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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.4~
98/411

4月4日雨 『掃除屋2名』

「新しいの、入ったぞー」


レトロ工房には、カルラのやる気の無い声が響く。

そして、いつも通り周囲を見回していると、物陰に二人の男の影が見える。

一人は帽子をかぶった髭面で、もう一人はサングラスで顔を隠している。


「兄貴、あいつ俺らに気付いていないか?」

「いんや、気づいてねぇだろ。あの間抜けな面を見ろ、鈍感そうだろ?」


そうやって、大きな声で話しているから、とりあえず声をかけてみることにする。


「おい、テメェら」

「誰がテメェらだぁいっ!」

「挨拶がなってねぇなっ! ……って、あれ鍛冶屋じゃねぇか?」


驚愕に目を見開く二人に、カルラは尋ねた。


「テメェら、普通の輩じゃねぇよな。保険屋か? 詐欺師か? 暗殺者か?」


この街で普通の奴がいるとは思わないけれども。

質問を聞くと、二人はバレてしまっては仕方ない、と言わんばかりに易々と、物陰から飛び出して、自分たちの正体を明かしだす。


「ふっふっふっ、教えてやろう。俺達は暗殺者兄弟。俺は弟のジブロと」

「兄のターニだ。だが安心しろ、ターゲットはお前ではない」

「そう、オレらのターゲットは黒い奴と聞かされている」


全部教えてくれた。親切だな。

二人は拳銃をちらつかせ、にやにやと怪しい笑みを浮かべている。どうしたものかと考えていたら、そこに、店の奥からニコが歩いてきた。


「どうしたの?」

「ん? ああ、変な奴等が来ていてな」


カルラの発言に、ジブロは身を乗り出して抗議する。


「おいおい、変な奴等ってなんだよ!」

「どこが変な奴等だ、イケテるだろ!」


ターニもそれに続く。

しかし、雨だというのに、傘も指さずに何をやっているのだろうか。

カルラは、二人を無視して話を続けた。


「……ニコ、あの変な奴等、お前が呼んだのか?」

「ツテはある。けど、こんなのは知らない。自分でやった方が早いし」

「俺もだ。自分の腕の方が信頼できる」


元騎士の会話に、兄弟はたじろぐ。


「この鍛冶屋、俺らより危ないんじゃないか?」

「……やっちまったな」


膠着状態に陥り、しばらく雨音しか聞こえなくなる。

そして、店の扉が開く。そこにはシュラが立っていて、外に居る二人を見るや、瞳を輝かせる。


「お待ちしておりました!」


どうやらシュラが呼んだらしい。しかし、どういうつもりなのだろうか。


「おい、どうやってコイツらと知り合ったんだ? ちゃんとどんな人が場数を踏んでから決めたのか?」

「なにお見合いみたいなことを言っているのですか? 私は新聞広告に書いてある方々に依頼しただけですよ」


暗殺者なのに新聞広告? 何を考えているのだろうと、ジブロとターニの姿を見ると、視線を反らされる。


「こちらです!」


シュラに手を引かれ、二人は店の、裏手にある倉庫に連れていかれた。

後に続いてみると、厳重に封鎖された扉があって、異様な雰囲気に変わった倉庫がそこにはあった。


「お願いします、害虫駆除!」


シュラのポケットに入っていた新聞を手に取り、広告を探す。赤ペンでなぞられた部分を見てみると『掃除屋兄弟! どんなものでも排除します!』と書かれていた。


「なあシュラ、コイツら何だと思う?」

「え、幅の広い清掃会社さんですよね?」


まあ、あながち間違っていない。そして、シュラがこう思っているのなら、倉庫の中のターゲットは決まっている。


カサカサカサ……。這い回る音が聞こえた。


「兄貴、俺、虫苦手なんだ」

「オレも得意じゃねぇよ。帰るぞ……」


そう言って踵を返す二人の肩をつかみ、カルラは倉庫の中に押し込んだ。


「何すんだよ、まじで!」

「これ、専門外だから!」

「うるせぇ、さっさと仕事しろ」


カルラは倉庫の扉を閉め、再び封印してやる。


「暗い! 怖いっ! 無理っっ!」

「ちょ、え、あぁぁぁぁー!」

「虫が! 背中に入った、ああ、アーッ!」


断末魔が聞こえる。

可哀想だから、少ししたら開けてやるとしよう。そう、一時間くらいしたら。


「シュラ、後で説教な」


店に戻りながらそんなことを口にすると、シュラは戸惑い震える。


「な、何故ですか!? ゴキブリさんは怖いじゃないですか!」

「ニコがやってあげたのに」

「ニコさんは素手で捕まえるから駄目ですっ!」


とりあえず今は、倉庫にある危険なものが作動しないことを願うばかりだ。

ジブロ(28)

特技……射撃

備考……暗殺業に手を出してみたが、結局なにをしたら良いのか分からず、新聞に広告を出したのが運のつき。

某動画投稿の弟をイメージした。


ターニ(32)

特技……運転

備考……暗殺業を開いた弟に乗っかる形で参加した。運転手として楽に稼ごうとしたのが運のつき。

某動画投稿の兄をイメージした。

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