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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.4~
97/411

4月3日曇り 『異世界人1名』

「新しいの、入ったぞー」

「鍛冶屋に入りますか? はい」


店の前には自問自答を繰り返す男が、店の前に立っていた。久しぶりに見た、かなり危ないやつだろう。

焦点の合わない目が、それを如実に表している。


「な、何かご用ですか?」

「……」


シュラの問いかけに対しても何も言わない、ただの屍のようだ。

え、なんで喋らないの。何しに来たんだよ。

おそるおそる、カルラが問いかける。


「おい、何が欲しいんだ?」

「鉄の剣、500G」

「そ、それにするのか? おい」

「はい」


何故だろう。会話が成立しているのに、まるで本人がそこにいないような、操り人形とでも話しているかのような錯覚に陥る。

売買を終えると、男がさらに口を開いた。


「立ち去りますか?」

「は?」

「はい」


何故か会話の節々に自問自答を挟んでくる。頭は大丈夫なのだろうか。

男は振り返り、買ったばかりの鉄の剣を、町中で抜く。そして、初めに持っていた檜の枝を、道の真ん中に放り投げた。


「おいテメェ、何ポイ捨てーーー

「デレレレレッ!」

「うぉっ、何だっ」


突然鼻唄を歌い出したかと思えば、いつの間にか目の前に現れた男達を見てこう言った。


「盗賊が、現れた」


何をもってそう言っているのか、皆目検討もつかないが、確かに風体の悪い連中だ。


「特技」


男は鉄の剣を振りかざして叫ぶ。


「アイスソードッ!」


男の魔力によって、刀身には氷のつぶてが張り付く。その剣に触れた盗賊たちはバッタバッタと倒れていく。


「すごいです」

「……けど、名前がダサいな」


その様子を見ていたカルラ達は、傍観を決め込む。

一段落した際、労いの言葉でも掛けてやろうかと、カルラは男の肩を叩く。


「お疲れさん、とりあえず警備隊ーーー」

「テレレレッレッレッレーッ!」

「今度はどうしたっ!?」


周囲を警戒するカルラだったが、特に誰もいない。


「ああああは、レベル13になった。ステータスがーーー」


なにやら物凄く奇妙なことを叫び散らす男を他所に、カルラとシュラはそっと、後ろに下がっていった。


「シュラ、たまにああいうのも居るから、気を付けろよ

「はい。すごく怖いですね」


背後の男は、先ほどの受け答えとは違い、咳を切ったように一人で話している。


「あと、名前もダサいかった」

ああああ(Lv.13)

特技……アイスソード

備考……魔王を倒す夢だけで生きる人。戦うことに関してはそこそこだが、一方で、壁に頭をぶつけ続けたり、何度死んでも生き返ったりと、奇行が目立つ。

最近、薬草の使い方を覚えたらしい。

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