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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.4~
96/411

4月2日晴れ 『スパイ1名』

「新しいの、入ったぞー」

「なるべく違法なものであれば、嬉しいです。私も楽しめるので」


店を訪れていたのは兵士だった。いつだったか、女兵士と共に来たことがある奇妙な、それに加えて異様な人物だと記憶している。

カルラは面倒臭そうに、他人の不幸を願っていそうな笑顔に言った。


「ドMの兵士が、今日は何のようだ? 今のところ、新聞保険の勧誘、苦情や逮捕は断っているんだが」

「ドMとは嬉しいアダ名ですね、罵倒してください」


名に違わぬ変質性である。

そして、カルラの後ろに何かを捉えたMは、細くした目を和ませる。


「シュラさん、こんにちは」

「ふぇあっ!? ……ど、どうも……こんにちは」


扉の隙間から覗いていたらしく、見つかったと分かり表に出てくる。明らかに警戒していて、カルラに対しての不安げな視線を感じる。


Mは優しそうに見える表情のまま微笑んで、話を切り出した。


「今回来たのは他でもありません。貴女方に頼みたいことがあったのです」

「頼みごと?」


絶対に、こちらに取って良いことではないだろうが、一応聞いてみるとする。

Mは一呼吸置いてから、口を開いた。


「はい、罵倒してもらいたいのです! 罵倒して下さいっ!」

「は?」

「ああ、間違えました。我が国に下りませんか?」


最初よりも熱意が違うのは気のせいだろうか。

しかし、それはさておいても、"国に下る"というのは、実はヤバいことを言われているような気がする。


「……お前、スパイか?」

「ええ、よく分かりましたね。団長のときは、二三日掛かりました」


簡単に認めてしまうものだ。知り合いのスパイは、もっと口が固かったはずなのだけど、こいつはそうでもないらしい。


「あの女にも言ったのか?」

「刺激が足りなかったので、秘密の共有をと思いまして」

「そんな理由で国の秘密も漏らして、よくクビにならないな」


呆れた声を漏らすと、シュラがMに尋ねる。


「どうして、カルラさんを誘うのですか?」

「これほど変わった武具を作れる職人は、あまり居りません。……この方の価値は、貴方の方がご存じなのでは?」


今まで演技だったのかと思わせるほど、冷静に答える。

そう言われて、シュラは口をつぐんだ。そこまで信用されているのは嬉しいものだが、外国旅行する気分ではない。


「断る」

「そうですか」

「……他言無用とか、そんなこと言わないのか?」

「刺激が欲しいもので」


これは演技ではなかったか。


「欲求不満なんですよね。告白したら断られましたし」

「回りくどいんだよ。保険の勧誘の方が、もっと直接的で熱烈だ」


どMの兵士は苦く笑う。


「参考にします」

マイク・サーチクラウン(24)

特技……拷問耐性

備考……並外れた精神力と、肉体の強靭性から諜報部隊に選ばれた。性癖には直球だが、恋愛に関しては奥手。

変態だって生きているんだ、友達なんだ。

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