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カジヤノキヤクビト  作者: No.
工房日誌 2017.3~
91/411

3月28日晴れ 『魔導師1名』

「新しいの、入ったぞー」


店から出ていくと、そこには大きな荷物を背負った、フードの人物が立っていた。紫色の綺麗な服に、革の古びたリュックは不釣り合いな印象を与えている。

そして、男は店主の登場に気がつくと、カルラに声をかけた。


「申し訳ないが、道を尋ねたい。少しトイレを探していたら、迷ってしまってな」


少し面倒に思いながらも、カルラは気前よくそれに応じた。


「別にいいけど、何か買っていけよ」

「カルラさん、少しはサービス精神を出してください」


答えてあげたのだから、それでも良いじゃないか。

横にいたシュラの言葉に、男は手を前に出して、それを断った。


「いや、いいよ。面白そうだし、何かひとつ買っていこう。……それで、この辺に新しく出来た孤児院はどこか知らないか?」

「孤児院?」

「もしかして、隣町の話でしょうか……?」


確か、そんな話が持ち上がったことがある。しかし、遠すぎる。


「だとしたら、どんだけトイレ無かったんだよ! うちにもあるよ、トイレ」


だが、男は大きく頷いて、それだと喜びを表現する。


「ああ、方向音痴で。気がつかない内に、遠くまで来てしまったようだ」

「よくそれで済ませられるな。もう少し危機感を持ってもいいと思うが」

「いつも最後は生きているから、別に良いかと思っている」


ポジティブなのか、ネガティブなのか、よく分からない結論だ。フードで見えないが、どんな顔で言っているのか、気になる。

とりあえず、カルラは簡単に道を教える。


「で、隣町までの道だが、西に三キロ行ったところにある」

「有難い。それでは、何を買おうか。長旅が多いから、それに役立つものが欲しい」


コンパスを出して男が言うと、シュラは店に並んでいた靴を手に取った。


「これなんてどうでしょう。疲れない靴ですよ」

「それはダメだ」


カルラはかぶりを振って、それを止めた。


「何故でしょう?」

「あんまり高くないから」

「……お客さんを選べるほど、うちは儲かっていませんよ?」


ぐうの音も出ない。


「では、それにしよう」

「はい!」


商談が成立して、会計に入る。


「……そういえば、孤児院に何をしに行くのですか?」

「魔法書を作る仕事で訪れたとき、飛び出す絵本を見せると約束したんだ」

「変わったお仕事ですね」


シュラの反応に気をよくした男はリュックから、一冊の本を自慢げに取り出す。


「これがその絵本だ。『ネクロノミコン』という本を模写したものだ」

「どこかで聞いたことがある名前だな」

「開くと魔物が飛び出す」

「どんな飛び出す絵本!? それ、絶対もとめたやつと違うからな!」


孤児院が惨事の現場になるところでした。

ネクロノミコン……クトゥルー的な何か。詳しくはググろう

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