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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
95/411

4月1日晴れ 『桜1名』

「新しいの、入ったぞー」


店内を見回すと、桜色の髪をした少女がいて、なにやら怪しい動作で座り込んでいる。

そして、見覚えのある包み紙を放り投げて、大きな声で言った。


「はわぁ、このお店には大したお菓子がないんだね。もてなしの精神が足りてないっ! 失礼だねっ!」

「……クソガキをもてなす精神も礼儀も、この世にはねぇ! なに、勝手にうちの食料食ってんだよ!?」


カルラの存在に気づくと、少女は偉そうに、悪びれもせずに言う。


「私はまだ子供だからね、栄養摂らなきゃいけないの。知らないの?」

「だから、なんで『うちの』を食っているんだって言ってんだよ。次答えないと、警備隊に渡す」


度々、店には泥棒が入るから、売上が減ってしまう。店番が出掛けてしまうことが最大の原因だろうけれども。

少女は無い胸を張りながら、堂々も、偉そうに言う。


「仕方ないわね。これには深いわけがあるんだからね、勘違いしないでよね」

「次、ふざけても渡すからな」

「せっかちね。だから…………いえ何も」


何を続けようとしたのかは知らないが、録でもないことだろう。そう思うと、腹が立つ。


「私は高貴な妖精のドリアードなの。だから、本当は水さえあれば大抵生きていけるの。でも、今が開花時期だってことを忘れていて、光合成が出来なくって死にかけていたの。そこに良い匂いがしてきたから、駆け込んだってわけよ」


ようするに、そうは見えないが、餓死寸前だったから、やむを得ず隠してあった菓子を食べたと言うことか。


「……それで、うちの菓子を盗んだ正当な理由はないわけだな?」

「人命だよ!?」

「うるせぇ、お前の命よりも菓子の方が大事なんだ!」


実のところ、あれは店の商品ではない。家にあると、ニコが食べてしまうため、店のほうに隠していたのだ。


「うちには妖精よりも怖いやつが、あの菓子を楽しみにしてたんだ。俺の命に関わる」

「誰なの、その悪魔!」

「私です」


そこには白い髪を揺らす悪魔の姿が……。


「誰が悪魔ですか。流石に命の方を優先しますよ」


さいですか。以前、プリンを食べてしまったときは殺されかけたのだけど。

シュラはさっさと少女の方に近づいていき、笑みを浮かべて尋ねる。


「ところで、ドリアードは魔素を食べると聞くのですが?

「………………テヘッ!」

「つまり、嘘ですか?」


燃え盛る炎を掌に乗せて、小さな幼女は悪魔のように、ドリアードを泣かせている。

桜のドリアード(樹齢30)

種族……妖精

備考……木に取りつく種族で、見せ物小屋にあった樹木を依り代にすることで生を受ける。嘘はあまり得意ではない。

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