く。


東雲(しののめ) 白夜(はくや)


僕の手ってこんなに大きかったっけ...。

異変が残るが質問が続けられ、その疑問はすぐに消えた。


「母親と父親の名前は?」


わからない


「魔法は使える?」


わからない


「君の出生についてだが……」



―――――



「質問はこれで終わりだ。協力ありがとう」

な、長かった。かれこれ一時間ぐらい話していたな…。


「とりあえず僕は院長に報告してくるよ。また何かあったら呼んでくれ」

そう告げると白衣を着た男性は颯爽(さっそう)と去っていった。

そんなにすごいことかなぁ...。

僕が目覚めたことがそんなにすごいことなのだろうか。

「記憶がところどころ欠損しているな…」

困った顔付きでメモ帳とにらめっこしている。


「しかたないよ葵、十三年も眠ったままだったんだ」

部屋の隅にいた男性が初めて口を開いた。はっきりした口調(くちょう)で低く重圧のある、しかし聞き入れやすい優しい声。

僕、眠っていたのか...。記憶があるのが八歳だから今は二十一歳か...。


「魔力もだいぶ高いようだし。ゆっくりリハビリすれば普通の狩竜人にはなれそうね」

狩竜人? 魔力?

聞き覚えのない言葉に疑問を感じる。

それに、ここの空気は昔見た空気とは全く違っているみたいだ。


「次は約束通り、君の質問に答えよう」

次は僕が質問できるのか。ならまずは……。


皆さんの名前はなんですか


名前がききたかった。違和感のある空気とさっきの言葉の意味はそのあとだ。


「まぁごもっともだな。白夜だけ自己紹介してるのに俺たちがしないのはアレだしな」

と、言うと黙り込んでいたカレンと呼ばれる人が急に立ち上がった。

「はいはーい! じゃぁあたしから!」

これでもかというほどの声に少し驚いた。一つ飛び出た髪の毛がビンッと伸びて可愛らしい。


「わかったからさっさと始めろ…」

頭を抱え、呆れたような口調であるアオイと呼ばれる人が言った。


「あたし、カレン=エヴァ・ルーズ=レクリシア。長いからカレンでいいよ。よろしくね!」

本当に元気いっぱいでこっちも元気になってくる。


そんな事を思っていると今度は身を乗り出した。

「でねでね、あたしも眠ってたの! 十年間!」

顔が…近い…。カレンの吐く息が顔にかかる…!

どんなに眠っていても本質は人間なんだと、初めて思った。

「顔が近い。白夜は動けないんだ。少しは慎め」

アオイと呼ばれる人が僕の心を代弁(だいべん)してくれた。


た...助かった…。恥じらいというものを知らないのか...。

「うぅ…。いいじゃないか…。あたしと白夜の仲なんだし」

と首根っこを捕まれ退場していくカレンがぼやく。


「お前はただ白夜の横のベッドで寝ていただけだろ…」

溜息をついて言う。

そういえば、だいぶ感覚が戻ってきたような気がする。今なら単語ぐらいは声に出せそうだな…。


と、そんな事を思っていると

「私は時雨 葵(しぐれあおい)だ。よろしく頼む」

「俺はストルス・フォン。二十七歳ともう年だがバリバリ働くぜ。よろしくな、白夜」

続けざまに二人が自己紹介を済ませた。


葵さんとストルスさんでいいですか?

「あぁ」「おぅ。何とでも呼んでくれ」

全員の自己紹介が終わったところでまた質問に戻す。


ここはどこ?日本じゃないの?


今一番聞きたいことだった。

すると病室の空気が一瞬で鋭くなるのがわかった。真剣な面持ちでストルスさんが重い口を開く。


「あー…驚かないで聞いてほしいんだが。いいか?」

  

はい。大丈夫です。


その空気の重さを察し、心を構え直す。

端的(たんてき)に言うと地球は、地球上の文明は全て途絶えたんだ。突如現れた竜が、都市諸共(としもろとも)人間を葬り去っていった」


......。

え…? 地球が…、滅んだ? それじゃここは一体…。

生まれた質問の山をボードに書いて伝えようとするが、


「言いたいことはわかる。それも説明する」

ストルスさんの手がそれを拒んだ。

「今言ったことは全て事実だ。信じられないなら窓の外を見ればいい」

と、外に目をやる。


気になって見てみるとそこには、今まで見たこともない紫色の空が広がっていた。例えようのないそれは、どこかへ引きずり込まれていくような。

な...なんだよこれ...。


「見ての通りここは地球じゃない。ここは〈狭間(はざま)〉と呼ばれている、空間と空間とをつなぐ場所」

 〈狭間〉……。聞いたこともないな……。

「簡単な話、空間転移をする際に通る場所みたいな意味合いだ。それが星と星とを繋いでいるくらい大きくなったのがここってわけだ」

 

へぇ…、よくわからないや…。

「そして俺たちをここを[アナザースカイ]と呼んでいる」

地球とは別の紫色の空だから、かな。

勝手な解釈で納得する。

  

竜は今も地球に?


「あぁ。じゃなきゃ俺らはこんな狭っこい場所に住んでいられるかっての」

少し声を荒らげストルスさんが言う。それに続いて葵さんも。


「だが人類も馬鹿じゃない。住処(すみか)を奪われたまま黙っている訳にはいかないだろうと、竜を討伐しに地球へ(おもむ)いた」

そして、

「その竜討伐のため政府により認められた者こそが、私達狩竜人(かりゅうど)というわけだ」


質問の中でも聞こえてきた狩竜人の意味がやっとわかった。

「俺はその狩竜人だ。魔法剣士ってやつをやってる」

と、手を差し出した。それに応じ握手する。

手の皮が、硬い。


「彼、ソロでヒュドラを倒したのよ。(ちまた)では最強の狩竜人だって呼ばれてるの」

そのヒュドラという生き物がどれほど強いのかわからないけれど最強と呼ばれるのだから

それなりに強いんだろうな…。


「そこで提案がある」

と、葵さん。

「君には狩竜人になって欲しいと思っている。今すぐに答えを出せとは言わない。けど考えていて欲しい」


僕が狩竜人に?


「あぁ。君が眠っている間に少し(いじ)らせてもらったが、魔力については申し分なかったからな。魔力コントロールの方も期待できそうなんだ」

弄った!? 僕の体を!?


動揺を隠せずにいると葵さんが少し笑いながら、

「君の思うような如何(いかが)わしいことは何もしていないよ。少し体の中を調べさせてもらっただけだ」

凄く意味がありそうに聞こえるのは僕だけだろうか…。


「あたしも狩竜人だよ!」

うぉっ! びっくりした!

説明の間ずっと黙りこけていたカレンがまた現れた。


「あたしもリハビリ頑張ったんだぁ。ホントしんどかったよ...」

ため息混じりにへたれこむ。

本当に表情豊かだぁ。


「ちなみに私も狩竜人だ。あまり前に出て戦う方ではないけれど」

じゃぁこの場にいる全員が狩竜人ってことか。


そう思っていると葵さんが思い出したよう

に。

「そうだ、忘れるところだった!」

「竜は人一人でどうにか出来る程甘くはないんだ。人数に決まりはないが基本は五人一組、狩竜人同士でパーティを作るんだ」


葵さんの説明にストルスさんが唸りを上げる。

「そうだなぁ...。俺達とパーティを組むとなればバランス的に白夜は中、遠距離からの護衛の位置になるからな…」

何を話しているのか全くわからないけど…。

「まぁ何にせよ、狩竜人にならなければ話にならない。リハビリを早くしろとは言わんができる限り急いでほしい」

強ばった表情の葵さんが告げる。


この緊張が気に入らなかったのだろうか。カレンが飛び出してきた。

「だ、大丈夫だよ! あたしもリハビリしたけどそんなに辛くなかったし、ラクショーだったよ!」

(なぐさ)めてくれているのかな...?


すごく嬉しい。すごく嬉しいけど...。

額から吹き出る汗がその反対の意味を表していることがバレバレだった。

「とか言いつつお前、リハビリすんのに一年かかったじゃねーか」

揶揄(からか)うようにストルスさんが言う。

「それ言っちゃダメでしょ! 」

やっぱり嘘だったのか...。

「あーあ。ストルスさんはやっぱり意地悪だ... 」


あほ毛を垂らしながら落ち込む。それとほぼ同時にストルスさんが立ち上がった。

「さぁ、白夜のリハビリが終わるのもまだまだ先だからな。俺達も小遣い稼ぎ行くか」


ストルスさんの提案に同意するように頷く葵さん。

「そうだな。白夜の頑張り次第だがカレン程かかりはしないと考えると、早くて半年だな」

「えぇ〜。半年も白夜に会えないなんて...」

「泣き言言うな。ほらさっさと行くぞカレン」


目に涙を浮かべながら言うカレンをさっきと同じように葵さんが首根っこを掴んで病室を出ていく。

出ていったあとでも病室の外が騒がしい。

ほんと仲いいなあの二人...。


「じゃぁな白夜。リハビリ頑張れよ」

最後にストルスさんが病室を後にする。

誰もいなくなった病室。さっきまでとは違い

すごく静かだ。


静かになって冷静になってみると、色々な想いが湧き上がってきた。

これからどんなことが待っているのかな...。

記憶の欠損のこと。

竜のこと。

地球のこと。


まだまだ先のことはわからない。

そんな想いにふけこんでいるとまた扉が開いた。

「言い忘れた!!」

駆け込んできたカレンがベッドの前で止まる。


そして今日一番と言えるぐらい大きな声でこう口にした。

「おはよう白夜!これからよろしくね!」


――――


同時刻、白夜の病室前で。

「白夜から禁忌(きんき)の反応があった!? それも二つだと!? 」

「シーッ! 声が大きい。こんなこと聞かれたら殺処分(さっしょぶん)だぞ」

「す、すまん...。だが本当なのか...?」

「嘘で言うことか」


声を潜め白夜のことについて話す2人。

「一つはとても小さい反応だが確かにあの反応は禁忌の反応だ」


禁忌。それは人が使うことを禁じられた魔法。

「それも“可視”の禁忌。魔眼を宿す永続型の禁忌だ」

「永続型の天然物か。こりゃぁ、政府に目ぇつけられたら終わりだな」

「だからこそ白夜を狩竜人に推薦したんだ。灯台もと暗しと言うだろ」

「そうだな...。もう一つの反応も気になるが...」


会話はここで途切れた。

「ストルスさん、葵さん。行こ!」

カレンが病室から出てきたからだ。

「あぁ、行こう。とりあえず地竜を一匹ぶっ殺すか」


ストルスの一声で行先が決まり、全員がここから一番近い門を目指す。


地球へ竜を狩りに...。


ありがとうございます。初投稿で文も内容も分かりずらいところもあったかもしれないですけど、最後まで読んでいただき本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

次話の投稿はいつになるか未定ですが、必ず投稿するのでまたよろしければ読んでください。

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