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国王と非合法(イリーガル)の世論調査

作者: 卯月慧

 のどかな風景が広がっている。まばゆいばかりの新緑が目を焼く。

「話には聞いていたけど、随分牧歌的な国なんだな」

 ラムディスは、外を流れる風にそっと乗せるように小さく呟いた。

「ボッカテキ?」

「田舎ってことだよ」

 言葉の意味を知らぬ相棒ユッカの問いにそう答えたが、ラムディス自身には田舎臭いと揶揄する気持ちは毛頭ない。むしろこういった場所でのんびり余生を過ごすのも悪くないとすら思う。今はなき故郷も、森の奥の小さな村だったのだから。

「王室に対する国民の印象調査、か」

 ラムディスは改めて手元の書類を眺め、もはや何度目か分からぬ仕事内容の確認作業に入る。ガタゴトと轍を踏む馬車の中、ひたすら続く山や田畑ばかりの景色を見るだけの状況に飽いたというのもあるが。

「ムジーク王国内における、国王以下七名の兄弟に対する印象を率直に知りたい。調査範囲は国内全域、調査対象は任意。好印象・悪印象の取捨選択を行わず正直に報告せよ。依頼主はムジーク王国君主、トーン=スコア=ムジーク」

「王サマが、何でヨソ者の、しかも()()()なんかに調査なんて依頼したんだろーな」

 ユッカは眠いのか、普段は快活な赤い瞳を半分閉じ、窓枠に頬杖をつきながら退屈そうに問うてきた。

 ラムディスたちは、イリーガル・ハンター――要するに、非合法の賞金稼ぎで生計を立てている。ギルドを介して依頼があれば何だってやる職業だ。それこそ犬の散歩から汚れ仕事、暗殺に至るまで、仕事内容は多岐に渡る。他にも真っ当な調査機関など国内にいくらでもあるだろうに、というのがユッカの言わんとすることらしかった。

「さぁなぁ。何も知らない他国の旅人にどれくらい率直に話してくれるか、っていうのもひとつの指標にするんじゃねぇか」

 ラムディスは適当に思いついた答えを述べる。結局それも憶測の域を出ない。

 依頼主に会うのは結果を報告する時だけ、しかも代理人を介する。どうせ本人に直接会うことはないのだから、本心を知る機会もなければその必要もない。自分たちは淡々と任務をこなせばいいだけだ。

「ま、理由はどうあれこの報酬はさすが王様って感じだな。さっさと片付けて飯食おう。絶対美味いぞ」

「何でそう言い切れるんだよ」

 怪訝そうに眉を寄せるユッカに、ラムディスは人差し指を一本立てて宣言した。

「この国が『牧歌的』って言葉の似合う田舎だからさ」

「はぁ」

 なんだかよく分かっていないような返事をしたユッカを放置して、ラムディスは席を立った。御者に声をかけると、馬車はゆっくりとその歩みを止める。

「ん? もう着いたんか?」

 降りる準備を始めたラムディスを見て、ユッカが不思議そうに辺りを見回している。その気持ちは分からないでもない。何せ、牧歌的な風景は何一つ変わっていないのだから。

「第一国民発見だ。ここからは聞き込みしながら城まで歩くぞ」

「第一? え、港町にいっぱい国民いたじゃん」

「細かいことはいいんだよ。ほら行くぞ、チンタラしてると日が暮れる」

 かくして二人は調査を開始した。



◆畑で草取りをしていた農民男性の話


 王様? あー、ご兄弟が多いんだっけなぁ。つってもワシらみてぇな人間にはあんまり関わるこたねぇんだけどな。

 あ、いやいや、いたわ一人。シド様。王様の兄弟でいうと下から二番目だが、あの子は若ぇけどほんによう働くんだぁ。たまーに農村地域(こっち)来て、ワシらと一緒に汗流してくれとるよ。

 確か、農作物管理の元締め? っちゅうやつだったっけなぁ。開墾の範囲とか、作る野菜の場所や順番なんかもシド様が決めてるらしくてよ。若ぇのに感心だなぁ。

 そういやぁちょっと前に喧嘩の仲裁をしてくれたことがあったっけ。あん時ゃ間に入ったシド様が殴られちまってさぁ、それでも笑って場を収めてくれたんだよ。ありゃ大物だねぇ、ウチの婿にでも来てほしいくれぇだ、わはは!



◆学舎の庭で遊んでいた男児の話


 王様っておもしれーよな! おれ、祭で一回だけ見たことある! なんかでっかい馬車乗って手ぇ振ってたんだけど、途中で冠が地面に落っこちてあわてて拾いに行ってた!

 王様の一番下の妹のソファラさまはねー、よくおれたちと遊んでくれるよ。あとメッチャ足はやい! こないだ運動会があったんだけど、ソファラさまが乱入してきて、かけっこで一位取ってた! 子供のおれが言うのもなんだけど、ちょっとおとなげないと思う。

 でも、すっごくいい人だよ! 木に引っかかった風船とか取ってくれるし。変な顔したらすげぇ笑ってくれるし。でも、いつも丸い剣を腰からぶら下げてるんだけど、それ触ろうとしたら怒られたよ。だったら見えるトコにぶら下げなきゃいーのになー。

 あー、ソファラさま今度はいつ来てくれんのかなー。楽しみだなー!



◆修道院のシスターの話


 王立修道院の名の通り、国王陛下には良くしていただいておりますよ。ご兄弟の皆様とも、とても仲がよろしいようです。

 ご兄弟の三番目であるフラット様は、各地にある分院をまとめる修道院長をなさっておいでです。ご本人は「雑用係のようなものですよ」と仰いますが、いつも細かいところまで気を配ってくださってありがたく思っております。時折気を遣いすぎで倒れてしまわれないかと心配になりますが……年長者には気難しい者もたくさんおりますしね。

 それと、レミーさん――あぁ、様付けでお呼びしたほうが良かったかしら。陛下の妹君なのですが、わたくしどもと同じくシスターとして、毎日ではありませんが寝食を共にしておりますので、接し方が気安いものでして。

 多少我が儘なところがあるので手を焼くこともありますが、基本的にはお優しい方ですよ。面倒見が良くて子供たちには慕われています。魔法の才能もお持ちで、近い将来には洗礼のお仕事もお任せできるようになるのではないかと思います。

 わたくしくらいの歳のシスターたちは、娘のように可愛がっております。ふふ、ご本人には内緒ですよ。

――あら、お祈りの時間だわ。それでは、失礼いたしますね。



◆魔法書店にいた客の話


 国王陛下のこと? うーん、ちょっと印象が薄いかな。即位されたばかりだし、前国王だった父君のほうが僕らにはまだ馴染み深いよ。

 でも、ヘオン様のことはよく存じ上げてるよ。七人兄弟の真ん中で、魔法に関しての知識は恐らく国内随一のお方じゃないかな。ほら、ここに著書もあるんだ。精霊語に関する記述が大半だから、旅の人には読めないかもしれないけど。

 精霊語、知らない? そうか、そこからか……。僕たちの周りには精霊っていうのがいて、彼らから力を借りるのに精霊語が必要なんだよ。ヘオン様は、十種の精霊語を全て扱えるすごい方なんだ。僕みたいに魔術師を名乗っていても、せいぜい三種が限度だよ。それ以上は頭がこんがらがって覚えられない。

 あぁ、そんな話をしていたらヘオン様の本が読みたくなってきた。分かりやすくて面白いから、僕ファンなんだよね。すみません、この新刊ください!



◆カフェでお茶をしている女性の話


 国王陛下かー。確かあの歳でまだ独身なのよね。普通王様になる人って、王子の時代に結婚して子供も作っておくものだと思ってたけど。甲斐性ないのかしら、なーんて。あはは!

 え? 私は嫌よ、第一好みじゃないもの。王宮暮らしは憧れるけど、その分責任もついて回りそうだし、割に合わないわ。

 それに好みかどうかで語るんだったら、私は断っ然シャープ様を推すわ! 知ってる? 国王陛下のすぐ下の弟で、騎士団長を務めてるのよ。兄王を護るために、コネじゃなく実力でその地位まで上り詰めた努力家! 武勲を立てて、二つ名とかいうのを持ってるんだって。なんていう名前だったかな……ごめん、忘れちゃった。

 公開稽古とかたまに見るけど、いっつもキリッとしてて寡黙で強くて、もうほんっっとカッコイイんだから! あなたたちも一度見てみるといいわよ。



◆客引きをしていた女性(?)の話


 トーン様のこと? そうね、あんまりパッとしないって話よ。でも歳の割に童顔で可愛いんじゃないかしらァ。アタシより背が低いところなんか庇護欲出てきちゃう。ウフフ。

 それで独身だっていうんだから、神様も勿体ないことするわよねェ。いっそのことアタシ押しかけちゃおうかしら。どぉ? こんなお妃さまも新しくなァい?

 あらっ……ヤダ、よく見たらアナタたちも可愛い顔してるじゃないの。これからどうよ、お安くしとくわよ。……って、あ! 逃げなくてもいいじゃない! ちょっとぉぉぉぉ!!



  ☨


「……はぁはぁ……なんだあの女、声オレより低かったぞ」

「馬鹿お前、あれが女なワケねぇだろ……うぅ、ちょっと尻触られた」

 全速力で逃げ切って、飛び込んだ公園の木陰で一息つく二人。悪夢のようなスネ毛はもう忘却の彼方に消し去ることに決めた。

「ま、まぁとりあえず、一通りの話は聞けたか」

 ラムディスは公園の椅子に腰かけると、走り書きのメモを元に手際よく調査結果をまとめていく。ユッカの書く字は解読不能なので、こういった作業は専らラムディスの役目だ。

「えーと、似たような話はまとめて……と」

「なんか割と好意的な意見が多いよなー」

 暇を持て余したユッカが、転記済みのメモ群を眺めながら言った。

「そうだな。実際歩き回って、この国が平和だってことはよく分かった。王様方は愛されてるんだろうさ」

 答えながら、ラムディスの口元は思わずほころぶ。平和なのは幸せなことだ。例え自分に関係ない国であっても、幸福に満ちた空気に包まれるのは心地良い。

「引っ越すか」

 冗談じみた口調のユッカの提案に、

「いいなそれ」

 同じく冗談で――いや、半分本気かもしれないが――返しながら、ラムディスは愛用のペンの蓋を閉める。そうして出来上がった報告書は、持っているだけで何だか心が温かくなる気がした。



 そして、二人は報告先であるムジーク王国の王宮に向かう。

 国民は皆快く回答に応じてくれたし、おかしな輩に絡まれるということも()()()()ので、二人にとっては至極簡単な仕事だった。疲れた点を挙げるとするなら、最初に馬車を降りた場所が意外に王宮から遠かったということくらいか。それも徒歩での移動が基本の二人には造作もないことである。

「すみません、リジェスティからの親書をお持ちしたのですが」

 城壁に設えた扉の前に立つ門番に、依頼で指示された通りに偽の用件を伝える。話は通っているらしく、ただの旅人然とした二人の格好を見ても不審な顔ひとつせずに中へ入れてくれた。

 案内役の騎士が詰所から出てきて、その後をついて歩く。

「へぇ、小さいけどなかなか綺麗な城じゃん」

 ユッカがお上りさんよろしくキョロキョロしながら率直な感想を呟いたので、ラムディスは「小さいとか失礼なこと言うな」と釘を刺しておいた。

 だが確かに綺麗だな、とラムディスも思う。整えられた道はゴミや枯葉ひとつ落ちておらず、花と緑のバランスが絶妙で見る者の心を癒す。王宮を美しく引き立たせるような見事な庭園で、相当腕の良い庭師を抱えているのだろうと推測できた。

 やがて王宮の正面扉に着こうかというところで、横から声をかけられる。

「ん、どうした?」

 はっ、と案内役の騎士が背筋を伸ばして敬礼した。そういう態度を取るってことは上の人間だよな……と、ラムディスは声の主を確認する。

 紫色の髪とロイヤルブルーの瞳を持つ青年だ。額に金属のプレートを装着しており、長い槍斧を持っているので、戦いに身を置く者だと容易に分かる。身長はユッカと同じくらいか。隙のない立ち振る舞いは相当な手練れであると感じさせた。戦い慣れていない人間なら、その鋭い眼光に物怖じするだろう。

「リジェスティからの使者の方で、親書をと」

 騎士が伝えると、青年はラムディスたちの姿を視線で軽く検め、頷いた。

「オレが引き受ける、お前は下がっていい」

 再び敬礼し、こちらに対しても律儀に会釈をした騎士は詰所に戻っていった。

「……さてと」

 青年は若干気怠そうに向き直り、

「話は聞いてる。今は中じゃねェんだ、ついてきな」

 にこりともせず言うだけ言って踵を返すと、サッサと歩き出してしまった。ラムディスはユッカと顔を見合わせると、何故か通ることが叶わなかった正面扉を横目に青年の後を追った。

 そうして連れてこられたのは、城をぐるりと回って反対側にある裏庭だった。明らかに客が案内される場所ではなくて戸惑っていると、奥にあるこぢんまりとした東屋から誰かが出てくるのが見えた。

 若い男――と言っても、ラムディスたちより一回りは年上だろうか。金色の髪は夕日に照らされて輝いている。高貴な衣服に身を包み、真紅のマントをなびかせて歩く男は、軽く片手を上げながらにこやかに近づいてくる。

「シャープ、すまないな。俺に客人か?」

 男のその問いに答えたのは、ラムディスたちを先導していた青年だった。

「例のアレだよ、リジェスティの」

「おぉ、意外と早かったな」

「……ウソだろオイ」

 二人の会話で全てを察したらしいユッカが背後で小さく呻く。ラムディスも同じ気持ちだった。

 聞き込み中に何度も聞いた名前。確かシャープというのは国王兄弟の二番目、それがこの槍斧を携えた青年の名だという。そんな彼をさらに呼び捨てにして、軽い会話を交わせるような人物といえば、示すところは一人しかいない。

「遠いところをありがとう。ムジーク国王、トーン=スコア=ムジークだ」

 しかも謙虚に挨拶などしながら握手を求めてきたので、ラムディスはさらに面食らった。自分の中の常識と、目の前の国王の態度があまりにもかけ離れていたからだ。いっそ、やたら距離感のある玉座で偉そうにふんぞり返っていてくれたほうがイメージ通りでホッとするというのに。

 ユッカと共に硬直していると、トーンの背後から苦笑するような声が聞こえた。

「陛下、驚かせてしまっていますよ。気安いのは結構ですけど、もう少し威厳を持っていただかないと」

「む」

(王様怒られてるよ……)

 ラムディスは思わず出そうになったツッコミを心の中に押し留める。

「すみません、陛下に悪気はないのでどうか固くならずに。――と、申し遅れました、私は陛下の側近を務めているフラットと申します。こちらは近衛隊長のシャープ。お仕事の報告に来られたということは、お二人とももう私たちの間柄はご存じですよね」

 柔らかい声音と共に向けられたフラットの優しげな笑顔は、いくらか緊張をほぐしてくれた。それでも王族と対峙した経験など皆無に等しいので背筋が強張っている。あぁ、悲しきかな一般庶民。軽く咳払いをして、ラムディスは改めて一礼する。

「国王陛下ならびにシャープ殿下、フラット殿下。何分不慣れなもので、ご無礼がありましたらお許しください。俺――じゃない、私はギルドより調査の任を受けました、ラムディス=ヴァイスディーンと申します」

「ユッカ=L=グレイス、です」

 ぎこちないながらもユッカが追随し、会釈した。敬礼とかマジ分かんねーし、などとくっきり顔に書いてあってヒヤヒヤする。

「はは、本当に気を楽にしてくれていい。では、『親書』を受け取ろうか」

 改めて差し出された手は、握手でなく催促のものだ。ラムディスは国民の声をまとめた書類を渡す。

 トーンは息を吐いておもむろに開き、その場で読み始めた。横から二人が覗き込んでいる。

 何だか自分が書いたポエムを目の前で採点されているような、ちょっぴり恥ずかしい気分になって、ラムディスはユッカの肘を引っ張りながら数歩後ろに下がった。そしてこそっと耳打ちする。

「……俺、代理人に書類提出して終わりだと思ってた」

「オレもだ。つーかコレ別に立ち会わなくていいんじゃね? 帰ろうラムディス」

「今帰ったら不自然だし失礼だろ」

「いやもー限界。オレ王族アレルギーあるから」

「何だそれ。まぁ確かにお前がかしこまった場で数分もったのが奇跡と呼べるかもしれねぇけどさ。……!?」

 話をしているうちに、ラムディスは国王の様子がおかしいことに気が付いた。

 最初のほうこそ笑い声など聞こえていたが、今は書類を握る手が震えている。表情は今にも泣き出しそうだ。しかも感動の類ではない、あれは明らかに意気消沈している。

 マズイことでも書いたかと、背中に冷や汗が浮くのを感じながら、ラムディスは声を絞り出した。

「あの、何か問題が……?」

 その慎重な問いかけに、トーンが力なく反応する。

「いや……これで全部なのだろうか。もっとこう、俺の雄姿を褒め称えるものだとか、兄弟思いの素敵な王様だとか、俺のファンだとか」

「は?」

 思わず聞き返してしまったが、要するにもっと自分への美辞麗句が並んでいることを期待していたらしい。

 ラムディスは聞き込みの内容を思い返す。確かにまだ伝えられることはあったかもしれない。

「似たような意見はまとめましたので、記載していないものもあります。口頭で良ければお伝えしますが」

 その言葉にパッと顔を上げたトーンは、

「構わん、頼む」

 嬉しいというよりは懇願するような色を含んだ声で言ってきた。ラムディスは自分用のメモを取り出す。

「省略したのは主にトーン国王陛下に関するもので、『結婚してほしい』が十二件、『早く世継ぎの顔が見たい』が特に年配者層から九件、『怠惰なイメージ』が五件、『ブラコン・シスコンで有名』が三件で――」

「のォォォォォォォ!!」

「うぉ!?」

 突然叫んで地面に突っ伏したトーンに、ユッカが慄いて声を上げる。隣ではシャープがトーンを指差してゲラゲラ笑っているし、フラットも笑いを噛み殺したような顔をしていた。――ラムディスの思考はこの状況に全くついていけない。

「くく……勝負あったな、兄貴」

 ヒーヒーと腹を抱えながら、シャープが告げる。

「あんなに自信満々にしておいて、どんケツじゃないですか兄さん」

 呆れたように、フラットも言葉を投げた。トーンは地面を殴りつけると、涙声で悔しそうに反論する。

「澄ました顔してケツとか言うな!」

「では最下位と言い直しますね」

「うぐっ! ……シャープ、お前へのこの意見だって、実際喋ったら脳筋が露呈して幻滅されるぞ!」

「へェ、印象勝負って言ったのはどこの誰だっけ?」

「ぐぬぬ……! いいかお前たち、そもそもだな――」

 やれ敬意が足りないだの、もっと空気を読めだのと口論を始めたトーンとシャープ、フラット。

 完全に置き去りにされたラムディスとユッカは、ムジーク兄弟の私的な勝負事にまんまと付き合わされたことを悟って、同時に溜め息をついたのだった……。



 おわり

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